子どもの頃、お正月には家族でよく百人一首をしました。大人になってからの、お気に入りのある歌と私なりの解釈を紹介します。
<忘れじの行末まではかたければ>
「忘れじの行末まではかたければ
今日かぎりの命ともがな」
儀同三司母
<お前のことは忘れない、とあなたはおっしゃったわね。ほんとかしら。そのお言葉、信じ られるのかしら。行末のことはたのみがたいわ。それよりいっそ、今日のこの恋の幸福の絶頂で死んでしまいたいわ> (田辺 聖子著『田辺聖子の小倉百人一首』より)
百人一首には、いくつもお気に入りの歌があるのですが、この歌もお気に入りで、その解釈がとても気になるのです。
<儀同三司母~高階貴子~>
「忘れじの……」の歌の作者・儀同三司母(ぎどうさんしのはは)は、高階成忠(たかしななりただ)の娘で、名前を貴子(きし)と言い、高内侍(こうのないし)とも呼ばれました。
貴子は、中関白藤原道隆(なかのかんぱくふじわらのみちたか)の妻となりました。藤原道隆は、貴子が「忘れじ」と誓った相手です。
貴子は、儀同三司伊周(これちか)や一条天皇の中宮・定子(ていし)を生みました。定子中宮に仕えた清少納言は、定子の美しさと才気を、あこがれこめて『 枕草子』で讃えています。その母である貴子も才気あふれる美貌の女性だったと思われます。
<「忘れない」という愛の誓い>
若い頃は、「忘れない」と愛を誓ったクライマックスで、命が燃え尽きればいいという、ヒロインの情熱的な恋愛に、いたく共感し憧れました。
でも今、心にかかるのは、この歌のヒロインが、恋のクライマックスでも、「行末まではかたければ」と「恋」「誓い」の行末が困難であることを悟っていることなのです。
恋愛だけでなく友情もあるいは組織や国家も、芽生えがあり、上昇があり、クライマックスがあり、衰退があり、消滅があります。映画や芝居ならばクライマックスで「幕」というのも可能でしょうが、現実はクライマックスのあとも延々とつづくのです。盛りを誇ったものの瓦解の悲劇を見ることもあるでしょう。
<「誓い」を信じ見届けたい>
儀同三司母・高階貴子は、「忘れじ」と誓った夫と添い遂げ、息子は儀同三司(太政大臣・左大臣・右大臣)、娘は中宮になり、人生のクライマックスをむかえます。しかし、夫や息子が失脚してからは、不遇の晩年を送ったと言われています。
貴子の不遇な晩年を、「賢すぎる女の末路はあんなものさ」と口さがない人々が言ったことでしょう。しかし、この恋の歌は、定家によって百人一首に入れられ不滅の命をあたえられることになったのです。
「行末」が困難であることを知っていても、瓦解の悲劇を見る可能性があることを知っていても、「今日限りの命ともがな」とは思わず、クライマックスの「誓い」を信じ、衰退や終焉もしっかりと見届けたいと思うようになりました。
お正月に百人一首のカルタ遊びをされる人も少なくなったかと思いますが、百人一首はなかなか面白い大人の読み物だと感じます。お気に入りの解説本を読むのも、オシャレなお正月の過ごし方かと思います。
村川久夢Facebook・Twitter・Instagramのフォローはお気軽に
<村川久夢著『薫~書の道・愛の道~』ご案内>
「長編小説を書きたい!」と言う私の夢が叶いました。小説投稿サイト「エブリスタ」に私の長編小説『薫~書の道・愛の道~』を連載し、完結しました!
<あらすじ>
就職浪人し、人生にも目標のない薫は、ある日、新進気鋭の書道家・佐伯に出会う。佐伯には婚約者とも目される名家の子女・貴子がいた。薫と佐伯はだんだんと惹かれ合うようになるのだが……。書道との出会い、師匠「佐伯」との恋。書道家として、人として、成長する薫の成長を描いたヒューマンドラマです。
下記リンクから無料購読できます。
*----------*
【村川久夢ホームページ】
【村川久夢新著ご案内】
*村川久夢は、京都生まれの京都育ち。一人の京都人の目を通して、京都や京都人について、新著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』に書きました。観光化されていない日常の京都や地元の人に愛されている京都の穴場、食べ物やお店についても新著に書きました。
『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます』
*電子書籍(Amazon Kindle「読み放題」に登録されている方は0円でご購読いただけます。一般価格は700円です)下記よりお申込み下さい。
*村川久夢著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』1章無料公開中
『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』Amazonご購入ページ
本書で、京都好きな方はもっと深く京都を好きになり、今まで京都と縁がなかった方は京都を身近に感じて頂けると思います。ぜひ「あなたの知らないもうひとつの京都」を見つけてください。
*----------*
✿村川久夢著『50歳から夢を追いかけてもいい5つの理由』✿
『50歳から夢を追いかけてもいい5つの理由』は、村川久夢が「年だから」「今さら遅いから」など様々な心の制限を外し、他の誰かのためではなく、自分の心が望むことにしたがって生きるようになった軌跡を描きました。私が自分軸で生きられるようになった成長の課程を描いています。
*電子書籍(Amazon Kindle「読み放題」に登録されている方は0円でご購読いただけます。一般価格は550円です)下記ボタンよりお申込み下さい。
*紙書籍は、¥880(送料¥180)です。下記ボタンよりお申し込み下さい。
*----------*
✿心の制限を外す講座✿
心の制限を外せば、いろいろなことにチャレンジして、人生を楽しめるのです。「心の制限の正体とは何か?どうして心の制限を外すか?心の制限を外せばどんなことが起こるのか?」を9通のメールに込めた「心の制限を外す無料メール講座」を是非お読み下さい。
*----------*
*村川久夢ホームページトップには、新著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』や前著『50歳から夢を追いかけてもいい5つの理由』に頂いた感想を多数掲載しています。