短編小説『自由を運ぶ愛のたまご』

 🌿今日のブログは短編小説です🌿

タイトルは『✨️自由を運ぶ愛のたまご✨️』

この作品は、気がつくとつい人のご機嫌をとってしまうことに悩む若い女性が、過去の自分を見つめて、心の自由を取り戻していく物語です。

ブログを読んでくださる皆さんの中にも、もしかすると 「誰かの顔色をうかがってばかりいた過去の自分」 に思い当たる方がいらっしゃるかもしれませんね。

そんなあなたに「ああ! そうだったのか!」と気づいてもらえればうれしいです。あなたの性格や考え方がわるいのではありませんよ。

それでは、どうぞお読みください。

 

「ねえ、優花ってなんなの? 誰にでもいい顔して」

「そうそう、八方美人よね」

「自分のこと優しいって思っていそうだよね」

入社一年目の会社の給湯室から同僚数人の声が聞こえてきた。オシャレなはずのオフィスが、急に色あせて見えてくる。

――同僚にはいつも気を遣っているのに……。

マグカップを洗いに来た優花は、固まったように立ち止まってしまった。そして、自分が取り返しのつかない失敗をしたかのようにひどく落ち込んだ。

――私が何をしたっていうの? 何がそんなに悪かったの?!

美優は自分の存在を否定されたように感じた。大学を卒業し、入社して一年経った。少しずつ仕事は覚えられたけれど、どうしても同僚とうまくいかず仲よくなれない。

――どうしたらいいんだろう?

優花は、ぎゅっと唇をかみしめた。アーモンド型の目にはうっすら涙がにじみ、小柄な体がいっそう小さく見えた。

優花は、疎外感を覚えながら仕事を終えて、帰途についた。暑さが少しはやわらいだ夏の宵、風は快いが、心は暗い。

駅ビルに入ると、『癒やしフェスタ』という看板が目についた。エントランスホールに小さなブースがいくつも並んでいる。アロマテラピー、カラーセラピー、タロットリーディング、パワーストーン等のブースがあって、いい香りが漂っている。

「自分を見つめ、心を癒す、フェアリーテイルタロット」という文字が優花の目に飛び込んだ。

ちょっと怖い絵があるタロットカードは、優花も見たことがある。けれど、ブースに置かれたフェアリーテイルタロットには、赤ずきんやアラジンと魔法のランプと思われる可愛い絵が色鮮に描かれているのだ。

優花がカードを見つめていると、優しそうな女性のセラピストさんと目があった。セラピストさんは、白髪がまじる髪をひとつに束ねて、落ち着いた小花のワンピースを着ている。

「すいません、フェアリーテイルタロットってどんなことするのですか? 占いですか?」

「いえ、占いではなく、カードを通して、自分を見つめるんです」

「自分の嫌なところがいっぱいでてくるようで、なんだか怖いですよね……」

「自分が望むことがわかるとスッキリできて、気持ちが楽になると皆さんおっしゃいますよ」

セラピストさんは、そう言って微笑んだ。家にこのまま帰るのも嫌だったし、気分転換になるなら……と思って受けてみようかと気持ちがフェアリーテイルタロットに傾いた。

 

優花はフェアリーテイルタロットのセラピーを受けることにした。

セラピストさんは慣れた手つきでカードをシャッフルして、扇型にカードを並べ

「カードを一枚引いてください」

と言った。悪いカードを引くのではないかと優花はどきどきしたが、思い切ってカードに手を伸ばす。

優花が引いたカードは、ちょっと不思議なカードだった。かごをもったおばあさんが、大きなガチョウに乗っているのだ。ガチョウとおばあさんは金色のたまごのようなもので包まれている。

その金色のたまごは、地球や月や星が輝く空間を飛んでいるのだ。青い宇宙や輝く星が本当に綺麗だった。

「『マザーグース』ですね」

「一枚ずつに名前があるんですか?」

「ええ、お嬢さんはこのカードを見て、どんなことを感じましたか?」

「ええっ……」

「パッと心に浮かんだことを私に教えてくれますか?」

優花はもう一度カードを眺めた。カードに描かれたおばあさんが、優花に優しく微笑んでいるような気がする。おばあさんのオレンジ色のとんがり帽子もユニークだし、手に持っているカゴのカラフルなたまごも綺麗だ。

「私、このカードを見たら、優しかった田舎のおばあちゃんを思い出しました」

「田舎のおばあさまですか」

「はい、私が子どもだった頃、私の一番の楽しみは、夏休みに田舎のおばあちゃんの家に泊りがけで遊びに行くことだったんです」

 

優花の心に幼い日のことが蘇った。優しかった母方の祖母、そして、頑固で厳しかった父方の祖母の顔も……。

「私が子どもだった頃、私たち一家は父方の祖母と同居していました」

「父方のおばあさまは、どんなかただったんですか?」

「父方の祖母は……」

そこまで言って、優花は口ごもる。すう、と深呼吸をすると、一気に心の中にたまっていたものが、出ていった。

「祖母は名家の出身であるというプライドと一族のしきたりがすべてだったんです」

「どんな時におばあさまのプライドを感じられましたか?」

「いつも……。祖母はプライドとしきたりが何より大切で、私は何一つ自由にさせてもらえなかったんです」

すっかり忘れていた昔の苦い思い出が、生々しく思い出された。

「『鳥は翼があるから、自由に飛べて良いな』っていつも感じてました。私には自由のかけらすらなかったんです」

「たとえばどんなときに自由がないと感じられたんですか?」

「朝ごはんひとつとってもそうでした。『朝から殺生してはいけない』って一族のしきたりがあるんです。祖母は、たまごやハムやソーセージを食べることを家族に禁じたんです」

優花の感情が高ぶった。ダムの堰が切れたように、気がつくと夢中で話していた。

「毎朝の精進は、押しつけの象徴でした」

「窮屈だったでしょうね」

「ええ、すごく! だから、当時の私にとって、夏休みに田舎にあった母方の祖父母の家に行ける僅かな時間だけが、自由になれる時間だったんです」

 

優花は涙を必死にこらえ、もう一度、カードを眺めた。カードのおばあさんがカゴの中に持っているカラフルで綺麗なたまごが優花の目に入った。

「私、たまごが大好きなんですよ」

「たまごがお好きなんですね?」

「ええ、田舎のおばあちゃんは、それを知っていて、いつもたまごを沢山買っておいて、朝ごはんにたまごかけご飯を作ってくれたんです」

優花はカードの印象を話すように言われて戸惑ったのがウソのように、心に浮かんだことを夢中で話しつづけた。

「おばあちゃんは朝早くから知り合いの農家にたまごを買いに行ってくれたんです。その家の中庭で飼われているニワトリが朝生んだたまごを……」

「それは新鮮そのものですね!」

「おばあちゃんが、かまどで炊いてくれたご飯はピカピカ光っていい匂いがしました。生みたてのたまごは黄身がぷっくりと盛り上がって、綺麗な黄色だったんです。少しお醤油をたらして、ご飯にかけて食べると、本当に美味しかったのを今でもはっきり覚えています」

優花は懐かしいことを思い出し、優しい表情になった。

 

「カードのたまごから、おばあさまのたまごかけごはんを思い出されたのですね」

「今思うと、特別なものでも、高価なものでもありませんでした。でも、おばあちゃんがかまどで炊いてくれたご飯と早朝から買いに行ってくれた生みたてのたまご。おばあちゃんのたまごかけごはんは、最高のご馳走だったんです」

夢中で話す優花をセラピストが優しく見つめた。優花は不思議な安心感に包まれ、おばあちゃんがそばにいるような気持ちになった。

「おばあちゃんは、私が喜んで食べるのを笑顔で眺めていました。おばあちゃんは人の喜ぶ顔を見るのが大好きだったんです」

優花は田舎のおばあちゃんのそばにいると、心からのびのびできた。しきたりとも束縛とも無縁だったのだ。

 

その時、数人の若い女性が楽しそうに笑う声が聞こえた。

田舎のおばあちゃんの思い出を夢中で話していた優花は、その笑い声で不意に現実に引き戻されたのだった。

『癒やしフェスタ』が開かれている駅ビルのエントランスホールには、あちこちに観葉植物が置かれている。各ブースでセラピーを受ける人の姿も目に入った。

「セラピストさん、田舎のおばあちゃんは『マザーグース』のカードのおばあちゃんでもあり、鳥でもあるように思えます。でも、私がのびのびできたのは、田舎のおばあちゃんといる時だけでした……」

「田舎のおばあさまといる時だけだったんですか?」

「……。いつもはプライドが高くて頑固な父方の祖母の顔色ばかり見てビクビクしていました」

その時、何かがひらめいた。自分がなぜ必要以上に人に気に入られようとするのかがわかった気がしたのだ。頑固で厳しい父方の祖母に気に入られようと必死だった幼い自分が……。

「セラピストさん、私は八方美人だとか、誰にでもいい顔をするといって同僚に嫌われているのです……」

「フェアリーテイルタロットセラピーを受けて少しは気持ちが楽になりましたか?」

「ええ。よく考えると、どうしていつも人と上手くやれないのかを知りたかったのかもしれないです」

「人とうまくやれない理由はわかりましたか?」

「きっとおばあちゃんのご機嫌ばかり取っていたことが、私の生きグセになってしまっていたんですね……」

 

「ああ、そうだったのか!」と自分の性格がどこから生まれたかがわかると、優花はものすごくほっとした。

「私はもう子どもじゃないんです。私をしきたりで縛る人はいないんです」

優花は小さくなってビクビクしている幼い優花に

「もう大丈夫だよ」

と言ってあげ優しく抱きしめた。

「このカードには、『可能性のたまごがかえろうとしています。新しい生活が実現する時です』という意味があるのですよ。なにか思い浮かぶことはありますか?」

「可能性のたまご? 新しい生活?」

「フェアリーテイルタロットを見て、自分の気持ちを話して何か感じましたか?」

「私を束縛する人はいないのに、自分で自分の心を縛るのは止めようって思いました」

「そうでしたか! それはよかった!」

「これからは人のご機嫌を取るんじゃなくて、自分のご機嫌を取ってあげようって思います」

優花は、改めて「マザーグース」のカードを手に取った。

このカードのおばあさんのように、金色のたまごに乗って、自分の宇宙を自由に飛ぼうと思ったのだった。

「自由!」

幼い優花が与えられなかった自由を、今の優花が与えてあげようと思った。立ち上がり、両腕を広げると、思い切りお腹の底から息を吸い込んだ。

「私は自由なんだ!」と心の中で叫んだ。

(完)

 (短編小説『自由を運ぶ愛のたまご』:村川久夢)

 

 

 

 


 

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