＜描き方がわからない＞
教師だった頃、私が「絵を見るのは好きやけど、描くのは下手やし、どう描いたらいいかわからへん… 」と言うと、美術科の同僚が「久夢さん、まず描いてごらん。そしたら、その内にだんだん描き方がわかって来るよ。僕が教えてあげる」と言って、私に小さなスケッチブックをくれました。
＜楽しさが表れている絵＞
その時、私は旅行に行ったばかりでした。旅行の写真を見ながら、感動した風景や楽しかったことを思い出し、スケッチブックに絵を描いてみました。子どもが描いたような絵が出来上がりましたが、絵を描いている時は、旅の思い出が蘇ってとても楽しい気分になったのです。
美術の同僚は「楽しい絵やね～！久夢さんの楽しさが表れているわ」と言ってくれました。「でも、ここはもう少し影を入れた方がいいね。そうしたら立体感がでるよ。でも、大事なことは、何より楽しむことだよ」とアドバイスをしてくれたのです。すぐに私は絵を描くことに夢中になったのでした。
＜やっかむ人もいた＞
ある時、私が同僚から絵を習っているのを、冷たい目で眺めていた人が「久夢さん、ちょっとあなたのスケッチブックを見せて」と言って、私のスケッチブックを見たのです。
「やっぱり、基礎ができていないから、絵が歪んでいるわ。構図もぐちゃぐちゃだし。私は、今は仕事と家事が忙しいからダメだけれど、退職したら専門の先生にデッサンから習って、ちゃんとした絵を描くわ」と言って、私にスケッチブックを返しました。
今から思うとずいぶん失礼な話です。やっかみだったのでしょうね。
＜たくさん描くことが大事＞
でも私は、美術の先生が悲鳴をあげるほど追い掛け回して、絵を教えて貰いました。私の絵が上手くなったかどうかは分かりませんが、私は確実に絵を描く楽しさを知りました。そして、まずたくさん描いてみることが大事だと言うことを感じました。
私の絵を「歪んでいる」と言った人は、退職するまでこの楽しさを知らずに過ごすのです。もったいない話です。それに退職したら、時間があるとは限らないし、いくら「専門の先生にデッサンから習って」もたくさん描かなければ、突然、上手にはならないと思います。
＜まずやって楽しむこと＞
私は今でも時々、絵を描いて楽しんでいます。「まず描いてごらん」「何より楽しむことが大事」と言って絵を教えてくれた同僚に今も感謝しています。
「まずやってみること」「楽しむこと」の大切さは、何かにチャレンジしたい時にも通じているのではないでしょうか？
もしやってみたいことがあったら、まずやってみること、そしてそれを思い切り楽しむことが秘訣なのだなと感じます。絵を描くことを通して人生に通じる大切なことを学んだのでした。
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