セラピストになったばかりの55歳の時、「心に寄り添うセラピストになりたい」と思っていました。
でも、あの頃の私は「『心に寄り添う』ということを、どこまでわかっていたんだろう?」と思います。
「人の心に寄り添いたい。苦しんでいる人の、ほんの少しでも支えになりたい」という気持ちは本物でした。
このブログでは、経験を重ねた今だからこそ実感している、「心に寄り添う」ということについて綴ってみたいと思います。
◆愛は障害を超えることができるのか?
最近、映画『愛は静けさの中に』を思い返す機会がありました。
『愛は静けさの中に』は、小さな港町の特別支援学校に赴任した熱血教師ジェームズ(ウィリアム・ハート)と、そこで清掃員として働く聴覚障害者サラ(マーリン・マトリン)との愛を描いています。
この映画を初めて見た時、私は30代で信念に燃える教員でした。
「障害があっても、自立し尊重される社会を!」「物事を自分の目で見て、考えられる生徒を育てる!」と。
『愛は静けさの中に』を見て、「愛は障害を越えることができるのか?」と真剣に考え、答えを求めるように何度も何度も視聴しました。
心を閉ざし、頑なに声を出すことを拒むサラ。声が出るようにさせ、社会に出させようとするジェームズ。
二人は愛しあいながら、お互いを理解できずに苦悩します。
◆寄り添って待つ
あの頃の私はこの作品を、教育者の目線で見ていたのだと思います。
「なぜサラは声を出すことを頑なに拒むんだろう」と疑問だったのです。
改めて、なぜかを考えました。
サラは健常者と関わろうとして深く傷つき、声を出すことへの恐怖を感じていたのではないかと。
ジェームズが、サラの気持ちを理解せず、心に寄り添ってくれないことが、彼女の激しい怒りや絶望につながったのだと。
サラは「声を出させる」ことではなく、「声を出したくなったら、いつでも協力するよ」と待ってほしかったのでしょう。

◆経験が視点を変えてくれる
30代の私は、サラではなく、ジェームズに共感していました。でも今は、サラの心の痛みに目が向きます。
人は、経験を重ねると、見方も変わるのですね。
人の痛みに目を向け、いつでも協力するよと言って、その人が立ち直ろうとするまで待つこと。それが、「心に寄り添う」ことだと思います。
◆セラピスト作家の姿勢
30代の頃は、ラストシーンで二人が静けさの中に佇む意味が、正直わかりませんでした。
私は「これが愛だ」「これが正解だ」という、目に見える答えを求めていたのです。
でも今は、お互いの心の痛みも喜びも受け入れ合うことが、「愛」であり、「心に寄り添う」ことだと感じます。

あなたの悩みを敏感に感じ取り、「私はこのようにその悩みから立ち直れたよ」と、経験を発信してシェアし、あなたが自分の力で前を向くのを待つ。

これが、「セラピスト作家」としての、今の私の姿勢だと思っています。
(「寄り添う」ってどういうこと?~「心に寄り添う」を再び見つめた今:村川久夢)

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