京都人は、遠回しにものを言って、本音をハッキリ言わない傾向があります。
私は、子どもの頃、生粋の京女の祖母から「お家(おいえ)に上がって、遊んでお行き」と大人に言われても、「絶対に上がってはいけない」と厳しく言いつけられていました。もし、本気にして上がって遊んでいきでもしたら、「『上がって遊んでお行き』と言うたら、ホンマに上がって行ったわ、厚かましい子や!」と陰口を叩かれるからなんです。
いつだったか、祖母の弟、私の大叔父の家に遊びに行ったことがありました。大叔父の家には、同じ年頃の女の子がいたので、夢中になって遊んでいたら、夕方のご飯時になってしまったのです。
「今日は、うちでご飯食べてお行きやす」と言われて、喜んでいたら、優しいべっぴんさんのおばちゃんは、私の家に電話をかけて、こんなふうに言ったのです。
「久夢ちゃんをこんなに遅うまで引き止めて堪忍どっせ。うちは、かまへんのどすけど、お家の人が心配してはったらあかんと思て、電話さしてもうたんどっせ」
電話を受けた母が、慌てて飛んで来て、私は母に連れられて家に帰ったのです。帰り道で母は、一言も口を利きませんでした。
家に帰ると、大目玉でした。「あんたが行儀知らずで、恥かくのは、あんたの勝手や!そやけど、あんたのために、躾がなってへん言うて、人さんから、お祖母ちゃんやお母ちゃんが笑われるんやで!」と言って叱られたのでした。
今から思うと、京都らしい話だと思うのです。京都人は「晩ごはんの時間やし、もうお家へおかえり」と言ったり、「遅くなったので、お子さんを迎えに来て下さい」と言ったりはしませんでした。
京都人は「ハッキリ言われないとわからないのは野暮。無粋なこと」という意識が強いのです。
このエピソードは、50年以上前の話ですが、私は今も、「上がってお茶でもどうぞ」と言われても、「本当に上がって、お茶をよばれてもいいのやろうか?」と思ってしまいます。本音がよくわかりません。
私は、京都生まれで京都育ち。京都人は、遠回しにものを言って、本音は言わないことを理解してはいますが、正直言って、それは、京都のけっこう嫌いな一面でもあるのです。嫌だけれど、京都人気質かも知れないですね。
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