私が小学生の頃、学校から帰って来ると祖母が「お腹減ったやろ。さあ『けんずい』食べや」と言って「けんずい」を食べさせてくれました。「『けんずい』って何やろう?」と思って調べました。「けんずい」とは何か?祖母の「けんずい」の思い出をエッセイに書きました。
<「けんずい(間水)」とは?>
「間水(けんずい)」は、間食やおやつのことです。
【けんずい(間水)】
① 昔の二食時代、朝食と夕食との間に食べる間食。現在の昼食にあたる。
② 三食の他に飲食する飯、酒、餠など。特に昼食と夕食の間の飲食。小昼(こびる)。おやつ。(コトバンク『精選版 日本国語大辞典』より)
コトバンク「けんずい」の引用によると、滑稽本・街能噂(1835)二には「昼飯から夜食の間に、又飯を一度喰ひやす。是を八つ茶とも小昼ともいひやす、京都にてはケンズイといひやす」と言う記述があるようです。
「けんずい」は今ではほとんど使われなくなった京ことばの一つだと思います。
<美味しかった祖母の「けんずい」>
明治の京女がそうであったように、明治24年生まれの祖母も質素に倹約して慎ましやかに生きるのが、京都に生きる庶民のつとめだと固く信じていました。
祖母が用意してくれた「けんずい」が上等のお菓子だったことは一度もなく、祖母が漬けたお漬物や祖母が炊いた塩昆布を添えたお茶漬けのことが多かったように記憶しています。
でも、祖母のお漬物も塩昆布もとても美味しいのです。学校から帰って来て、小腹が空く時間に食べる「けんずい」は、本当に美味しくて何膳でも食べられそうでした。
<地味でも本物の味>
祖母自身は一切間食をしませんでした。でも、祖母は間食用に、「割れ」の八ツ橋、「割れ」のおかき、ごくたまに「松風」の端っこ(ハシテラのようなもの)などを家族のおやつ用に常備していました。どれも「割れ」だったり「端っこ」だったりでしたが(笑)
「たまには割れてへんのを買うて」などと言おうものなら、「割れてへんのは、お客さんにだすもん。内々で食べるのは『割れ』でええんや。冥加わるい」と言って叱られたものです。
祖母は、私がガムやチョコレートやスナック菓子を食べたり、清涼飲料水を飲んだりするのを酷く嫌っていました。当時は、それが非常に窮屈でした。
でも、今考えると私が子どもだった昭和30年代~40年代の市販のお菓子は、合成着色料、合成香料、合成甘味料が大量に配合されていました。それに対して、祖母の「けんずい」は地味でしたが、無添加で本物の味だったと思います。
<本物の味のある人間>
「けんずい」と言う京ことばを思い出し、京都のしきたりを守って質素に慎ましやかに生きていた明治24年(1891年)生まれの祖母を思い出しました。「けんずい」を食べながら、祖母に学校であった話などをしたことが、今は懐かしく思い出されます。
正直に言うと、子どもの頃は、口を開くと「京都ではこう決まっているんや」と言う祖母が窮屈でたまりませんでした。祖母が大事にしていた京都のしきたりも、孫の私はほとんど守っていません。
ふと思い出した「けんずい」も消えゆく京ことばの一つだと思います。でも、このエッセイを書いて、祖母の本物だった「けんずい」のことを書いておきたいと思ったのです。そして、地味でも本物の味のある人間でありたいものだとも思ったのでした。
*ブログ「ああ、京都人」を新著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』に書籍化しました!
【村川久夢新著】
『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます』
<新著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』目次>
- 1章は京都人の三大都市伝説について
- 2章は京都の食べ物
- 3章は京ことば
- 4章は京都が舞台になった小説
- 5章は京都人について
*電子書籍(Amazon Kindle「読み放題」に登録されている方は0円でご購読いただけます。一般価格は700円です)下記よりお申込み下さい。
*村川久夢著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』1章無料公開中
本書で、京都好きな方はもっと深く京都を好きになり、今まで京都と縁がなかった方は京都を身近に感じて頂けると思います。ぜひ「あなたの知らないもうひとつの京都」を見つけてください。
<参考記事>
コトバンク:精選版 日本国語大辞典「間水・硯水・建水」の解説
<関連記事>
*【エッセイ集:ああ、京都人】京都で生まれ育った庶民が見た京都
*村川久夢著『50歳から夢を追いかけてもいい5つの理由』1章無料公開中
*村川久夢著『大丈夫、きっと乗り越えられる~鬱・夫の死を克服した私からのエール~』
*----------*
【村川久夢ホームページ】
✿村川久夢著『50歳から夢を追いかけてもいい5つの理由』✿
『50歳から夢を追いかけてもいい5つの理由』は、村川久夢が「年だから」「今さら遅いから」など様々な心の制限を外し、他の誰かのためではなく、自分の心が望むことにしたがって生きるようになった軌跡を描きました。私が自分軸で生きられるようになった成長の課程を描いています。
*電子書籍(Amazon Kindle「読み放題」に登録されている方は0円でご購読いただけます。一般価格は550円です)下記ボタンよりお申込み下さい。
*紙の本は、880円(送料180円)です。下記ボタンよりお申込み下さい。
*----------*
✿心の制限を外す講座✿
心の制限を外せば、いろいろなことにチャレンジして、人生を楽しめるのです。「心の制限の正体とは何か?どうして心の制限を外すか?心の制限を外せばどんなことが起こるのか?」を9通のメールに込めた「心の制限を外す無料メール講座」を是非お読み下さい。
*----------*
✿村川久夢インナーチャイルドカードセラピーご案内✿
「村川久夢インナーチャイルドカードセラピー」は、インナーチャイルドカードを使って、あなたの心の奥底にある夢や希望を明確にし、恐れや不安を整理し解決するサポートをします。本心がわからなくなった時、自分の心を見つめ直し整理したくなった時、どうぞ相談にいらして下さい。
*----------*
*村川久夢ホームページトップには、新著『50歳から夢を追いかけてもいい5つの理由』に頂いた感想を多数掲載しています。