教師だった頃、
勤めていた学校に近い球場で
阪神戦が行われることになった。
熱狂的な阪神ファンの生徒数人が
授業を早退して観戦に行った。
生徒たちは保護者に話して、
生徒手帳に早退願いを書いてもらい、
担任に提出して観戦に行った。
その日の授業が終わって、
職員室に帰ると、
数人の同僚がカンカンになって
早退した生徒や許可した保護者に
腹を立てていた。
「ナメとる！
学校や授業をなんやと思ってるねん！」
と怒り心頭だったのを覚えている。
✿学校ってそんなに休んだらあかんもんなん？✿
「阪神戦が毎日近くの球場で
あるわけでもないし、
阪神ファンだったら絶対に行きたいやろう。
そんなに怒ることでもないのに」
と思ったことを覚えている。
家族でスキーに行くので休んだ生徒や
ピアノのコンクールに出場するのに
学校を休んだ生徒に対しても、
職員室には微妙な雰囲気があった。
その時は、「どうなんやろう？」
と微妙な気分だったが、
今は「学校ってそんなに休んだら
あかんもんなん？」と思っている。
親の許可をもらって早退して
阪神戦を見に行く、
保護者の休暇が学校の休暇と合わなくて
学校を休んでスキーに行く、
ピアノに打ち込んでいる生徒が
学校を休んでコンクールに出場する。
「『絶対に休むな！』と言う権利が
学校にあるの？」と思う。
「応援している大好きな球団の
試合を見るチャンス、
家族でスキーを楽しむチャンス、
コンクールに出場するチャンスを
諦めさせるほどの授業をしてるんか？」
「1回2回授業を休んだら
ついて来れなくなるの？」
と甚だ疑問に思う。
教師を辞めてもう10年近く経つので、
今の現場の状況は違うかも知れない。
でも「学校は無遅刻無欠席で行くべきもの」
という意識が今もあるように思う。
✿学校は無遅刻無欠席で行くべきもの✿
「学校は無遅刻無欠席で行くべきもの」
という意識を私は空気を吸うように
無意識に持っていた。
でも、それは本当なのだろうか？
絶対なのだろうか？
私が小学生だった時、
いじめられて学校に行きたくなかった。
毎日毎日、無視され、嫌がらせをされ、
いじめられるために学校に行った。
昔だったので学校も親も、
「学校は無遅刻無欠席で行くべきもの」
という考えだったので泣く泣く毎日登校した。
本当につらい毎日だった。
学校嫌いなのになぜか教員になった頃、
不登校に悩む生徒にたくさん出会った。
少しずつ、保健室や相談室に
登校することが認められるようになった。
フリースクール等への出席が
学校の出席扱いになりつつあった。
自分がいじめられてつらかった頃、
保健室、相談室登校が認められたり、
フリースクールがあって、
そこへの登校が認められたら
どんなに救われただろうと思う。
私が小学生だった頃とは
状況は違っていると思うけれど、
「学校は無遅刻無欠席で行くべきもの」
という意識は今も根強いように思う。
✿もっと柔軟になれへんの？✿
この「無遅刻無欠席思考」は、
学校だけでなく社会全体でも根強いと思う。
地震でも台風でも大雪でも
「出勤しなければならない」
という無言の圧力はないだろうか？
毎日、勉強が楽しくて、
友だちと過ごすのが楽しくて、
学校が大好きで、
健康に過ごして一日も休まなかったならば、
それはとても良いことだと思う。
評価されるべきことだと思う。
でも何もかも一律に
「無遅刻無欠席で出席すべきもの」
という思考は人を苦しめるもの以外の
何ものでもないと思う。
毎日自然に登校できる生徒もいれば、
何らかの理由で登校するのが
大変な生徒もいる。
個々の状況に寄り添うことが
大事ではないだろうか？
多くの学校の学校目標に
「一人ひとりを大切にする」
という目標が掲げられている。
社会でも同じだと思う。
個々の状況に柔軟に寄り添うことが、
「一人ひとりを大切にすること」
ではないだろうか？
学校に無遅刻無欠席で
行かなくても良いと私は思う。
そんなお題目よりも、
個々人の事情に柔軟に
寄り添うことのほうがずっと大事だと思う。
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