▶「京都の朝はあっさりのお茶漬けや!」の謎がとけた
「京都の朝はあっさりのお茶漬けや!」と言って祖母は絶対に譲りませんでした。私が子どもの頃(昭和30年代~40年代)の話です。

日本の朝ごはんといえば、炊きたてのご飯とお味噌汁にお漬物が定番ですよね?
でも、幼い頃、わが家の朝食はお茶漬けとお漬物だけでした。わが家だけなのか、京都はそうなのか、長い間、謎だったのです。
ところが、江戸時代、庶民が朝食に何を食べていたのかを調べていて、謎が解けました! 江戸ではご飯は「朝に炊く」のに対して、上方では「昼に炊いていた」のです!

江戸は、朝にご飯を炊き、朝食は炊きたてご飯とみそ汁。昼食は冷やご飯に野菜や魚のお惣菜。夕食はお茶漬けとお漬物でした。
それに対して、上方は昼にご飯を炊き、昼食は炊きたてご飯、煮物魚、みそ汁。夕食は冷やご飯とお漬物。朝食はお茶漬けにお漬物だったのです。

京都の朝食がお茶漬けなのは、上方の食習慣によるものでした。
▶祖母が守りつづけた京都のしきたり
考えてみると祖母は明治24年(1891年)生まれ。明治維新からまだ24年経っただけの頃に生まれたのです。ちなみに曾祖母は安政(1854年~1860年)生まれ、江戸時代ですよね。

祖母は、江戸時代からつづく「京都の朝はあっさりのお茶漬け」を守っていたのです。
お茶漬けと一緒に食べるお漬物は、祖母が漬物樽で漬けているぬか漬けでした。季節によって素材が変わるので、けっこう美味しかったように記憶しています。
おくどさん(かまど)で炊いたご飯も美味しかったように思います。
でも、毎日お茶漬けだと飽きます!
「おばあちゃん、卵のごはん(卵かけご飯)して~」
「おばあちゃん、お味噌汁たいて~」
「おばあちゃん、昨日のおかずの残り食べよ~」
などと言おうものなら、「朝から口卑しい!」と祖母はカンカンになって怒り、定番のセリフ「京都の朝はあっさりのお茶漬けや!」が出てくるのです。
▶茄子と胡瓜の古漬けで食べるお茶漬け
祖母にとっては「庶民は身の程をわきまえ、質素に生きる」が美徳でした。また、京都人は質素倹約を身上としていました。
質素倹約して倹しく(つましく)生きるのが京都人だと、祖母は信じて疑わなかったのです。
私は貧相な朝ごはんにうんざりでしたが、祖母の朝ごはんが、本当に美味しくて好きな時期がありました。それは、京都が蒸し暑い夏の時期。
祖母は胡瓜や茄子を、ぬか漬けにしていました。父は浅漬けが好きでしたが、私は茄子と胡瓜の古漬けがとても好きでした。

漬かり過ぎて飴色になった茄子や胡瓜を水に浸して塩出しをし、細かく刻んで絞るのです。その古漬けに、おろし生姜をまぶして、醤油をかけると、絶品の美味しさでした。
夏なので、冷やご飯に冷たい番茶をかけ、この古漬けでお茶漬けを食べると、美味しくて、何膳でもご飯が食べられました。

古漬けの旨味と塩気、生姜のアクセント、冷たいお茶漬けの喉ごしが良く、子ども心にも「美味しい!」と思いました。
▶私がお茶漬けを食べている時は優しい顔をしていた祖母
京都のしきたりを頑固に守っていた祖母は、50年近く前に亡くなり、祖母の漬物樽もとっくの昔に処分されました。今では、私の朝食はトーストと豆乳コーヒーです。
祖母はいつも「京都では、こう決まっているんや!」と言って、時代の流れや社会の変化を頑なに受け入れなかったのです。正直、本当に窮屈でした。
けれど、夏になると、祖母が漬けた古漬けと、冷たいお茶漬けを懐かしく思い出します。

私が古漬けでお茶漬けを食べている時は、頑固で厳しかった祖母が、優しい顔をしていたように思い出されます。
(【ああ、京都人】「京都の朝はあっさりのお茶漬けや!」の謎がとけた!:村川久夢)

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