久夢さん、私、今年55才になりました。夫は真面目で優しい人だし、息子たちも成人して孫もできたんです。今の生活も安定しているし、不満は特に何もないんです。
でもね、どうしても「もっと違う人生があったかも知れない」って思ってしまうんです。「これからの人生このままでいいのかな?」とも思うんです。どうしても取り除けない空虚感というのか欠乏感というのか、いつも生きづらい何かがあるんです。「何の不足があるの?」とよく言われるのですが。この欠乏感を満たすものを見つけたいのです。
紫苑(しおん)という素敵なお名前をお持ちのその女性は、憂わしげにそう言われたのです。私は、紫苑さんのその思いをインナーチャイルドカードに注ぎ込むつもりでシャッフルして頂きました。私はカードを扇型にならべ、紫苑さんにカードを引いていただきました。

<ハートのAce~今にも飛び立とうとしている愛~>
紫苑さんが引かれた最初のカードは、「ハートのAce」でした。紫苑さんが、このカードからどのような印象を受けられたかをお尋ねしました。

<紫苑>
とてもパワーを感じます。力で満ち溢れたハートに羽がついて、今にも飛び立とうとしています。朝日を浴びて神々しい感じがします。なんだか、このハートが私のような気がして来ました。
紫苑さんは、カードをじっと眺めて、私に印象を教えて下さいました。私は、「ハートのAce」が持つ意味を彼女にお話しました。
「ハートが自分のように感じられるんですね。紫苑さん、このカードにはこういう意味があるんです。愛を信じましょう愛は常にそこにあり決してあなたを見捨てることはありません」。そして、この「愛」は、人、考え、創造的な企画などを表しているんです。紫苑さんの中に力で満ちていて、羽がついて今にも飛び立とうとしている愛がありますか?
<紫苑>
どうかしら・・・。今の私の中にそんな力があるかしら?50才で会社を早期退職して、子どもも成人したし、私の役目は終わったと思っているんです。後は静かに穏やかに過ごせたらいいかなと思っています。だからそんなパワーが私にあるとは思えないんです。
<これからの人生これでいいのかな?>
私は紫苑さんが最初に言われた「これからの人生『これでいいのかな?』という思いや空虚感を拭えない」という言葉が気にかかりました。
<紫苑>
ええ確かに、「このままでいいのかな?」という思いがずっとあるんです。久夢さん、今、思ったのですが、このハートは海から出てきたばかりですね。マーメイドに支えてもらって押し出されていますよね!?私の中にも押し出されるのを待っている何かがあるのかも知れないです。
「なるほど」と私は思いました。「紫苑さんの中には押し出されるのを待っているパワー、つまり愛があるのでしょうね。その愛は、人かも知れない、アイディアかも知れない、創造的な企画かも知れないんです」と私が言うと、紫苑さんがご自分の気持ちを話して下さいました。
<紫苑>
久夢さん、フルタイムの仕事を抱えて子育てするのは、本当に大変だったんです。子どもの成長が生きがいだったし、仕事もそれなりにやり甲斐がありました。忙しいけれど生活にそれほど不満はありませんでした。でも、久夢さんにそう尋ねられると、私には無理だと思って諦めてしまったことがあるんです。
<何を諦めてしまったのか?>
「何を諦めてしまわれたんですか?」と私は紫苑さんに尋ねました。
<紫苑>
実は、私は編物が大好きなんです。子どもの物や主人の物を編んだり、お友だちにプレゼントしたりするのが大好きなんです。でも、本当はもっと本格的に勉強して、プロのニット作家になりたかったのです。
「なぜ諦めてしまわれたのですか?」と私は尋ねました。
<紫苑>
専門の学校も出ていないし、今から始めるのは遅すぎるし、それに私には才能がないし・・・それに、私は逃げているかも知れないです。なんだかそんな気がしてきました。
「逃げると言うと?」私はもう一度尋ねました。
<紫苑>
才能がないとわかるのが怖いのです。厳しいプロの世界に出ていくのが怖いのです。すぐに、安定した今の生活に逃げ込んでしまうのです。でも同時に、私がデザインした編み図がたくさんの人に楽しく使われて、完成した作品が喜ばれることを望んでいるのです。
「そうだったのですね。自分のデザインを認めて欲しいということですよね?」と私は紫苑さんに尋ねました。
<紫苑>
そうです!そうだったんです!認めて欲しいのに、「私には才能がないから」と自分を押さえつけていたんです。久夢さん、カードの絵がなんだか違って見えて来ました。最初は、ハートが私で、マーメイドは誰か私を押し出してくれる人に思えました。でも今は、ハートも私、マーメイドも私だと思えて来ました。
紫苑さんはしばらく沈黙されました。そして思い切ったようにこう言われました。
<紫苑>
誰にも言っていないのですが、今まで少しずつデザインした作品があるんです。それを若い人たちのようにブログやSNSを使って発表してみたいと思っていたんです。私、会社務めをしていたから、パソコンやインターネットはけっこう使えるのです。
「素晴らしいですね!どんどんチャレンジしましょう」と私は言いました。
<紫苑>
「紫苑さんの中に力で満ちていて、羽がついて今にも飛び立とうとしている愛がありますか?」と尋ねられた時、私の中にそんな愛やパワーなんてないと思いました。でも、自分に正直になると、私のなかに愛やパワーがあるのがわかりました。なんだか勇気が出てきました。空虚感も消えたように感じます。ありがとう、久夢さん。
紫苑さんはご自身の「ハートのAce」が何であるのかに気づかれたのでしょう、生き生きとした表情で帰って行かれました。あなたも紫苑さんのようにかけがえのない宝物をもっているのに気づかずに過ごしてはいませんか?
今日の「インナーチャイルドカード物語」は、「ハートのAce」が紫苑さんの宝物のありかを示す地図の役割を果たした様子を描いた物語でした。

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