【ああ、京都人】幕末に生きた京都人の知恵に学ぶ~激動のAI時代に生きるヒント

私、村川久夢は京都生まれの京都育ち。

村川久夢

 

私の父方の祖父母は、ともに京都で明治24年(1891年)に生まれました。特に祖母は、京都以外の場所で暮らしたことがない京女でした。私はそんな祖父母の昔話を聞いて育ちました。

祖父(36歳)

 

祖母(34歳)

 

本稿では、激動の幕末を生き抜いた京都庶民の『生き抜く知恵』が、AI時代を迎えた私たち現代人にも通じる力として、いかに重要であるかをお伝えします。

 

よく考えてみると、祖母は明治24年(1891年)生まれ。明治維新から24年しか経っていないのです。祖母の母(私の曾祖母)は文久2年生まれ、なんと幕末なんです!

祖母の昔話には、祖母が曾祖母から聞いた話もあり、刀を差したお侍さんの話があったことをかすかに覚えています。

そんな環境で育ったので、私は幕末の京都の暮らしを、祖母からの口伝で知ることができたのでした。

 

私は、「幕末」と聞くと新選組を連想します。

昭和36年(1961年)生まれの私は、栗塚旭さんが土方歳三を演じた昭和45年のテレビドラマ『燃えよ剣』(1970年)が大ヒットして、新選組ブームが起こったからでしょうか?

私の曾祖父母は、リアル新選組を知っている世代です。私もブームに影響されて、祖父母に新選組のことを尋ねてみました。

祖母は曾祖母から「乱暴狼藉を働くので、京都の庶民にとって、新選組ほど恐ろしいものはなかった」と聞かされたと言うので、がっかりしたことを覚えています。

父は自分のエッセイ集『はるかなり「ふみのみち」』に以下のように書いています。

 

父のエッセイ集

 


【西本願寺に一時、新選組の屯所が置かれ、市中見回りに行き交う隊員の姿は、一般町民にとっては恐ろしい存在であった。

切り捨て御免の時代に、東本願寺の別邸である枳殻邸(渉成園)の南の通りで、子供たちの遊び道具(かねの輪転がし)のかねの輪が、二人連れの侍の一人の足に絡まり転倒した。怒った侍は大声で、

「下郎!そこへなおれっ!」と叫んだ。子供は顔色を失い、その場に立ちすくみ震えていた。

それを見ていた朋輩の侍は、「貴公は倒れた、若し、これが敵の謀略であったら、貴公は既に命のないところだ。あんな子河童の仕草、赦されよ。」と取り成しがあり、「こらっ、子河童、早く立ち去れっ!」の一言で、その場から一目散に逃げ帰り命拾いをしたというのである。

これは父方の古老が子供時代に経験した話で、父が聞き私にも話をしてくれたのであった。この内容は印象深く残っている。】

 

幕末の京都人は、侍や新選組には「関わりたくない」というのが本音だったのでしょう。

司馬遼太郎の『燃えよ剣』に土方歳三が長州の浪人に尾行され、仏光寺門前の「芳駕籠」と言う駕籠屋に身を潜める場面がありました。

 

司馬遼太郎『燃えよ剣』

 

新選組副長に恐れをなす駕籠屋夫婦に、土方は駕籠に水を入れた大樽を乗せて、土方が行く方向と反対方向に行かせてほしいと頼むのでした。

新選組と関わりたくないけれど、断るのもまた恐ろしく、駕籠屋は土方の指示通りに水を入れた大樽を乗せて駕籠を行かせるのです。

土方は難を逃れるのですが、駕籠の中身が水を入れた樽だと気づいた長州の浪人は、今度は「芳駕籠」に難癖をつけ、ひと騒動になる場面がありました。

『燃えよ剣』のこのシーンはフィクションですが、この時代が京都の庶民にとっては、いかに生きにくい時代だったかを感じさせます。

 

また『燃えよ剣』には、土方歳三が会津藩本陣から屯所不動堂村への帰途、刺客に襲われる場面がありました。

屯所不動堂村は七条油小路や現在リーガロイヤルホテルがある堀川八条付近にあったと言われています。

重症を負った土方歳三が逃げ込んだのは「西洞院」あたりなのです。西洞院のどのあたりかは明記されていませんが、西本願寺に一時屯所があったことを考えると、私の家のごく近所です。

 

新選組が一時屯所にしていた西本願寺「太鼓楼」

 

「今が幕末だったら」と思うと怖くなりました。近所で新選組の隊士や浪人が、刀を振り回して、切り合いをしているのです!

それは、どんなに恐ろしいことだったでしょう。下手に関わったら、報復を受けたり、罪を問われたりすることもあったでしょう。

 

徳川慶喜が大政奉還を行い、戊辰戦争が始まります。幕府軍は、初戦の鳥羽伏見の戦いで敗北します。

「鳥羽伏見の戦い」のことは、曾祖母が覚えていて、曾祖母から祖母に、そして孫である父に「落ち武者狩り」が語り伝えられたのです。

父はエッセイ集に下記のように記しています。


【祖母は六、七歳位の頃鳥羽伏見の戦いの折り、落ち武者(幕府方)が逃げ込んだという事で、官軍方が大砲(おおづつ)を祖母等が住んでいる集落に向けて、「一発ぶちかます」という隊長の命令に、町の長役はびっくり仰天、まかり出た。

「そのような者は一人もおりませぬ」を繰り返し深々と地面に額をすりつけ、

「万一、落ち武者が現れました時は、手前どもの方から必ず、必ずお届けいたします」

という言葉と米つきバッタの土下座で、官軍の隊長は漸くにして赤鞘から抜き払った刀を鞘に納め、部隊を引き上げさせたという。】 

    

  

鳥羽伏見の戦いの頃の大砲

 

もとは薩摩・長州からなる官軍、討伐する側だった幕府軍は、いまや「落ち武者」となって追われる身。「勝てば官軍」と言うことばがしきりに思い出されました。

 

『燃えよ剣』では、「鳥羽伏見の戦い」に敗れ、新選組に敗色が濃くなった時、土方歳三が近藤勇にこう語ります。

「時勢などは問題ではない。勝敗も論外である。男は、自分が考えている美しさのために殉ずべきだ」と。土方歳三は非常に魅力的に描かれています。

しかし、大義名分や美学と関係なくこの時代に生きた京都庶民が、この激動の時代を生き抜くのは、さぞや大変だったでしょう。

「人は人、自分は自分」「裏表があって意地が悪い」「はっきりものを言わない」等々の京都人気質は、戦や政変絶え間ない王城の地で逞しく生き抜くための知恵なのです。

 

祖父母は半世紀ほど前に、エッセイを書いた父も昨年亡くなりました。曾祖母から聞いた話をよくしてくれた叔母も数年前に亡くなりました。

そんな昔のことは、忘れ去られるのが普通なのかもしれませんが、私はかすかに覚えている祖母の昔話、京都の生活、京都の決まりごと、何よりも「京都庶民の生き抜く知恵」を書き残したいのです。

幕末に活躍した著名な人物の記録は残っていても、戦乱や政争が絶え間ない幕末の京都で生きた名もない庶民の暮らしは、歴史の中に埋もれてしまうからです。

私は、一人の京都人の目を通して見た京都庶民の生活や文化、そして京都人の生き抜く知恵について、拙書『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』に書きました。

 

村川久夢著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』

 

どんなに時代が変化しても、京都の庶民は「自分は自分」と時代や人に流されず、逞しく生き抜く「芯」を持って生きました。

   

京都人のイメージ

 

この気質は、激動のAI時代を生き抜く現代人にこそ求められる、「なぜ?」と問い、自ら答えを見つけ出す「自分で考える力」に通じるのではないでしょうか。

(【ああ、京都人】京都庶民の幕末を生きる知恵~激動のAI時代に必要な力:村川久夢)

 

 

 

 

村川久夢著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』

   

村川久夢は京都生まれの京都育ち。一人の京都人の目を通して、京都や京都人について、拙書『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』に書きました。

戦争や政争が絶えなかった京都で、生き抜いて来た京都人の知恵を、また、観光化されていない日常の京都や地元の人に愛されている京都の穴場、食べ物やお店についても新著に書きました。     

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