みんな必ずこうして別れるのだ––生者必滅、会者定離

 

斎場で火葬炉の扉が締まる時、「ああ! 父と最後の別れの時が来たんだ!」と実感し、とてもつらかった。あんなに恐れていた父の「死」が現実のものとなった瞬間でした。

 

若い頃、死は遠い存在でした。でも、そんな私も年齢を重ねて、何度も親しい人との永遠の別れを経験し、ついに父とも今生の別れをしたのです。

 

父が亡くなって3ヶ月ほど経ちました。少しずつ心が整理される中で、この思いを文章に残すことにしました。

 

父は生前、「生者必滅、会者定離」とよく言っていました。「生者必滅、会者定離」は、仏教語で「命あるものは必ず死に、出会ったものは必ず別れる」という意味です。

 

生きとし生けるものはみんな必ず死に、みんな一人一人別れていくということを、どんなに嫌でも受け入れることが、人として成長することなのだと、父の死を通して痛感したのです。

 

 

施設で暮らしていた父が弱り始めたのは、亡くなる1ヶ月ほど前でした。施設から連絡があり、父が数日前から、食事を取りたがらないというのです。

 

私は「食事を取りたがらない」ということが一番気にかかりました。「今度こそ、もう駄目かもしれない」という思いが頭をよぎりました。ここ数年、何度、そのような覚悟をしたことか……。

 

「生者必滅、会者定離」。嫌だけれど、生きとし生けるものは、死を免れることはできません。「ああ、イヤだ! なんで人は死ぬんだろう……」と、遠からずやってくる父の死を受け入れられず、ジタバタしていたのです。

 

 

そんな私と弟のもとに、また施設から連絡がありました。「施設の主治医がお父さんの今後のことで、ご家族と相談したいと言っている」というのです。父の状態が悪いのだと心がざわざわしました。

 

父は嚥下ができず、脱水症状を起こしているのです。点滴を打とうにも、腕の血管はもろくて点滴できず、足の付け根から点滴をしていると聞きました。

 

翌日、私と弟は、主治医から終末期の医療や介護について説明を受けたのです。父にはできるだけ苦しまず、自然な形で人生の最期を迎えてほしいという家族の希望を伝えました。

 

「ついに来たか……」と思いました。

 

父が遠からず亡くなることを受け入れられなくて、ジタバタしていた私ですが、やっと受け入れられたのか、覚悟ができました。ジタバタしていた時よりも、静かな気持ちになれたのです。

 

 

私たち姉弟が主治医から説明を受けた翌日、父は苦しまず静かに息を引き取りました。父は眠っているような穏やかな顔をしていたのです。

 

通夜で、祭壇の中央に飾られた父の遺影を見て、「父は死んでしまったんだな……」と、少しずつ父の死が現実のものになるのを感じました。

 

慣れないことをしたからか、自宅に帰って来ると、クタクタに疲れていました。同時に父がいない寂しさが、ジワジワと押し寄せて来たのです。

 

「96歳で天寿を全うしたのだからいいではないか」という方もいらっしゃいますが、何歳であろうと、親しい者の死は寂しくつらいものです。

 

告別式の後、斎場で父と最後の別れをしました。火葬炉の扉が閉まる音が耳にこびりついています。

 

お骨になった父は、長年、朝の散歩を日課にしていたからか、足の骨がしっかりしていたのです。散歩で鍛えた足もお骨になり、つくづく人は儚いものだなと感じました。

 

 

穏やかで優しかった父。私が鬱で寝てばかりいた時も、何ひとつ非難がましいことを言わず、温かく見守ってくれた父。認知症が進んで幼い少年のようになった父。

 

 

 

父の認知症が進んでも、私はいつも父が生きていてくれることが頼りでした。父が死んでしまうことを考えるだけでもパニックになったのです。

 

父がよく口にしていた「生者必滅、会者定離」ということばが思い出されました。生きとし生けるものはみんな必ず死に、みんなこうして一人一人別れていくのです。どんなにつらくても、このことを受け入れ、人として成長するのでしょう。

 

 

 

 

父の遺体が火葬された時はつらかった。でも、涙はでませんでした。「父は私の心の中にいて、会いたい時には、いつでも会える」と思えるから。心の中の父は、今も笑顔です。

 

 

京都在住セラピスト作家:村川久夢(むらかわくむ)

 

 

 

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