京都人はダジャレが好きだってご存知ですか?

そう言えば、生粋の京男だった父は、食事の時、こんなことをよく言っていました。
「ごちそうさん。ああ、馬勝った。牛負けた」(馬勝った→うまかった→美味しかった)
また、夏場に怪談話をする時は、
「裏飯屋、表うどん屋、横寿司屋」(裏飯屋→怨めしや)と。
こんな寒いダジャレをよく言っていました。でも、父だけでなく、京都人はこんなダジャレや縁起かつぎが好きなようです。

▶京都人が好むダジャレは雅なことば遊びの伝統
京都人がダジャレ好きなのは、実は千年以上前から続く「雅なことば遊び」の影響なのです。

昔、古典の授業で「掛詞(かけことば)」を習ったことを思い出しました。
「掛詞(かけことば)」とは?
平安時代の和歌につかわれた掛詞は、一つのことばにいくつかの意味を持たせることで、和歌の奥行きや感情の深さ、情景を表現する高度な技術だったのです。
例
「大江山 いく野の道の遠ければ、まだふみもみず天の橋立 小式部内侍」
この歌は、「母(和泉式部)のいる丹後の国へは、大江山を越え生野を通る道が遠いため、まだ天橋立へは行ったことがなく、母からの手紙(ふみ)も見ていない」という小式部内侍の和歌です。
これは、平安貴族の洗練された文化の一部であり、ことばを大切にし、美しく、そして機知に富んだ形で使うという精神が根づいていたのですね。
▶ダジャレへの影響
掛詞のように「音は同じだが意味が違うことば」を巧みに使いこなす言語感覚は、京都の公家や知識人たちの間で培われました。
これが時代を経て、庶民のことば遊び、つまりダジャレ(洒落)といった形で広がり、日常に溶け込んだと考えられます。
特に京都は、長い間日本の都であり続けたため、上流階級のことば文化が庶民のことば遣いにも影響を与えやすい土壌があったと言えるのです。
父の寒いダジャレも、寒いながらも、その場をパッと明るくする機知に富んだ「間」の文化なのかもしれません。
▶縁起かつぎ(ゲン担ぎ)も好きな京都人
京都人は「縁起かつぎ(ゲン担ぎ)」も好きなようです。
たとえば、白味噌仕立てで有名な京都のお雑煮。
白味噌と丸餅は共通ですが、お雑煮の具材は各家庭で違います。わが家のお雑煮もいろいろ縁起を担いだ謂れ(いわれ)があります。
祖母から母、母から私と伝えられたお雑煮にも、京都人の縁起担ぎ好きが表れています。
《わが家の雑煮:具材の謂れ》

大根=白く清廉潔白に
金時人参=金時さんのように赤く元気に
ごぼう=ごぼうのように細く長く
れんこん=先が見通せるように
頭芋=頭になれるように
揚げ=運気が上がるように
丸餅=丸く円満に
▶もともとは言霊信仰だった!
日本の古い信仰には、「ことばには霊的な力が宿る」という言霊(ことだま)信仰があります。
古代から存在したこの信仰は、都である京都の公家社会で、さらに洗練されました。
和歌や雅なことばを通じて、「良いことば(言祝ぎ・ことほぎ)」を使うことで、現実の世界にも良い出来事を引き寄せることができると考えられていました。
ことばの音や意味に「吉(縁起の良いこと)」「凶(演技の良くないこと)」を見出す感性は、公家社会の儀式や儀礼を通じて育まれ、後の世の縁起かつぎの基礎となりました。
関係はないのかもしれませんが、祖父母が「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」とか「夜に笛を吹くと蛇が出てくる」とか言っていました。
「昔は照明が暗くて、夜に爪を切るのは危なかったから」「夜に笛を吹くのは近所迷惑だから」と、父は京都人らしい、ちょっと皮肉の効いた合理的な説明をしていましたが。
▶「見立て」と「掛詞」の精神
父のダジャレや、お雑煮の具材に込められた意味は、「見立て(みたて)」という日本的な発想に共通しているようです。
見立てとは: ある物事や形を、別のものになぞらえて表現することです。
お雑煮の例

「頭芋(かしらいも)」を「頭になれるように」と、意味や音で願いを込めるのは、まさに平安貴族の掛詞や、物事の形に意味を持たせる文化の延長線上にあるようです。

丸餅(まるもち)を「まるく円満に」とするのは、「形」に、ごぼうを「細く長く」とするのは「性質」に、それぞれ理想的な未来を託しているのでしょう。
▶儀礼と伝統の重さ
都であった京都では、周辺の町衆(庶民)も、宮中行事や公家の洗練された生活様式に強い影響を受けてきました。
縁起かつぎは、単なる迷信ではなく、「良き新年を迎えるための儀礼」として、家族や地域で受け継ぐべき「文化」として定着しました。
お雑煮の具材に意味を込める伝統は、平安時代から続く「ことばの力(言霊)」と「見立て」を重んじる京都の長い歴史が、現代の食文化にまで及ぼした影響の一つだと言えるようです。✨
父の寒いダジャレのルーツが、こんなに雅やかだとは思いもしませんでした。
でも、父の寒いダジャレも、思い返せば家族を笑わせ、場をやわらげる「言霊の贈り物」だったのかもしれません。
(【ああ、京都人】京都人はダジャレや縁起かつぎが大好き:村川久夢)

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