
京都人は、遠回しにものを言って、本音をハッキリ言わない傾向があります。京都人のコミュニケーションスタイルの特徴なのです。遠回しな言い方で、本音をハッキリ言いません。
私は、子どもの頃、生粋の京女の祖母から「お家(おいえ)に上がって、遊んでお行き」と大人に言われても、「絶対に上がってはいけない」と厳しく言いつけられていました。

もし、本気にして上がって遊んでいきでもしたら、「『上がって遊んでお行き』と言うたら、ホンマに上がって行ったわ、厚かましい子や!」と陰口を叩かれるからなんです。

<うちはええんどすけど……>
いつだったか、祖母の弟、私の大叔父の家に遊びに行ったことがありました。大叔父の家には、同じ年頃の女の子がいたので、夢中になって遊んでいたら、夕方のご飯時になってしまったのです。
「今日は、うちでご飯食べてお行きやす」と言われて、喜んでいたら、優しいべっぴんさんのおばちゃんは、私の家に電話をかけて、こんなふうに言ったのです。
「久夢ちゃんをこんなに遅うまで引き止めて堪忍どっせ。うちは、かまへんのどすけど、お家の人が心配してはったらあかんと思て、電話さしてもうたんどっせ」
電話を受けた母が、慌てて飛んで来て、私は母に連れられて家に帰ったのです。帰り道で母は、一言も口を利きませんでした。
家に帰ると、大目玉でした。「あんたが行儀知らずで、恥かくのは、あんたの勝手や!そやけど、あんたのために、躾がなってへん言うて、人さんから、お祖母ちゃんやお母ちゃんが笑われるんやで!」と言って叱られたのでした。

今から思うと、京都らしい話だと思うのです。京都人は「晩ごはんの時間やし、もうお家へおかえり」と言ったり、「遅くなったので、お子さんを迎えに来て下さい」と言ったりはしませんでした。このような使い方は、京都の文化的背景に根ざしているのです。
<京都人の遠回しな言い方の背景>
こうした遠回しな言い方は、単なる性格や文化の違いではなく、千年以上にわたる都の歴史が生んだ「生きる知恵」ともいえます。

京都は長く公家や武士、商人、職人など、さまざまな階層の人々が共存する場でした。その中で、直接的な物言いは角が立ち、思わぬ争いを招く原因になりかねませんでした。
特に、幕府や朝廷といった権力者が入れ替わる歴史の中では、ことばひとつで身の危険にさらされることもあったのです。
また、京都は狭い社会であり、同じ町内や商圏で人間関係が長くつづく傾向があります。今日の相手が明日は味方にも敵にもなる可能性があるため、表立って対立を生むようなことばを避け、婉曲な表現でやりとりする文化が根付いていきました。

これは単なる「性格が悪い」といった話ではなく、集団の中で穏やかに生き抜くための知恵であったのです。京都人は「ハッキリ言われないとわからないのは野暮。無粋なこと」という意識が強いのです。
このエピソードは、50年以上前の話ですが、私は今も、「上がってお茶でもどうぞ」と言われても、「本当に上がって、お茶をよばれてもいいのやろうか?」と思ってしまいます。本音がよくわかりません。
しかし、京都の遠回しな言い方には、相手を直接傷つけずに本音を伝えるというメリットもあります。これは礼儀や気遣いとして機能し、京都ならではの「奥ゆかしさ」として評価されることもあります。
逆に、京都の言い回しに慣れていない人には「本音がわからない」「裏表がある」と映ることもあり、「京都人は怖い」「何を考えているかわからない」といった印象を持たれることもあります。
とはいえ、これは単なる嫌味ではなく、長年の歴史と社会構造の中で培われた習慣なのです。京都人のコミュニケーションは、一見すると分かりにくいかもしれませんが、慣れれば「行間を読む」楽しさがあります。
これは、単なる「意地悪」ではなく、長くつづく人間関係を大切にする京都ならではのことばの芸術ともいえるでしょう。
私は京都生まれで京都育ち。京都人は遠回しにものを言って本音は言わないことを理解してはいますが、正直言って、それは京都のけっこう嫌いな一面でもあるのです。気を使うので嫌だけれど、京都人気質かも知れないですね。

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