負の経験を克服した本当の優しさ~三浦綾子『道ありき』~

✿優しいと言われることにためらいが✿

私は「優しい」と言われることがあります。そんな風に言って頂くと嬉しいのですが、「ほんまは違うんやけど…」とためらいを感じた時期があったのも事実です。

 

三浦綾子さんの「道ありき」を再読した時、三浦さんが小学校の教員を辞め、肺結核の治療の為に、療養所で生活をしている描写を読みました。ドキリとする箇所があったのです。

 

「皮肉なことに、投げやりな生き方になればなるほど、私の周囲に、男や女が沢山集まるようになった。わたしは、二十七歳になっていたから、適当に人をあしらうことも知っていた。いや、それは二十七歳になっていたからではなく、自分を大事にしないと同様に、人を大事にすることを知らなかったから、いい加減に人あしらいができたのだろう」(『道ありき』より)

 

まさしく私は、これだったのです。夫に死なれ、教員を辞め、双極性障害に悩み、人生を投げていました。全く自分を大事にしなかったし、正直まわりのこともどうでもよいと思っていました。どうでもいいから、誰に対しても人当たりが良かったのです。その人当たりの良さが、優しいと勘違いされました。

 

✿人との距離のとり方がわからない✿

その後、三浦さんは信仰に出会い、数々の病と闘いながら、大作家になられ活躍されました。私もヨガに出会い、そしてインナーチャイルドカードセラピーに出会いました。私は心身ともに健康を取り戻し、荒んでいた生活も改善されたのでした。

 

でも、私は人との距離の取り方や、人との接し方に悩むことがありました。もう、昔のように虚無的で、「自分も人もどうでもいい」と言う態度で人に接していたわけではないのですが、実は人と接するのが苦手だと感じていたのです。妙に人に心を許さないところがあったり、一度親しくなると、今度は依存状態になってしまったり。

 

✿もっと自分を大切に✿

上記の三浦綾子さんの文章にドキリとしたのは、私の中に「どうせ私なんか」「べつにどうでもいいわ」等、自分をいい加減にあしらう傾向が残っていたからでしょう。

 

自分をもっと尊重し、自分の軸をしっかり持っていたら、他人の軸に影響されることも少ないでしょう。自分の軸がグラグラ揺れるから、人との距離も取りにくかったのでしょう。自分をいい加減にあしらうのは止め、自分をもっと大切にしようと心から思ったのです。

自分を大切にできなかったら、「心の制限を外す作家」も「心を解き放つインナーチャイルドカードセラピスト」もありえないと思います。

 

✿負の経験を克服した本当の優しさ✿

でも、虚無感に悩んだことも、人との関係で悩んだことも無駄ではありません。三浦綾子さんが最初から聖人君子のように偉い作家さんだったら、私はこれほど三浦綾子さんに惹かれはしなかったでしょう。三浦綾子さんが、一度は投げやりになり、自分も人もどうでもいい荒んだ生活に陥り、虚無感に悩み、そこから立ち直ったからこそ、その姿に惹きつけられるのです。

 

『道ありき』を再読して、三浦綾子さんのように虚無的になり、悩み、それを克服した本当の優しさを持つ強い人になりたいと心から思ったのでした。

 

それに、荒んだ生活を経験したからこそ、そこから立ち直るすべもわかります。虚無の闇の深さを知っているからこそ、虚無の闇に悩む人の心に寄り添うことができるのです。かつての私のような、今苦しい人の役にたつことができるのです。

 

「負の経験を克服した本当に優しく強い人になりたい」、ありきたりですが、それが『道ありき』を再読した私の感想です。

 

 

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