【百人一首】破る罪と誓わない罪~恋の歌「右近」~

     

百人一首に「忘らるる身をば思わず誓いてし 人のいのちの惜しくもあるかな」と言う右近の歌があります。「あなたを忘れない」という恋の誓いを破った相手の身を案じた歌か?それとも「忘れられる身を思わず誓った」という歌か?右近の歌を通して、恋の誓いについて考えます。かるた遊びとはまた違った百人一首の魅力を感じたいと思います。

 

<右近の歌の一般的解釈>

子どもの頃、お正月になると家族や親戚が集まって百人一首をよくしました。私にもお気に入りの札がありました。お気に入りの札を他の人に取られるととっても悲しくて悔しかったものです。

   

少し大人になって、歌の意味がちょっとは分かるようになり、恋の歌に興味を持ったことを覚えています。その頃、私のお気に入りの百人一首本は、詩人吉原幸子さんが百人一首の歌を詩で現代語訳した『吉原幸子百人一首』でした。解釈が興味深い歌があります。右近の歌です。

 

     

   

「忘らるる身をば思わず誓いてし 

人のいのちの惜しくもあるかな」

 

この歌は一般的に以下のように解釈されています。

 

「忘れ去られる私の身は何とも思わない。けれど、いつまでも愛すると神に誓ったあの人に、(神罰が下って)命を落とすことになるのが惜しまれてならないのです」(「ちょっと差がつく百人一首講座」より)

 

<詩人吉原幸子さんの解釈>

吉原幸子さんは、「フラれた女が自分の身を思わず、相手の命の心配をするなんてマユツバだ」と解釈されて、次の詩のように現代語訳されています。

    

いつかはこんなふうに 捨て去られ  

忘れ去られるわたしだったのに 

そんなことは 考えもせず

(いいえ 考えても かたく目をつぶり) 

行く末までもと 誓い合ったのでした 

   

わたしは誓いを破りはしなかったけれども 

ともに誓われたあなた 

決して心を変えないと 

いのちにかけて約束なさった 

そのおいのちが 

いまは気づかわしいのです 

  

あれほどの誓いにそむけば 

神はあなたに 

いちばん重い罰(ばち)を 

お当てになるかもしれませんもの

 

   

私は、国文法的・一般的な解釈よりも、詩人吉原幸子さんの詩による現代語訳が心情に迫るように感じました。

    

<さて右近は?>

さて、右近は

 

「忘れられる自分のことなどどうでもいいのです、命をかけた誓いを破ったあなたのお命が惜しまれるのです」

 

 

と言う思いで歌ったのでしょうか?

 

それとも、

 

「いつかは忘れられる私だったのに、そんなことは考えもせずに行く末を誓った。その誓いを破ったあなたの命が惜しまれるのです」

 

と言う思いを歌いたかったのでしょうか?

 

あなたなら行く末を誓った人が、心変わりして去った時、相手に送りたい歌はどちらでしょうか?

 

<破る罪と誓わない罪>

吉原幸子さんは、「誓いと言うものは危険である」とも述べられています。そして「誓わない決意」をされたそうです。その文章がとても切ないのです。

 

「破る罪と誓わない罪と 

どっちが重いのだろう 

明日を押しかえして誓うことのむなしさ 

今日を誓わないことの痛さ・・・」

 

   

 

確かに誓うことは罪ですね。でも、明日を押し返しても、誓いたい激しい熱情に囚われたい気もします。またどんなに胸が痛くとも、熱情を抑えて誓わないことが愛であることもあるように思います。

 

あなたはどう思われますか?

 

今日はかるた遊びとはまた違った百人一首の魅力を感じさせる『吉原幸子百人一首』から、恋の歌を一首ご紹介しました。

 

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