私が20代だった頃、「女性の幸せは、結婚して、こども生んで、家庭を築くことだ」と言う風潮が強かったように思います。でも、私の母は、結婚して、こどもを生んで、家庭を築きましたが、苦労が絶えず、忍耐の人生を送っていました。幸せな人生について考えます。
＜「お嫁さんになりたい」とは全く思わなかった＞
私の両親は私に対して、「勉強は出来なくてもいいから、家事が出来て、気が効く子に育って欲しい。早く嫁に行って、早く子どもを生んで、平凡で堅実な人生は歩んで欲しい」と願っていたようです。
ところが、私は勉強が好きでもなかったし、出来る方でもありませんでしたが、「絶対四年制大学に行く！」と固く心に決めていました。「可愛いお嫁さんになりたい～♪」とはかけらほども考えていませんでした。
＜苦労の多い母＞
それは、経済力がないために、苦労ばかりしていた母の姿を見て育ったからだと思います。
母は、働き者で、気が効いて、辛抱強く、手先が器用で、その上美人で、「できた奥さん」「良いお母さん」の典型のような人でした。事実、近所や親戚の間で「いい奥さん」で通っていました。
でも、気難しく頑固な父方の祖母と同居していたので、母は言いたいことも言えず我慢ばかりしていました。家計も苦しいので、やりくりにも苦労していました。父は優しく真面目でしたが、祖母の言いなりでした。その上、祖父母が老いると、祖父母の介護も母の肩にかかって来たのです。
＜経済力があったら！＞
母は本当に苦労したと思います。愚痴をこぼせる人が身近にいないので、母が誰に愚痴をこぼしたかというと、それは中学生になった「私」でした。
母の苦労がわかっているので、黙って聞いていましたが、毎日毎日、祖母への文句、かばってくれない父への不満、家計が苦しいことの愚痴、自由になる時間やお金がないことの嘆きを聞かされました。
そして、母は決まってこう言うのです、「経済力があったらこんな家を出て行くのに！」
母は、働き者で祖父母の介護の傍ら、内職などもしていましたが、内職で得られる収入は、小使いにも足りないことは、中学生の私にもわかっていました。
＜四年制大学に進学したい＞
私は小学生の時、いじめられて不登校寸前でした。中学は市内でも屈指の厳しい条件を抱えた学校に通っていました。中学は凄まじく荒れていて、授業が成立しないこともしばしばだったのです。学力のないまま高校に進学したので、高校では勉強について行くのが、本当に大変でした。
高校での私の成績は芳しくありませんでした。就職することや、短期大学に進学することを勧められましたが、私は決意を変えませんでした。私の学力でも合格できそうな四年制大学を必死に探して、受験したのです。
＜経済的自立＞
なんとか私立の四年制大学に進学できました。でも、四年制大学を卒業したからと言って、簡単に経済的自立が得られるわけではありませんでした。
当時は、けっこう難関だった教員採用試験を受けました。正直、学校は好きではないし、教師はなりたくない職業でした。でも、経済的に自立したい一心で、物凄く真面目に勉強しました。
そして、一浪しましたが、教員採用試験に合格して採用されたのです。なりたい職業ではありませんでしたが、こうして私はなんとか、経済的に自立できたのでした。
苦労する母を反面教師にして、なんとか手に入れた「経済的自立」でした。
＜４つの自立が幸せに生きる基本＞
教員に採用されたのは、23歳の時だったので、あれから37年経ちました。元号も昭和、平成、令和と変わりました。私は何度も病気をしたり、夫に先立たれたり、不運にも見舞われましたが、今、幸せに暮らしています。
そして、幸せに生きるためには、「経済的な自立」だけでなく、社会の一員として充実した生活を送ることができる「社会的自立」、日常生活で自分の身の回りのことができる「生活の自立」、そして、自分の軸を持ち自分の心を満たせる「精神的な自立」が必要であることを実感しています。
私の両親が私に望んだような、「勉強は出来なくてもいいから、家事が出来て、気が効く子に育って欲しい。早く嫁に行って、早く子どもを生んで、平凡で堅実な人生は歩んで欲しい」と言う生き方も本人が望むなら、そういう生き方も良いでしょう。
でも私は、女性も男性も、経済的自立だけでなく、社会的にも、生活の面でも、精神的にも自立していることが、幸せに生きる基本だと実感しています。
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