鬱にはいろいろ辛い症状がありますが、感情が麻痺して何も感じなくなったことは大変辛かったことを覚えています。
何も感じられなくなって苦しんでいた時、フランツ・リストの「愛の夢」を聞く機会がありました。その時、不思議な経験をしたのです。それがキッカケになり、ゆっくりと感じる心が戻って来たのでした。
<鬱による感情麻痺>
鬱の急性期を過ぎ、身体症状が少し治まっても、感じる心はなかなか戻って来ませんでした。感情麻痺で楽しさも、面白さも、悲しさも感じなくなりました。
お腹を抱えて笑えた落語を聞いても笑えず、毎週楽しみに見ていたドラマも全然面白いと思えなくなり、好きだった音楽も雑音にしか聞こえません。好物も美味しく感じなくなり、何を食べても味がしませんでした。
先が見えないどんよりした苦しみの他は、何も感じなくなってしまったのです。周囲がモノクロになったように感じました。
<吐き気と目まい>
鬱は一進一退でなかなか良くならず、その頃の主治医は次々と新しい薬を処方したのでした。ところが、新しい薬が合わず、私は激しい吐き気とめまいの症状に悩まされることになってしまったのです。
3月の下旬、ちょうど桜の時期でした。私はめまいと吐き気の原因が分からず、次の診察まで2週間、激しい嘔吐とめまいにひたすら耐えました。
診察で吐き気と目まいは、新しい薬の副作用であることがわかりました。薬の服用を止めると、程なく吐き気とめまいは治まったのでした。
<桜吹雪と「愛の夢」>
副作用が出る前は蕾だった桜がすっかり散って、葉桜になっていました。体調がやっと落ち着きほっとしたのか、寝室の窓を開いて、買ったままになっていたフジコ・ヘミングのCDを聞いてみる気になりました。
CDの曲がフランツ・リストの「愛の夢」になった時です。私の頭にある光景が浮かびました。おかっぱ頭の少女の私が、桜吹雪に吹かれ、風にサラサラの髪をなびかせていました。物凄く快く感じました。久しく感じなかった快さでした。
<感性を研ぎ澄ます>
感情のない世界に苦しんでいたので、そのイメージと快さはとても印象的でした。
あの時の私は鬱で「感性」を失っていました。何も感じない苦しさは、死にたくなるほどの重苦しさでした。なので、「愛の夢」と桜吹雪のイメージの快さは鮮明で忘れることが出来ません。
その後、副作用が治まって、体調が落ち着き始めたこともあって、私は少しずつクラシックのCDを買って音楽を聞くようになったのでした。
音楽が心を癒やしてくれたのでしょう、少しずつ感じる心も取り戻すことができました。
<苦しんだからこそわかること>
人は失って初めて持っていたものの大切さに気づくと言います。一度は鬱で失った感じる心を、ありがたいことに改めて取り戻して、喜びも、楽しさも、悲しみも、怒りも感じられるようになったのです。
鬱は苦しかったけれど、苦しんだからこそ、何かを感じることができるありがたさを感じます。
そして、鬱で感じる心を失って苦しんでいたあの頃の私には、「今はこんなに元気になって感じる心を研ぎ澄ましているよ」と教えてあげたいです。感情麻痺の辛かった経験とそこから抜け出すキッカケをくれた不思議なエピソードでした。
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