マニキュア~恋の風景その2~

街にクリスマスイルミネーションが

見られるようになった頃

私は淡いピンクのマニキュアを買った。

 

日頃からオシャレに無頓着な私は

ネイルサロンに行ったこともなく

セルフネイルもしたことがなかった。

 

私はマニキュアを買って、

初めてセルフネイルにチャレンジした。

そしてネイルケアが本当に

根気のいる作業であることを知った。

 

最初は手と爪の消毒だった。

爪は表面だけでなく爪の裏も消毒し、

清潔な状態にしなければならない。

 

次はヤスリで爪の長さと形を整える。

甘皮のケアもしなければならない。

 

下準備が出来ると、

ベースコートをつけて爪を保護し

その上にネイルカラーを二度塗りする。

 

そして最後に、

トップコートという艶出しの液を塗るのだ。

 

液が固まるまで、

物に触れないようにじっと静かに待つ。

真面目にこの工程を実行すると

1時間以上かかってしまう。

 

私は日々の忙しさに紛れて、

時間も手間もかかるネイルケアは愚か、

手をじっくり眺めることさえなかった。

 

改めてじっくり眺めると、

自分の手は意外に細く綺麗だった。

 

セルフネイルした手は、

いつもと違う表情があるような気がした。

 

かつてマニキュアは、

裕福な女性の証明だったと言う。

身仕舞いを自分でする必要がなく、

人にかしずかれて

生活していることの証明であったという。

 

マニキュアは美しいが傷がつきやすい。

どんなに気をつけていても

その美しさはすぐに損なわれてしまう。

確かにマニキュアを美しく保つことは、

生活に追われている女では出来ない。

 

日々生活に負われる私が、

一時忙しさを忘れてマニキュアをつけた。

 

手は美しい表情をたたえ、

私とは別の生き物のように見えた。

ごく普通の女がマニキュアをつけるのは、

恋の証かもしれないと思った。

 

生き生きと美しい表情をたたえた手は、

どんな言葉より雄弁に

私の恋を語っているような気がした。

 

 

・・・・・<完>・・・・・

 

*鬱・夫の死を克服した作家&

インナーチャイルドカードセラピスト

村川久夢(むらかわ くむ)

 

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