<本当に京女は優しいのか?>
京女と聞いて、ものごし柔らかな優しい女性を思い浮かべますか? でも実は、それだけではないのです。
亡くなった父が、「京女はものごしが柔らかいさかいいうて、おとなしいて優しいとおもたらあかんで」とよく言っていました。京女は、本当は芯が強くて、したたかなんですよ。
私の祖母は明治生まれの京女でした。よく父は「あの人(祖母)に勝てる人なんていいひん」と言っていました。
京女の「芯の強さ」「したたかさ」は、今を生き抜く知恵につながるように思います。
<プライド高き京女>
祖母は旅行で数回だけ京都を出ましたが、それ以外は京都から出たことがありませんでした。実家も嫁ぎ先も京都の下京でした。
髪結いとして腕が良く、裕福なお家の婚礼にもよくお呼びがかかっていました。京都のしきたりや冠婚葬祭にも詳しく、「ねえさん」として親戚に頼りにされていました。
「ねえさんは髪結さんしてはったさかい、なんでもよう知ってはる」
「ねえさんは段取りがええさかい、ねえさんに任しといたら、みんなが寄っても、うまいこといきますな」と言われていたのです。
プライドの高い祖母は、親戚の行事を取り仕切ることに誇りと生き甲斐を感じていたのです。
でも、そこは京女の祖母、
「いいえ、何をおっしゃいますやら。もう年いって耄碌してさっぱりどっせ」
などと心にもないことを言って謙遜していました。
<静かな紛争の勃発>
これからご紹介するのは、祖母と親戚の女性たちとの「京女の攻防」です。この会話のまわりくどさこそ、京女の遠回しなやり方と粘り強さを象徴しています。
ある時、一族の祝い事が本家であって、親戚の女一同が集まり、料理を準備することになったのです。仕切り屋の祖母の晴れ舞台の予定でした。
「ねえさんはお料理も上手やし、腕のええ髪結いさんで、ご大家の婚礼にも呼ばれてはるさかい、礼儀もようわきまえてはる」
などと歯の浮くようなお世辞を言っていた親戚のおばちゃんたちが反旗を翻したのでした。
「ねえさんはこの前も法事のお手伝いに行ってはって、うちは、ねえさんのお疲れが心配どすのえ。今度のご本家さんのお祝いは、仕出し屋さんに任かさはったらどうどす」
これが京女的駆け引きの始まりです。このおばちゃんも生粋の京女、一筋縄ではいかないのです。口と本音は大違い! 祖母に偉そうに指図されながら、本家のためにタダ働きするのが我慢ならないのです。
「あんたは、そない思わはるか? うちに気つこてくれはっておおきにえ。うちは大事おへん。そやけど、あんたが、うちらおなごで準備するより、仕出し屋さんがええと言わはるんやったら、うちはそれでもよろしおっせ」
祖母も負けていませんでした。口では譲歩するように見せかけていますが、決して譲る気はないのです。
<京女のエンドレス攻防>
「いえ、ねえさん何をおっしゃいます。うちは、ただねえさんのお体が心配なだけどすえ」
「いつも気にかけてもろうておおきにえ。そやけど、うちは大丈夫どす。ただ、あんたが気のすすまんことを押しつける気はないんどっせ」
「うちはねえさんのお体のことを考えて……」
このように京女のエンドレス攻防は続くのです。結局、亀の甲より年の功で祖母が粘り勝ちして、従来通り本家の法事は親戚の女一同で取り仕切られたのでした。
<ものごし柔らかな京女的戦略>
京女と聞くと、京ことばで立ち振舞の柔らかい優しい女性をイメージされる方が多いかと思います。
確かに人当たりはいいのですが、決して自分の本音を口にせず、遠回しに遠回しに、粘りに粘ってことを運び、結局、最後は自分の思うようにしてしまうしたたかな強者がけっこうたくさんいらっしゃるのですよ。
相手が察するまで遠回しにものを言って、はっきり本音を言わない。はっきり言われないとわからないのは「野暮なこと」と考えるのは、男女問わず京都人らしさでしょう。
典型的な京女と一緒に暮らしていたので、本音をはっきり言わず、相手が察して自分の思うように動くまで、決して妥協することなく粘りに粘る京女の一筋縄ではいかない芯の強さ、怖さを身近に見ていました。
そばで見ていて苛々したり、あまりの頑固さに呆れたりしましたが、気がつくと私も頑固で自分が納得いくまで粘り強く限度なくやり通してしまうことがあります。なんやかや言っても私も京女なのでしょう。
でも、この京女的攻防は、あなたが難しい局面に立たされた時、役立つのではないでしょうか?
難しい相手と交渉する時、ものごしはあくまで柔らかく、角を立てず、相手が自分の思い通りになるまで、遠回しに遠回しに、粘りに粘る京女的戦略をとってみてはいかがでしょう。
たとえば、職場で意見を通したい時や、家庭で微妙な交渉をする時。この京女的戦略を使えば、相手と衝突することなく、自然に自分の意見を受け入れさせることができるかもしれませんよ。
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