鬱を発病した頃、人がたくさんいる場所に行きたくありませんでした。と言うよりも、人が怖くて自分の部屋から出ることすらできなかったのです。
鬱の急性期が過ぎたのは、桜の開花予想が報道され、桜が咲き始めた頃でした。何か追い詰められたような気分でした。
そして、桜が満開になると、沸き立っている世の中の雰囲気についていけない自分が、責められているように感じたのでした。
「部屋にこもってばかりはダメだよ」と友だち一家がお花見を兼ねたドライブに連れて行ってくれたことがありました。
「元気になった」と思いたい、世間並みになったと思いたい一心で、友だち一家とドライブにでかけました。でも、私は途中で激しい頭痛に見舞われて、友だちに迷惑をかけてしまったのです。
私はそれ以来、ますます部屋に引きこもるようになってしまいました。
でも、ありがたいことに治療を続けると少しずつ鬱の症状はよくなり、土いじりをしたくなったのです。夫に頼んで花の苗を買ってきてもらって、玄関先の僅かな地面に植えました。
誰に見せるわけでもないのに、咲いた花の写真を撮って楽しむことができるようになったのでした。
満開の桜は人を酔わせるように美しいです。親しい人とその美しさを共有できるのは、本当に楽しいことです。
でも、「春の楽しみ方は人それぞれだよ」と満開の桜が辛かったあの頃の私に教えてあげたいです。人それぞれ、自分の春を自分のスタイルで楽しめば良いのです。
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