こんにちは、村川久夢(むらかわくむ)です。

昨日からお届けしている短編小説『たのんまっせ~価値観がまったく違う夫婦の物語~』。今日はその中編、「その4〜その6」をお届けします。節約の女王・久美子と、ちょっとズボラなパチンコ好き夫・坂東の、笑えてちょっぴり切ない日常が続きます。
今日もクスッと笑って、夫婦っていいな…と感じてもらえたらうれしいです✨️
【短編小説】たのんまっせ~価値観がまったく違う夫婦の物語(第2回)~
(その4)
坂東はいたって無趣味な男だった。趣味と言えばパチンコとプロ野球観戦、他は誘われればゴルフに行く程度だった。
独身時代は仕事を終えて、真っ直ぐに家に帰るのが侘しく、毎日のようにパチンコをして家に帰っていた。
「久美子がいい顔をしないだろうな」
と思ったが、長い間の習慣は、そうそうすっぱり断ち切れるものではない。「仕事が終わったら、真っ直ぐ家に帰ろう帰ろう」と思うのだが帰り道、国道沿いにある行きつけのパチンコ屋を見ると入ってしまう。
「早く帰ろう、早く帰ろう」と心では思うのだが、「もう少し、もう少し」と未練たらしくパチンコをすると、すぐに時間が過ぎた。
「ただいま」
と恐る恐る久美子の顔を見た。夕食の準備を済ませてリビングでテレビを見ていた久美子は、「おかえり、遅かったね。」とだけ言ったが目が怒っていた。
「ちょっと遊んできた」と坂東が大きな身体を縮めながら言うと、久美子は黙って台所に入り夕食の準備を始めた。
翌日は、真っ直ぐに家に帰ったが、その次の日は、またパチンコに行ってしまった。そのまた次の日は、本当に仕事が忙しく残業で帰りが遅くなった。
残業がある日は、パチンコで遊んで帰る日とほぼ同じような帰宅時間になったが、パチンコで遅くなったか、残業で遅くなったか、久美子にはバレバレだった。
しばらくするとパチンコで遅く帰った日は、久美子は黙って夕食の準備をし、残業で遅くなった日は「おかえり~」と声をかけることに気がついた。
二人で食卓に向かっていても、坂東がパチンコをした日、久美子はほとんど話をしない。
おしゃべりな久美子が黙ってしまうと、口下手な坂東は何も話す事がなく、重い沈黙が続いてしまう。
「文句があるなら言えばいいのに」と坂東は内心思ったが、沈黙している久美子が恐ろしくて、新聞を見ながら早々と夕食を済ませてリビングに逃れた。
恐ろしい!!
まだこの頃、久美子の火炎放射のような口攻撃は経験していなかったが、この沈黙も恐ろしい。昔先輩が言っていたことばを思い出した。
「女の沈黙ほど怖いものはないぞ…」
(その5)
久美子は京都生まれの京都育ち、生粋の京女だ。
「京女」→「和服」→「おしとやか」と言う連想が成り立つのか、「奥さんはどこの人です?」と尋ねられ「はあ、京都ですわ。」と答えると、たいてい「京女ですか~よろしいな~」という返答が返ってくる。
坂東は「はあ」と曖昧に答えているが、内心「みんな何も知らんのやな~」とつくづく思う。
坂東夫婦が結婚して住居をかまえたのは、京都の中心部、いわゆる京町家が並ぶ古い地区だ。
観光で成り立っている都市なので、旅行者には人あたりが柔らかで「京都の人は優しい」という印象を与えるらしい。
しかし、実際に「住む」となると話は別で、京都人は閉鎖的でよそ者を嫌う傾向がある。坂東たちも転居の際には、挨拶の粗品を持って挨拶回りをした。
運悪く町内会の役員宅が留守であった。
坂東も久美子も朝早く出勤し、夜遅くに帰ってくる。つい挨拶回りをした日に留守だった家への挨拶を失念していた。
坂東が出勤しようとすると隣のばあさんが、「坂東さん、山田さんに挨拶行はった? 『引っ越して来ても挨拶ひとつない礼儀知らずや!』とか言うて、山田さんが文句言うてはりましたえ。」と声を掛けてきた。
挨拶に行けなかったのは坂東たちの落ち度であるが、勝手に礼儀知らず扱いされ坂東は不愉快だった。
夜、久美子にこのことを伝えると、「うっとしいな~!どこにでもいるねんそういう人!でも挨拶だけは行っとこか、『陰でごちゃごちゃ言うな』って文句言うたろかしら!」と久美子はさも不愉快そうに言った。
それでは今から行こうと言うことになって、坂東と久美子は町内会長宅に出かけた。呼び鈴を押すと、いかにも一癖ありそうなオッサンが出てきた。
坂東が挨拶しようとすると、久美子がさっきとは別人のように優しい声をだして、
「いや~会長さん、堪忍してくださいね。ご挨拶に来させてもろたことは来させてもろたんですけど、あいにくお留守でしたし、すぐに寄せてもらうのがほんまなんですけど、えらいご挨拶が遅なってすんません。堪忍してくださいね」
そして、坂東の手から粗品とかかれた挨拶の洗剤の箱を取ると、「これ、しょうもないもんですけど、お近づきの印に。ほんま堪忍してくださいね~」
と洗剤の箱をオッサンに渡した。オッサンも下手に出られると、出かかった小言も言いにくいのか、「ああ、そうでっか、いつもお留守ですさかい 。まあよろしいわ。またえらい気つこてもろて、まあよろしゅうに」とだけ言った。
あっけにとられて見ていた坂東も「よろしくお願いします」と 一言だけ挨拶をして帰った。
「久美子~お前よう言うね~!全然態度違うやんけ!」
「そんなん、口はただやもん、角立ててもしゃあないやん」
と久美子は涼しい顔で言った。そのあと、坂東の車の排気ガスが家に入って息苦しいと 苦情の手紙を入れてきた婆さんも、町内会の別の婆さんも、すっかり久美子の口に丸め込まれて何も言わなくなった。
京女の実態なんてこんなもんだ……。
(その6)
久美子は恐ろしい節約魔で缶々の貯金箱に500円玉貯金までしているくせに、案外、家計はどんぶり勘定で計算が苦手なことに坂東は気がついた。
お互いに給料をもらうと、それぞれ生活費を出し合い、共同名義になっている自宅のお互いの住宅ローンを支払う。
それぞれの名義で同額の定期積み立てをすると、給料の残りはそれぞれが管理することになっていた。
久美子は知らないが、坂東は独身時代、必要な生活費を除いて収入のほとんどをギャンブルに使っていた。パチンコ、麻雀、競馬、たいていのギャンブルは好きだった。
また贅沢好みで、洋服や靴もブランド物が多かった。
久美子との結婚が決まった時、貯金はほとんどなく、車のローン、パソコンのローンなど、まだいくつかローンが残っていた。
結婚して住宅ローンがそれに加わると小遣いにできる金額はわずかだった。
毎月の小遣いに当てている金はすぐに底をつき、総合口座に50万円の定期があるのを良いことに、口座から小遣いを引き出すようになった。
パチンコ代、タバコ代、車検、車の保険、出費が重なる時は重なるものだ、大学時代の友人との同窓会も迫っていた。
坂東は北陸の出身なので北陸の温泉宿で毎年泊りがけの同窓会に出かける。
「まあいいか~いいよな~」
と貯金をチビチビ引き出しているうちに、総合口座のマイナスの金額は恐ろしい金額になっていた。
そんな時だった、突然に冷蔵庫が故障した。やばい! 金がない!久 美子にばれる!
✒️久美子の恐るべき節約力、そして家計事件の真相が明らかに…! 次回は、まさかの総合口座マイナス露見の場面です。
(第2回:【短編小説】たのんまっせ~価値観がまったく違う夫婦の物語~:村川久夢)
✨️前回はこちら👇️から✨️
【短編小説】たのんまっせ~価値観がまったく違う夫婦の物語(第1回)
✒️関連エッセイ:田辺聖子さんの『スヌー物語』を読んで
坂東と久美子の話を書きながら、ふと『スヌー物語』を思い出しました。夫婦って、近くにいるのに、ときに不思議なほど遠く感じることもあります。
✨️よかったら、こちらも読んでみてください✨️
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