《釜山旅行記紹介》
春の釜山へ、40代になったばかりの私と同僚が二人で出かけました。
スマホもSNSも今ほど当たり前ではなかった頃、地下鉄や路線バスに揺られ、思いがけない人の優しさや笑いに、たくさん出会った旅です。
「奥さん、コピーありますよ」から始まった、ちょっと怪しくて、おかしく温かい釜山二人旅。全5話をまとめてお届けします。
第1話:韓国釜山・爆笑女二人旅 ~奥さん、コピーありますよ~
「コピーありますよ、奥さん!」
と屋台のおにいさんに声をかけられたのは、韓国・釜山の国際市場。そこには驚くほどたくさんの露天が並んでいた。翌年の日韓ワールドカップ共催で日韓友好ムードがマックスの頃。
ブランド好きの同僚は、「ロタックス」とか「チャンネル」とか、明らかに偽物の時計をお土産用に買い漁っていた。
屋台のおにいさんが「コピーありますよ」と声を潜めて言ったのは、その時だった。
私も同僚もためらったが、好奇心に負けておにいさんについて行ったのだ。まるで映画のワンシーンのような、細くて薄暗い通路へ――。
当時はまだガラケー時代、スマホもなく、SNSはミクシィくらいだっただろうか。私は40代前半、同僚と2人で釜山旅行を計画し、釜山についたばかりだった。
15時ごろに釜山のホテルにチェックインして、すぐに国際市場へと繰り出した。「ちょっと散策しよう」程度の気持ちで、お小遣い用のウォンをもって出かけた。
コピーの店は、いかにも「アンダーグラウンド感」満載。流暢な日本語を話す社長が待っていた。屋台のおにいさんはどうやら客引きのようだ。
初めは「摘発されたらどうしよう……」とビクビクしていた同僚は、ルイヴィトン、プラダ、シャネルなどの精巧なコピーを見ると、目がキラキラして態度が一変した。
もう私の存在などすっかり忘れて、社長と値段交渉を始めた。コピーに関心のない私も客引きのおにいさんも暇。
独学中の韓国語を話したくて話したくてたまらない私には、手持ち無沙汰にしている客引きのおにいさんは格好の話し相手だ。
「社長さんとは、兄弟ですか?」
「私、一人で日本語を勉強しています」
「韓国のバラードが好きで、ワックスが一番好きです」
おにいさんは、「あれ、案外、話すやん」といった表情で私の韓国語に応対した。
一方、同僚はコピーに夢中で、「ヴィトンのバッグは?」「財布は何があるの?」「ベルトも名刺入れもほしいねんけど」と、次々と社長に注文を出し、商品のチェックに余念がない。
――そんなに買ってどうするの?
私は呆れたが、同僚は私や客引きのおにいさんなど眼中にないのだ。結局、あまりにたくさん買ったので、お小遣い用にもってきたウォンが足りなくなってしまった。
社長は「大丈夫! 大丈夫!」と言って、客引きのおにいさんに目で合図をした。おにいさんが「つけうま」として、ホテルまで同行することに。
かなり前のことで記憶が曖昧だが、気持ちのいい春の夕方だった。海ぞいの国際市場から、高台にあるホテルまで三人で歩いた。そよ風が気持ちよかったのを覚えている。
私は、自分の韓国語が韓国人のおにいさんに通じるのがうれしくて、話しかけつづけた。
ところが、おにいさんは、私がおにいさんに「気がある」のだと勘違い。「屋台は夜10時まで。その後、ご飯一緒に食べませんか?」と日本語で言ったのだ!
チャットで仲良くなった韓国人と夕食をする予定があることを韓国語で話すと、おにいさんが、
「チングヌン(友だちは)、ヨジャ(女性)? ナムジャ(男性)?」と聞いたので、
「ナムジャ」と答えるとおにいさんは、気の毒なほどがっかりした顔に……。
じゃがいもを連想させるような素朴な感じの30代男性、イケメンではなかったが。
ホテルについて、代金を受け取ると客引きのおにいさんはすぐにコピーの店に帰った。
なぜか、今も覚えている。釜山の空気、たくさんの屋台、怪しげな通路、精巧なコピー商品と客引きおにいさんのナンパ。
私は何度も外国へ個人旅行したけれど、ナンパされたのは、客引きおにいさんが最初で最後だった。
すべてが、なんとも愛おしくて、ちょっと笑えて、ちょっぴり刺激的だった。
次回、第2話「韓国人アジョシ(おじさん)二人と会食&カラオケ三昧の夜」につづく。
第2話:公衆電話と間寛平アジョシ~日韓カラオケ大会の夜
前回のあらすじ:
40代になったばかりの頃、同僚と春の釜山(プサン)に旅行しました。釜山につくと、すぐに国際市場にくりだした私たちは、怪しげなコピーのお店に……。客引きのおにいさんにナンパされそうになったり、釜山珍道中の始まりでした。
▶「私、白いコートを着ています」
国際市場から南浦洞(ナンポドン)のホテルに戻り、いよいよ今日のメインイベント――チャットで知り合った韓国人アジョシ(おじさん)とのご対面! 待ち合わせ場所は、地下鉄西面(ソミョン)駅。
西面駅には無事に着いたのですが、当時、スマホはまだなく、私はPHS、同僚もガラケー。韓国人アジョシに電話をかけるには、公衆電話を使うしかありません。
公衆電話はけっこう人が並んでいました。使い方がよくわからず、もたもたしていると、私の後ろで待っていた女性がイライラした表情。おそるおそる電話番号を見せて、代わりに電話をかけてもらいました。
やっと、アジョシと通話がつながり、「私は白いコートを着ています」と目印になるものを伝えると、アジョシは、「僕は間寛平ちゃんやから、すぐわかるよ~」と冗談まじりに笑いました。
しばらくして現れたのは、ほんとうに間寛平さんそっくりな韓国アジョシ(笑)
「アジョシ~!」と声をかけようとすると、アジョシはどこからどう見ても20代前半にしか見えない女性に声をかけているではありませんか。
「あなたクムちゃん?」と。
――なんでやねん!
内心ツッコミが止まりません。
西面駅を後にして、合流したもう一人は、日本語学院の院長先生。落ち着いた物腰で、端正な顔立ちの紳士。日本語も流暢で、まるでドラマに出てきそうな人物でした。
▶上品な韓国料理店で釜山初ディナー
連れて行ってもらったのは、観光客向けではない、上品な料亭のようなお店でした。ドラマで、お客様の接待で使いそうな店でした。
テーブルにはところ狭しと料理が並んでいます。コチュジャンで食べるお刺身、テーブルの中央には網があって、焼き肉もできました。
私は、敷板に乗せられた陶器の器で蓋もついている料理に興味しんしん。熱そうな音も立てています。
「ケランチム((계란찜)美味しいよ。でも、熱いから気をつけて」と間寛平アジョシ。
蓋を取ると、ぷくぷくと泡立っています。木製のスプーンですくって一口食べてみました。
「茶碗蒸しやん!」と思わず声がでました。「ケランチム」の「ケラン」は卵、「チム」は蒸し料理のことなんです。まさしく茶碗蒸し。
韓国料理と日本料理の共通点を見つけたようで、うれしい驚きでした。
私はがつがつ食べるのに夢中でしたが、同僚はなぜか急におとなしくなって、ちっちゃくなってほとんど食べず(笑)
職場では「女性職員の番長」みたいな存在なのに、案外少女みたいなところがあるんだなぁと、そんな発見も楽しいひとときでした。
▶日韓カラオケ大会!
そしてお食事のあとは、寛平アジョシの「ノレバン(カラオケ)に行こう!」という一声で、四人でカラオケ店へ。
韓国のおじさん二人は、なぜか日本の演歌を熱唱。声量も情感もたっぷりで、聞き惚れてしまうほど。
院長先生が、三橋美智也さんの「達者でナ」を朗々と歌われました。本当にお上手でした。
私も負けられないとK-POPのバラード、当時流行っていたワックスの「化粧をなおして」や「プッタケヨ」を韓国語で熱唱して、同僚を驚かせました。
同僚はカラオケでも「少女モード」で行儀よく膝の上で手をそろえて、座っているだけです。
私の韓国語バラードはすぐにレパートリーが尽きてしまいましたが、アジョシ二人の日本語演歌のレパートリーは無尽蔵!
結局、最後は同僚の手拍子に合わせて、アジョシ二人と私の三人で古い日本語演歌の大合唱になったのでした。
▶思い出の夜
美味しい料理と、笑いあり歌ありの夜。釜山初日の夜は、思いがけない人たちとの出会いで、忘れられない思い出になりました。
観光ガイドには載っていない、私だけの釜山物語の始まりです。
次回、第3話「乗合タクシーで梵魚寺(ポモサ)、海辺のライブバーの夜」に続きます。
第3話:韓国語でウッシッシ〜!梵魚寺から感動バラードの夜
前回までのあらすじ:
40代の私と同僚が春の釜山へ。コピー商品に出会ったり、韓国人アジョシと日韓カラオケ大会をしたり、いきなり濃厚すぎる初日を過ごしました。さて、2日目は…?
▶韓国版万里の長城に行きたかったけれど……
釜山旅行2日目、釜山の北部にある梵魚寺(ポモサ)に行くことに。
本当は梵魚寺から、韓国版万里の長城と呼ばれている「金井山城(クムジョンサンソン / 금정산성)に行ってみたかったのです。
でも、韓国人のアジョシ二人が口をそろえて、「お寺はいいけれど、お城は次の機会にした方がいいよ」と言うので、アドバイスに従うことにしました。
▶梵魚寺(ポモサ):「お世辞でしょ~」と心の中でニヤリ
朝、地下鉄で南浦(ナンポ)駅から梵魚寺(ポモサ)駅へ。さらに路線バスに乗って、お寺のある山の中腹まで向かいます。けっこう長い距離を走った記憶があります。
肝心の梵魚寺そのものは、実はあまり覚えていなくて(汗)ただ、韓国式のお参りのしかたが、五体投地のような動作だったのがとても印象的でした。
梵魚寺近くのお店でお土産を物色していると、お店のアジュマ(おばさん)に「アガシ(お嬢さん)!」と呼びかけられたのです。私はさっそく、
「アガシ アニゴ、アジュマエヨ!」(お嬢さんじゃなくて、おばちゃんですよ〜)
と返すと、店のアジュマがびっくりした顔で
「なんでアジュマなんてことばを知ってるの!」
と驚かれました。ここぞとばかり、独力で韓国語を勉強していると話すと、
「ハングンマル チャラシネヨ~(韓国のことばがお上手ですね)」とお世辞をいわれたので、
「ビヘンギロ テウジマセヨ」(飛行機に乗せないで:お世辞でしょという意味らしい)と答えると、土産物屋のアジュマは本気で驚いていました。
私は「ウッシッシ~」という気分!
▶初乗合タクシーで東莱(トンネ)へ
帰り道、バスの本数が少なくて時間を持て余していたところ、タクシーの運転手さんに、
「タクシー乗らない?」と日本語で話かけられ、
「タクシーヌン ピッサヨ」(タクシーは高いから)と私。
「バスの停留所まで、バス代でOK」ということで交渉が成立しました。
「ちょっと怪しいかな?」と警戒しつつも乗ってみると、すでに大きな荷物を抱えたおばあさんが……。
どうやら「乗合タクシー」が当時は普通だったようです。おばあさんはニコニコしながら軽く会釈してくれたのです。
「これが乗合タクシーか~」と、おばあさんの存在で返って安心でした。
梵魚寺駅から地下鉄で東莱(トンネ)駅へ。東莱(トンネ)でパジョン(チヂミ)と石焼ビビンバの、早すぎる夕食&遅すぎるランチを。
▶海が見えるライブバーに行くことに
ホテルに戻ってくつろいでいると、アジョシ(チャット友だち:日本語ペラペラの間寛平そっくりの韓国人)からホテルに電話があり、「今夜も一緒に夕食でも」と誘ってくれました。
でも、私たちは中途半端な食事をしてしまっていて、夕食は無理だったのです。
「院長先生(日本語学院の院長:間寛平アジョシの友人)が『じゃあ、よく行くライブバーに行こうって』って言ってるよ」とアジョシが言ってくれたので、ライブバーに行くことに。
タクシーに乗って海沿いをドライブしながら向かったそのお店は、海が見えるとっても素敵なライブバー。
▶ライブバーで韓国語リクエスト!~ドキドキのひととき
ライブバーでは、韓国人シンガーがシン・スンフンの「I Believe」を弾き語っていて、それがもう情感たっぷりで感動!
私、この曲を韓国語で歌えるほど大好きだったんです。
しばらくして、歌手が「リクエストはありますか?」とお客さんに声をかけたんですが、誰も何も言わない、反応すらなくてシーン。私だけが勇気を出してリクエスト!
「プハル ネバーエンディングストーリー プルロ チュセヨ!」(プハルのネバーエンディングストーリーを歌って下さい)
「コマウォ〜(ありがとう)」と歌手が笑って返してくれて、私もつい調子に乗って
「クノレヌン チョンマル チョアヘヨ」(この歌が本当にスキなんです)
「チョヌン イルボン サラミエヨ〜」(私は日本人です〜)
と怪しい韓国語で返したりして(笑)
もう、楽しくてうれしくて、胸いっぱいでした。
▶政治談義でぶち壊し?おじさんたちの夜
ところが……その大好きな曲の最中、急にアジョシ二人が、なぜか日本語で政治談義を始めたんです。
しかもどんどん声が大きくなってきて、しみじみ聞いていた私は台無し(泣)
「ねえ、クムちゃんはどう思う?」なんて話を振られて、心の中では――知らんがな〜!って思ってました(笑)
アジョシ二人と話している間に、歌手が退場して、次にサックス奏者が登場。
院長先生もお酒が入っていたせいか、いつもは上品な物腰なのに、すっかり「ただのアジョシ」化してて少しがっかり……。
でも、閉店時間まで、私たちの会話は盛り上がりました。
▶タクシーで南浦洞のホテルへ帰る
院長先生は、きちんとお会計してくださり、タクシーを呼ぶと、
「お客様は日本人だからね。ちゃんとホテルの前まで送って行ってね。釜山観光ホテルじゃなくて、タワーホテルだよ!」
と何度も念を押して、タクシー料金を先払いしてくれました。
タクシーで南浦洞のホテル近くまで行き、LGコンビニで飲み物を買って部屋に戻ると、もう深夜。
私たちは、初日に続き二日目もなかなか濃い一日を過ごしたのでした。
次回、第4話「お買い物バトル&最後の夕食はマンドゥとキンパプ!」につづく
第4話:チャガルチ市場の朝食&ハラハラ!路線バスで観光案内!?
前回までのあらすじ:
40代になったばかりの私は、同僚と春の釜山へ。コピーを買い、韓国人の友人とカラオケで盛り上がり、海辺のライブバーで韓国バラードを堪能した私たち。さて、三日目は?
▶チャガルチ市場の朝食~ヘムルパジョンとテンジャンチゲ
釜山旅行3日目の朝、私たちはまず、釜山の台所として名高いチャガルチ市場へと向かいました。
市場に足を踏み入れると、そこは驚くほど活気に溢れていました。ずらりと並んだ屋台には、銀色に輝く太刀魚が山のように積まれ、生のタコが山積みに! タコはよく見るとまだ生きているようです。
店先では、小豆粥や南瓜粥が大きなお鍋で売られていたり、魚を注文すると刺し身にしてもらえたり。
店頭でチヂミを焼いている食堂にはいることに。ヘムルパジョン(海鮮チヂミ)とテンジャンチゲ(味噌鍋)を注文して、店内の席につくと、隣の席では朝からつまみなしでソジュ(焼酎)を飲んでいるアジョシが。
程なくヘムルパジョンとテンジャンチゲが運ばれてきました。ところが注文していないおかずが驚くほどたくさん出てきたのです。
注文を間違えたのかと焦っていると、無料のサービスおかず(パンチャン)でした。
シシトウとジャコのコチュジャン炒めも数種類のキムチも名前をしらないその他のおかずもとても美味しく、メインとおかずでお腹がいっぱいになりました。
チャガルチ市場を後にし、私たちはお土産を買う予定の漁協スーパーへ下見に行きました。すると途中、ヤクザ風の韓国人数人に出会ったのです。
ちょっと身構えていると、突然、その中の一人が、「どうぞよろしくお願いします」と日本語で言って、深々とお辞儀したのです! どうやらお酒に酔っていたようです。
▶「え?太宗台まで路線バス⁉」タクシーじゃないの!?
朝食後は、玄界灘が見渡せるビューポイントとして人気のある太宗台(テジョンデ 태종대)に行くことに。太宗台公園を散策して、近くにある太宗台温泉に入ろうという計画でした。
一旦、ホテルに戻り、フロントで太宗台行きのバスはどこで乗ればいいのかを尋ねました。
「え? バスで行くのですか? 韓国はタクシー料金が安いのでタクシーで行った方がいいですよ」
と言われましたが、地下鉄や路線バスに乗ってみたかったので、バス停の場所を教えてもらいました。
バスが来たので、バス料金を料金箱にいれて、座席につきました。ほとんどが地元の人で、しかも途中でどんどん人が降りていき、私と同僚の二人になったのです。
運転手さんが、「前に来い」というように手招きします。「料金が足りなかったか?」と思ってあわてて、運転席まで行きました。
すると、運転手さんは「地図を持って来い」と私に言って、同僚にも手招きしました。
二人で前に行くと、なんと運転しながら、観光案内をしはじめたではありませんか! みちは、片側は崖、もう片側は海で、けっこう細い道路なんです。
▶運転手さんの観光案内にハラハラ
運転手さんは、私が少し韓国語を話せるとわかったようで、熱心に韓国語で観光案内をしてくれました。
その日は天気がよく、春の釜山港がきれいに見えましたが、すれ違う車も多く、危険な道路状況なので、私と同僚はハラハラドキドキでした。
運転手さんの説明で、見えてきた島が、韓国歌謡「釜山港へ帰れ」にも歌われている「五六島(オリュット 오륙도)だとわかりました。
運転しながら「釜山港へ帰れ」を熱唱し、一瞬、両手をハンドルから離して身振りまでつける熱演ぶり。いやいや運転中ですよ、アジョシ〜!
運転手さんの危ない説明で、「五六島」は、「潮の満ち引きによって5つや6つに見える」ことから命名されたようでした。
太宗台は最後のバス停で、結局、最後に残った乗客は私たち二人でした。ハラハラしましたが、親切な運転手さんに感謝! とてもユニークな経験でした。
▶太宗台温泉はまさかの休館日だった
私たちは太宗台灯台に行き、公園を散策しました。椿、チンダルレ、レンギョウなどが満開で、真っ青な空に映えてとても美しく、灯台から見る釜山港は、青くてキラキラ輝き、春風が快かった。
「さて、次は太宗台温泉!」と張り切って、太宗台灯台から200mほどの位置にある太宗台温泉に向かいました。
温泉施設の入口前まで行ってわかったのですが、なんとその日は休館日だったのです!
泣く泣く路線バスで南浦洞に戻りました。
▶ロッテ百貨店でシャネルのバッグ購入~もちろん私じゃないですが
私は疲れたので、ホテルでゆっくりしたかったのですが、ブランド好きの同僚はロッテ百貨店へ行きたいと言って聞かないのです。
5歳年上の彼女がすねるので、しかたなく、西面にあるロッテ百貨店へと向かうことになりました。
釜山初日、国際市場の怪しげなコピー商品の店であんなにたくさん買ったというのに……。
ロッテ百貨店に着くと、同僚の目が輝いて、彼女はなんと15万円のシャネルのバッグを購入!
「なんぼコピーが精巧でも、やっぱりほんまもんが欲しいねんもん」と本物のブランドバッグを手に入れ、同僚は満面の笑みでした。
▶西面で遊びすぎて夕食を食べそびれた~マンドゥとキンパプ
その後、西面の繁華街で韓国コスメや可愛い雑貨を買ったり、屋台で小さいたい焼きのような「プンオパン(붕어빵:鮒焼き)」を食べたりしているうちに、あっという間に時間が過ぎました。
私たちは夕食を食べそびれてしまったのです。ほとんどの食堂が閉店していて、私たちは途方に暮れてホテルへ。
フロントの女性に事情を話すと、ホテル近くに出る屋台のマンドゥ(餃子)が美味しいと教えてくれました。
早速、屋台へと向かい、熱々のマンドゥをゲット。さらに別の屋台でキンパプ(韓国のり巻き)も購入しました。キンパプのアジュマは、サービスにとべったら漬けのようなお漬物をたくさん入れてくれ、その心遣いに感激。
LGコンビニでハイトビールを買い込み、3日目の夜は、ホテルでの遅い夕食となりました。
マンドゥ、キンパプ、そしてサービスのお漬物、それに軽くて飲みやすいハイトビール。
やっとありついた夕食は、どれもが驚くほど美味しく、釜山の庶民の味を存分に堪能!
朝、チャガルチ市場に行き、路線バスで太宗台、西面で買い物し、その後は、小さなプンオパンを食べただけだったので、マンドゥもキンパプも舌に染み入りました。
チャガルチ市場のアジュマ、路線バスの運転手さん、夕食をアドバイスしてくれたホテルの女性、屋台のアジュマ、みんな親切だったとしみじみ思いました。
釜山三日目は、日本人のおばちゃん二人だけだったこともあって、一番濃い一日になったのでした。
次回、第5話(最終回)、「農協スーパーで爆買い&税関職員に呆れられた」につづく
第5話(最終回)農協スーパーで爆買い&税関職員に呆れられた
前回までのあらすじ:
40代になったばかりの私は、同僚と春の釜山へ。コピーを買い、韓国人の友人とカラオケを堪能。チャガルチ市場の朝食、太宗台散策、西面で遊びすぎて、夕食は屋台のテイクアウトだった。
▶農協スーパーで、がぜん元気に
楽しかった釜山滞在はあっという間に過ぎ、いよいよ帰国日に。飛行機は午後便なので、朝食をすませると、チャガルチ市場近くの農協スーパーにお土産を買いにいくことにしました。
農協スーパー(農協ハナロマート:チャガルチ店)は、生鮮食品や日用品、加工食品などが手頃な価格で手に入る庶民的なスーパーとして人気。
観光客用の土産物屋のお土産は、高いばかりで、土産物ならぬ「イヤゲモノ(もらっても嬉しくない土産物のこと)」が多い。農協スーパーなら、韓国ならではのお土産がお手頃価格で手に入るのです。
ロッテ百貨店やコピーの店では大人しかった私が、がぜん元気になり、目がランランでした。同僚も刺激されて、二人の爆買いが始まりました。
スーパーのカートにカゴを乗せると、まずはインスタント麺コーナーへ。辛ラーメンやノグリラーメンといったインスタント麺、カップ麺。
本場のテンジャン(味噌)やコチュジャン、香り高い搾りたてのごま油などの調味料。
ゆず茶・ナツメ茶・生姜茶、韓国の自動販売機でさんざん飲んだ300ウォン(当時30円くらいだった)のインスタントコーヒーと同じ味の袋入りインスタントコーヒー(粉末ミルク・砂糖入)、コーンティのティーバッグなどの飲み物類。
そして、日本では見かけない韓国のスナック菓子なども買いました。
チョコサルパイ(ピーナッツクリームをお餅で包んだものをチョコでコーティングしたお菓子)を、私も同僚も気に入り、お土産用に購入。
農協スーパーから、それぞれ特大のレジ袋2つを持ってホテルに戻ったのです。
▶スーツケース、パンパン!そして手荷物追加
前日、西面で買ったケラチンシャンプーとコンディショナー(各500ml)やコスメ類もあり、スーツケースはパンパンに!
入り切らないので、私も同僚も
「こんなこともあろうか!」
と用意した旅行用の手提げバックを取り出して、戦利品を詰め込みました。
ところが、それでも入り切らず、最終手段として、旅行中に背負っていたデイバッグにも残りの品をギュウギュウに詰め込んだのです。
私たちは、スーツケース、手提げの旅行用バックを持ち、デイバッグを背負って、3日間お世話になったホテルを後にしました。
南浦洞からエアポートリムジンバスに乗り込み、金海国際空港へと向かったのです。
▶機内食を食べ終わるとすぐ直陸!あっけないフライト
大韓航空機に搭乗し、大量の手荷物を頭上の棚(オーバーヘッドコンパートメント)に押し込んでようやく着席。
離陸したかと思うと、客室乗務員が書類を配り始めました。
入国カードや税関申告書を記入していると、すぐに軽食のサービスが開始。慌ただしく軽食を食べて、食後のコーヒーを飲み終えると、すぐにトレイ回収でした。
トレイ回収がすむとすぐ、着陸のアナウンスが流れたました。
「早すぎる~~!」金海国際空港から関西国際空港までのフライト時間は、わずか約1時間29分。あまりの短さに、拍子抜けしてしまうほどでした。
▶運び屋かと思われた税関検査
大韓航空機を降りて、ターミナルビル内へ移動。
まず、入国審査です。パスポートを提示し、入国審査官による確認を受け、スタンプが押されて無事に通過しました。
次は、手荷物受取(バゲージクレーム)です。電光掲示板で搭乗便の便名を確認して、指定されたターンテーブルで預けたスーツケースを受け取りました。
さて、次が税関検査で、税関申告書を提出。以前、団体で旅行した時は、素通り状態だったのですが……。
当時、私は二年間に四回も行っていました。しかも、すべて個人旅行だったのです。
そのためだったのでしょうか、税関職員から「スーツケースを開けて下さい」と指示されたのです。
一瞬、「もしかして、コピー品の運び屋とでも疑われている!?」と心臓がドキドキ音を立てて鼓動し、あたりに聞こえそうでした。
スーツケースは、パンパンに膨れていて、ファスナーがなかなか動きません。焦るとますます開かないのです。
「一回開けたら再度入れられるだろうか……」と、思いながら、なんとかスーツケースを開けると、出てきたのは……。
大量のインスタントラーメン類、味噌やコチュジャンなどの調味料、山のようなスナック菓子、そしてシャンプーやコンディショナー、韓国コスメの数々。
「コピー品」ではなく、庶民的な日用品や食料品がぎっしり詰まったスーツケースに、税関職員が「けっこうです」と言いながら、思わず苦笑していたように感じました。
しかし、手荷物を開けるように言われたのが私で、心底良かったと思いました。同僚は釜山の国際市場で大量のコピー品を買い込んでいたからです。
もし彼女が疑われていたら……想像するだけでゾッとしました。
やれやれと関空を後にし、私たちは「関空特急はるか」で京都へ。
▶京都タワーに「帰ってきた~!」
日本についたら、釜山ではずっと「少女モード」で慎ましやかで大人しかった同僚は、すっかり女番長の風格を取り戻しました。
キリンビールを飲みながら、同僚がしみじみ言いました。
「なあ、クムさん。私は今までに何回も韓国に行ったことがあるけれど、いつも焼き肉、買い物、エステやった。こんなに濃い韓国旅行は初めてやったわ。でも、ものすご楽しかった。ありがとう。韓国の友だちにもお礼を言っといてな」と。
私の趣味に同僚を引っ張り回しただけかと思っていたので、彼女の心からのことばがとても嬉しかった。
京都駅に到着し、見慣れた京都タワーが視界に入ると、私はしみじみと「帰ってきた~!」と感じました。
「奥さん、コピーありますよ」という驚きから始まった釜山旅行は、税関検査での大爆笑という、記憶に残るオチで幕を閉じたのでした。
第5話:(最終回)「農協スーパーで爆買い&税関職員に呆れられた」
【韓国釜山旅行記】爆笑40代女子の釜山二人旅(全5話)終わり

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