『50歳から夢を追いかけてもいい5つの理由』~1章4項~

(4)50代で初恋なんて恥ずかしいという制限を外したら最愛のパートナーができた

 

あなたが初めて恋をしたのは

何才でしたか?

いつだったか忘れてしまったと言う人も

おられるでしょうね。

 

私と同年代の友だち昭子さん(仮名)は、

最近、20才以上も年下の男性と

恋に落ちて付き合い始めました。

50代の昭子さんが、

30代の一人の男性を愛したことで

心を解き放ち幸せになるお話です。

 

一部、個人が特定できる部分は

変えてありますが、

この話はまぎれもない実話です。

 

<昭子さんからの恋愛相談>

 

ある日、私のところに友人の昭子さんから

電話がかかって来ました。

「もの凄く悩んでいる問題があるから、

相談に乗って欲しい」と言うのです。

 

昭子さんは、とても賢くて

しっかりした女性です。

常識があっていつも冷静な彼女が、

一体どうしたのだろう、

と私は心配になりました。

 

実際に会うと、昭子さんは、

うつ向いて黙ったまま。

よほど深刻な悩みなのか、

とますます心配になります。

長い沈黙の後、

やっと彼女はぽつりと言いました。

「私、20才以上年下の男性を

好きになって、深い仲になってしまったの。

今、彼と私の家で一緒に

暮らしているのよ」

 

「軽蔑した?」

と昭子さんが私に尋ねました。

 

もちろん軽蔑なんてしません。

昭子さんが心から好きになった人と

結ばれて、一緒に暮らしているなら、

それは嬉しいことでした。

年下の彼との交際を

私が反対していないとわかると、

昭子さんは堰を切ったように

彼のことを話し出しました。

 

<思いがけない出会い>

 

昭子さんが彼に出会ったのは、

年末の押し詰まった時期だったそうです。

 

昭子さんの家の給湯器が故障しました。

彼女は一戸建て住宅に

一人で住んでいます。

いずれは両親と一緒に暮らすために、

コツコツと貯金して買った家でした。

 

真冬に給湯器が故障するのは、

かなり厳しいことです。

ガス会社のサービスに電話をしても、

年末で修理の予約が混み合っていて、

なかなか修理に来て

もらえなかったそうです。

やっと修理の係の人が、

昭子さんの家に来た時のことを、

昭子さんはこんなふうに話してくれました。

 

「サービスの係の人が、家に来たのは、

雪の降る寒い日だったのよ。

給湯器本体の修理はすぐに済んだのに、

なぜかキッチンのお湯だけが出ない。

係の人が、雪の中で室外機を

何度も点検して、キッチン来て、シンク下の

配管までくまなく点検したくれたの」

 

「せっかく修理に来てもらったのに、

キッチンのお湯が出ないままだと

困るわよね?」と私が言うと、

昭子さんは、その時のことを

続けて話してくれました。

 

「そうなのよ。

係の人は次のお宅に修理に行く時間も

迫っていて、額に汗をにじませて

本当に必死で原因を探ってくれたの。

寒い時期にお湯が出ないと

困るだろうから直してあげようという

一生懸命な気持ちが伝わって来てね、

胸がじ~んとしたのを覚えているわ」

 

「そうだったの。親切な人が

修理に来てくれてよかったわね」

と私は頷きました。

 

「本当にそう。やっとのことで係の人が、

原因を見つけて、

お湯が出るようになった時には、

私、手を叩いて喜んだくらいよ。

とてもとてもありがたく感じたわ。

私が何度もお礼を言うと、係の人は

照れくさそうな表情をしたのよね」

 

「その人が彼なの?」と私は尋ねました。

昭子さんはまたしばらく黙って

うつ向いてしまいましたが、

意を決したように言いました。

 

「ええ、そうよ。名前は俊というの。

まだ30代になったばかりよ」

 

<自分の行動に、自分が一番驚いた!>

 

「それからどのようにして彼と連絡をとって

付き合うようになったの?」

と私は尋ねました。

 

「修理の翌日、彼から私に電話が

かかって来たの。彼が作業している間に、

『よかったら電話して下さい』

という言葉を添えて、

私の名前と電話番号を書いた紙を、

俊君の靴に入れたからなの」

 

私は驚きました。

私の知っている昭子さんは、

しっかり者なのに、恋愛に対しては臆病で、

男性に対して、ましてや初めて会った

年下の男性に、「電話して下さい」

と伝えるなんて思いもよらないことでした。

 

驚く私に昭子さんが言いました。

「驚いたでしょ?

でもね、自分がしたことに

誰よりも驚いているのは、私なの。

いい年をして初めて会った

年下の男性を好きになるなんて、

自分でも信じられないんだけど、

どうしてももう一度、

彼に会いたかったの。

彼の若さとか容姿を

好きになったんじゃない。

自分でもなぜかわからないんだけれど、

一生懸命に修理してくれた姿が

心から離れなかった。

ただただ彼にもう一度会いたかった。

だから、彼から電話があった時は、

本当に本当に嬉しかった!」

 

「そうだったのね。

なんだか縁を感じるね」

と私は感じたことを昭子さんに伝えました。

 

「彼は電話をくれた後、

家に来てくれたのね。

私の家に家族以外の男性が

私用で来るのは初めてだったのよ。

よく知らない男性と家で

二人きりになったけれど、

私は不思議な安心感に包まれた。

彼もリラックスしていたみたいで、

私たちは昔からの

友だちのように話しこんだ。

気がつくと何時間も時間が経っていて、

私が作った遅い夕食を一緒に食べて、

また話し込んで、

彼はその日、私の家に泊まったの」

 

<苦しい胸の内を受け止めてくれた>

 

それから昭子さんは、その夜、

俊君と話したことも私に話してくれました。

 

「私は、祖父母も両親も叔父叔母も

みんな教師という、

教育者一家に生まれたの。

学校の先生の子どもって

本当に大変なのよね。

『先生の子ども!勉強できて当たり前!』

って見られてしまうから」

 

「そうでしょうね。

昭子さんは、教育者一家に生まれたことを

あまり話したがらないものね」と私が言うと、

 

「出来て当たり前、出来なかったら、

『先生の子どもなのに』と言われるのは、

本当にプレッシャーだった。

だから、必死で勉強して、

有名女子大の英文科に進学し、

父や母のように教師になったわ。

両親はもとより、親戚一同も大喜びだった。

でも、私は心の底に鉛の塊でも

抱いているようで重苦しかったのよ」

と昭子さんは、暗い表情で言いました。

 

「教師の仕事は昭子さんにとって

天職なんだと思っていたわ」と私が言うと、

 

「私そんなに優秀じゃないの!

『賢くてしっかりした昭子さん』を

演じるのにヘトヘトなのよ。

私だって誰かに甘えたい。頼りたい。

でも、そんな風に思っていることを

人に知られるのは絶対に嫌だったの。

矛盾しているでしょ?」

と吐き出すように昭子さんが言いました。

 

「そうだったのね。

そんな気持ちに全然気が付かなかった」

 

「不思議なんだけれど、

今まで誰にも言えなかった私の気持ちを、

彼には自然に話せた。

彼は、『今までずっと大変だったね。

これからは僕が支えてあげるよ』

と言って抱き寄せてくれたのよ。

心に温かいものが流れ込んで、

気持ちが解き放たれるのを感じたわ。

その日から、私たちは一緒に

暮らすようになったの」

と穏やかな表情で昭子さんは、言いました。

 

<未来が見えない恋>

 

それ以来、私は時々、昭子さんから

相談を受けるようになりました。

 

昭子さんは、俊君と一緒にいられる

時間がとても幸せでした。

俊君のために夕食を作って二人で食べ、

コーヒーを飲み、二人でくつろぐ時間は

本当に心が安らぐそうです。

 

でも、俊君のことで頭がいっぱい、

恋をして幸せいっぱいの自分が

怖くもあると、昭子さんは言いました。

 

自分の年齢や俊君との年の差が

一番気がかりだとも言いました。

昭子さんは50代半ば、

俊君は30代になったばかり。

きっと俊君は、自分なんかより若い女性と

結婚して生活する方が

幸せになれるのにという思いに

昭子さんは苦しんでいました。

 

学歴や仕事も気になりました。

昭子さんは有名女子大出身で教師、

俊君は複雑な家庭に育ち、

高校を中退しています。

仕事も転々として、

今の仕事にやっとつけたようです。

俊君が過去の出来事から立ち直って、

今、一生懸命に働いている姿に

一番心惹かれながら、

学歴の差や世間体を気にしている自分を

ズルく卑怯に感じたと言いました。

 

昭子さんが一番恐れたことは、

そんな自分と俊君が付き合っていることを

家族に知られることです。

交際を反対されることも怖かったのですが、

両親の期待を裏切っているような

罪悪感にも苦しみました。

 

「50代にもなって、

20才以上年下の男にのぼせている」

「いい年をして」

「50代になって初めての恋?」

「私たちは人の目にどう映るだろう?」

「私たちをお互いの親は許さないだろう」

昭子さんの心は暗い想像で

いっぱいになったのです。

 

「ちょうどそんな時、

父が突然うちに来たの。

父は、すぐに私が同棲していることに

気づいたわ。

私が俊君のことを話すと、

『烈火の如く』っていう表現があるでしょ、

まさにそんな風に父は怒ったわ」

 

昭子さんのお父様は

『これ以上その男と付き合うなら、

親子の縁を切る!』

と吐き捨てて帰ったそうです。

 

昭子さんにとって、

お父さんの言葉は強烈でした。

昭子さんは俊君との別れを決意しました。

 

「ごめんなさい。

これ以上一緒に暮らせない。

私、そんなに強くないの。

別れて欲しい」

 

その言葉を聞いた俊君は、

黙って自分のアパートへ帰って行きました。

 

<初めて寂しいと感じた>

 

俊君と別れた後、昭子さんから私に

電話がかかって来ました。

俊君への思い、年齢の差、

育ってきた環境の違い、親との関係、

昭子さんは悶々と苦しんだようです。

 

「彼に出会って初めて、

一人でいるのが寂しいと感じた。

彼がいなくて寂しいと強烈に感じたの。

私は、今まで親の顔色を見て、

人の評価ばかりを気にして生きてきた。

今まで自分の本心を押し殺して、

ずっと苦しみ続けて来た。

でも、彼に出会い、彼に愛され、

彼を愛したことで、

本当の自分を閉じ込める心の殻から

やっと自由になれた。

やっぱり俊君と離れたくない、

一緒にいたい気持ちが

押さえられないの!」

 

昭子さんは自分の気持ちを切々と語りました。

 

私に電話で話してくれた翌日、

昭子さんは悩んだ末に、

俊君に電話しました。

謝罪と、やはり帰ってきてほしいという

気持ちを伝えたのです。

 

帰って来た俊君も

昭子さん同様に悩んだのか、

やつれた様子だったそうです。

でも、昭子さんに、

「僕は昭ちゃんのことを

一番よくわかっている。

だから、どんな時もありのままの昭ちゃんを

愛しているよ」と言ったのでした。

 

<今の幸せを大切に暮らそう>

 

その日、昭子さんと俊君は、

これからのことを何時間も話し合いました。

最初は、マイナス要素の話しばかりが

出たそうです。

 

「でもね、私、

俊君と一緒にいると幸せなの。

ありのままの自分でいられて、

気持ちがほぐれて楽になれるのよ。

とても穏やかで幸せな気持ち」

と昭子さんが俊君に言うと、

 

俊君も「僕も昭ちゃんといると幸せだし、

落ち着くよ。『別れて』と言われた時は、

喪失感が半端なかった」

と答えたそうです。

 

長い長い話し合いを経て、

「世間体も大切かもしれないけど、

お互いが一緒にいて幸せだと

感じられることほど、大切なことはない」

と二人は悟ったそうです。

先のことはわからないけれど、

「一緒にいて幸せだ」と感じられる今を

大事にすることに決めました。

 

二人が幸せに暮らしていたら、

いつか家族も認めてくれるだろう。

もし家族が認めてくれなかったら、

それは残念だけれど、

自分たちの今の幸せを大切にしよう

という話し合いの結論になったそうです。そ

んな二人は、今も同棲を続けています。

 

『こんな苦しみは、もうごめんだ!』

と何度も思ったけれど、

『彼に出会わなかったら良かった』

とは思わない。彼と恋をしたことで、

私は一回り大きくなったように思う。

私の心を締め付けていた

つまらないプライドや世間体という

心の殻を破ったように思う」

昭子さんは明るい声で、

私にそう話してくれました。

 

<人として成長できた>

 

私の周りの同年代の人には、

昭子さんのように世間体やプライドが

邪魔をして、恋愛に臆病になり、

恋愛経験のないまま年齢を重ねた人が

たくさんいます。

 

誰かを好きになった時、

素の自分になって自分の本心を出すことに

臆病だったのではないでしょうか?

自分の気持ちやプライドが傷つくことが、

怖かったのではないでしょうか?

 

50代で初恋を実らせた昭子さんは、

恋を通して新しい自分と巡り合いました。

人は人を愛することで、

いくつになっても成長できるということを

教えてくれます。

あなただって、これから初めての

恋をしたっていいんです。

 

 

 

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