🌿小説紹介🌿
この物語の主人公は「爪」なんです。ギタリストのオジサンとずっと旅をしています。目立たないから、みんな知らないのですが、爪くんはオジサンにとってとても大切な相棒です。爪くんがオジサンとのギターの旅を語ります。
【掌編小説】僕は爪~目立たないところでいい音を出す
ライブが終わった。僕は爪。目立たないけれど、音楽を影から支える小さな相棒だ。
僕はオジサンとずっと一緒に旅を続けて来た。だから、オジサンのライブの後はいつも、みんなが拍手を止めないことを知っているんだ。
今日も拍手が鳴り止まず、ギタリストのオジサンは、ちょっとはにかんだ表情でお辞儀をして、アンコール曲を演奏したよ。オジサンは街の小さなバーや個人のお家でギターを演奏しているんだ。
オジサンのライブにやって来る人は、仕事帰りのサラリーマン、家事を早めに片付けて駆けつけたオカアサン、同僚に言い訳しながら仕事を定時で抜けてきたOLのオネエサン、みんなオジサンのギター演奏を聴くのを楽しみにしているんだ。
ライブが始まると、オジサンが僕を使って、クリアで輪郭のある音を出す。指だけで弾くのと、僕を使って弾くのでは音の出方が変わるんだ。
僕を使うと、弦がしっかりと弾かれるから、音量が大きくなり、はっきりとした音が出る。
僕の形や硬さによって音質も変わり、僕を整えることで澄んだ音や柔らかい音が調整できるんだ。これで、演奏に強弱が出やすくなって、感情豊かな演奏ができるんだよ。
みんなオジサンが奏でた音を一音も聞き逃さないように、演奏に聞き入っている。曲の最後の一音が終わった後も、音は壁や床や天井に反射して響くんだ。
みんなその響きを「いつまでも聞いていたい」という顔をして、息をひそめている。響きが止まると、みんなが一斉にフーと息をする。不思議な一体感が生まれるんだ。
オジサンは、みんなの息遣いが聞こえ、壁や床に反射した響きが聞こえることが、小さな会場で演奏する醍醐味だって、いつも言っているよ。
オジサンは曲の間に、面白いお話をしてみんなを笑わせるんだ。オジサンの話に大笑いしていた人たちには、演奏が進むと、不思議なことが起こるんだ。
サラリーマンのオジサンは、目を閉じてうっとりとギターの音色に酔いしれている。曲に乗って、オジサンの体が揺れるんだ。本当に気持ちよさそうに。
OLのオネエサンの大きな目には、いつの間にか涙が湧き上がって、キラキラ光っているよ。涙はオネエサンの大きな目から、輝きながら頬にこぼれるんだ。硬かったオネエサンの表情は柔らかくなって、今はイキイキしている。
疲れた表情だったオカアサンは、ハンカチを握りしめ、演奏に合わせて、楽しそうに首を振っているんだ。今にも歌い出しそうに。他にも涙を浮かべる人がたくさんいるよ。
でも、その人はちっとも悲しそうじゃないんだ。ライブ会場に入って来た時は、どこか浮かない顔をしていた人たちは、涙を流しながら、目を輝かせて、明るい顔になっていくんだ。その人たちの心を押し込めていた蓋が、ポーンと外れるかのように。
そんな時、僕はとっても誇らしい気持ちになるよ。オジサンの澄んだギターの音色が、聞く人の心に溜まった重苦しいものを、洗い流すからなんだ。温かいギターの音色が、固く縮こまっていた人の心を解き放つんだ。
それに、目立たないけれど、オジサンの演奏にとって、僕はなくてはならない存在なんだ。
オジサンは、僕を使って、音の強弱やスピード、音質をコントロールするんだよ。でも、僕は、オジサンにとって単なる「道具」ではない。オジサンの音楽表現を大きく左右する「パートナー」なんだ。
僕は簡単に割れたり欠けたりして、オジサンのギターの音色を損なわないように、身体を頑丈に鍛えているんだ。
それに、オジサンは僕のことをとても大切に思ってくれているんだよ。僕が乾燥して割れたりしないように、保湿クリームを塗ってケアして、割れにくい形に切り揃えてくれる。
でもね、オジサンのギターの音色に聞き惚れる人はたくさんいても、僕がこんなに頑張っていることを知ってる人はあまりいないんだ。
でもいいんだ、僕がいなければオジサンの深いギターの音色が、出ないことを、誰よりもオジサンがわかってくれている。
僕は目立たないところでいい音を出す。それでいいんだ。僕はオジサンがギター演奏をする相棒になって、オジサンが奏でたいと思う深い音を出せたらうれしい。
オジサンのギターの音色は、疲れた人たちの心を癒し、みんなを喜ばせて元気にするんだ。僕はそんな姿をみると、たまらなくうれしくて、誇らしくなるよ。
僕はオジサンの相棒として、これからも旅をつづけるよ。いろんなところで、オジサンの深いギターの音色が、しんどい人の心を元気にして、重苦しいものを洗い流す相棒として頑張るよ。
僕は爪、目立たないところでいい音を出す。僕はこれからもギターで人の心を癒すオジサンのなくてはならない相棒なんだ。それでいいんだ。
(完)
(【掌編小説】僕は爪~目立たないところでいい音を出す:村川久夢)

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