<亡くなったお母さんを今も許せない>
「母は20年前に亡くなったんですが、今も母をどうしても許せないんです……」

サロンの席につくなりクライアントの果林さんが言われました。そう言ったきり果林(かりん)さんはしばらく黙り込んでしまいました。
こんにちは。私はインナーチャイルドカードのセラピスト「ドレーム」と言います。ドレームはスウェーデン語で夢という意味なんです。私は黙り込んでいる果林さんに尋ねました。

「お母さんはどんな方でしたか?」
「とても家庭的で家事一切を上手にこなしていました。私と弟を一生懸命に育ててくれたんです。手芸も得意で私たちのものをよく手作りしてくれて、それにとても美人でした」
「そうなんですね。一生懸命に育ててくれたお母さんを果林さんはなぜ許せないのですか?」
果林さんは頬を上気させ、また黙り込んでしまったのです。ハンカチを握りしめる手がかすかに震えています。
明るい部屋に置いた観葉植物の葉が少し揺れた時、果林さんが思い切ったように言ったのです。
「母が私を嫌って、愛してくれなかったことです……。私はずっとそのことで苦しんできました。特に子どもの頃のことを思い出すと、母に対する恨みが湧き上がってくるのです」
「そうだったんですね。私のところへ来られたのはそれが理由なのですね?」

「はい。『お母さんのことを悪く言ってはダメよ。だれがあなたにおっぱいをくれて、オムツを変えてくれたと思っているの!』ってみんな言うんです」
「果林さんはそのことばに納得できますか?」
「納得しなきゃいけないとは思います。でも、どうしても母への恨みを消せないのです。母への恨みを消して楽になりたいのです」
<お母さんへの恨みを消したい!>
私はインナーチャイルドカードを果林さんに手渡し、「お母さんへの恨みを消したい」という思いをカードに注ぎ込むようにシャッフルしてもらいました。

私がシャッフルしたカードを扇型に並べて、果林さんに一枚引いてもらいました。カードは「大アルカナ16:ラプンツェル」でした。

「果林さんがこのカードから受けた印象や心に浮かんだことを私に話して下さいますか?」
「……。そうですね、この怖い顔をした青い顔色の女性が母に見えます。上にいる少女は私です。母は私に『早く降りてきなさい!』と怒っているのです」
果林さんは、「子どもの頃、母の愛情を感じたことがありませんでした。母は私を叱る人、気に入らないと叩く人だと感じていて、母が怖かったのです」と答え、つらそうにことばをつづけました。
「最近、弟の昔の写真を見たんですが、弟が母そっくりで女の子のように可愛いかったんです」
果林さんは、美人のお母さんには似ないで、お母さんと折り合いが悪かったお祖母さんにそっくり。お世辞にも「可愛い」とは言えなかったというのです。
「私は子どもの頃、母の愛情を感じたことがありませんでした。母は私を叱る人、気に入らないと叩く人だと感じていて、母が怖かったのです。そんな私のそばで弟は手放しで母に甘えていました」

「それは複雑な気持ちでしょうね?」
「ええ、もちろん。物心ついて、母が弟に接する時と、私に接する時の違いを指摘すると、『あんたは女の子だから』とか『おねえちゃんだから』とか『年上で聞き分けがよくないといけないから』と苦しい口実をつけていましたが、本当は私を嫌いだったのだと思います」
果林さんに触れるお母さんの手が乱暴で優しさを感じたことがないこと、偏食の弟には最初から子ども向けの食事が用意されていて、果林さんがそれを欲しがると「また我儘を言って!」とお母さんに叱られたと……。納得がいかないことは山ほどあると果林さんは言うのです。
お母さんに抱きついている弟を見て、果林さんがお母さんに抱きつきに行くと、「暑苦しいわね!」と言って突き飛ばされたとも言いました。

「その時、『母は本当に私が嫌いなんだ!』と絶望したんです」と果林さんがつらそうに話してくれたのです。
<ずっと「いい子」だったのに……>
「それはつらかったでしょうね」
「はい、とても……。私と弟では、私の方がずっと『いい子』でした。母を助けようと、母のお手伝いやお使いは進んでしたし、勉強も一生懸命にしました。母の喜ぶ顔みたさに、おこづかいをためて『母の日』にはいつもプレゼントを用意しました。でも……」
果林さんの声が震えて、また黙り込んでしまったのです。やっと顔をあげると、感情を押し殺すように低い声で話しはじめました。
「母が胃がんで倒れた時、私は重いうつ病でした。でも、私と夫は二世帯住宅を買って両親と同居しました。私たちが同居することを母はとても喜んでくれました」
「うつ病を患っているのに、引っ越しは大変だったでしょうね」
「ええ、うつ病が悪化してしまいました。でも、母と打ち解けて話せるようになったんです。今ならずっと私が苦しんできたことをわかってくれるかと思い、母に正直な気持ちを打ち明けると……」
「お母さんはどう言われたのですか?」
「『あんたの根性はネジ曲がっている!』と病人とは思えない大きな声で母に叱責されました」
そして、果林さんは虚しそうな表情でことばをつづけました。
「『この人には何と言っても伝わらないんだ』と絶望的な気持ちになりました。最近は、オンラインで知り合った同じように苦しんでいる人がわかってくれて、『実の母でもわかり会えない人もいるんだ』と思えるようになり、少しほっとしました」
「気持ちが楽になったんですね?」
「はい。母に愛してほしくて一生懸命だった昔の私があわれです」

果林さんは、昔の自分自身を思い出したのでしょう、目に涙が滲んでいました。
<お母さんを許さなくてもいい>
「今も『一生懸命に育ててくれたお母さんを悪く言ってはいけない』と思いますか?」
「頭ではそう思います。母はとても苦労の多い人でしたから。でも、そう思うとよけいに母に愛されなかったことを思い出して、つらくて……」
「そうですよね。果林さんの本心は愛してほしいのに愛してくれなかったお母さんを恨めしく思っているのではないですか? 本心を押し殺すのは苦しいですよね?」
果林さんは俯いて再び沈黙したのです。しばらくして顔をあげると、しっかりした声で言ったのです。
「母の気持ちや立場がどうであれ、私はあんなに苦しんだのです。……。母を許さなくてもいいかと思うのです」
果林さんは、フーと大きく息を吐くと、思いの外すっきりした表情になっていました。
「ドレームさん、自分の気持ちを押さえつけて、無理に許すことないですよね。やっと『母を許さなくてもいい』と自分の口で言えて、とっても気持ちが楽になりました!」

<傷ついた幼いあなたの一番の味方に>

「果林さんが引かれた『ラプンツェル』のカードには、こんな意味があるんです。『これまで築いて来た信頼関係が崩れ、裏切られたというような出来事があったかもしれません。しかし、どこか疑問を抱きながら続けてきた生き方を打ちこわし、新たなスタートを切る時が来たことを暗示しています』」
「ドレームさん、どんなに一生懸命になっても私を愛してくれない母を、恨んではいけないと思うのは本当に苦しかったです。特に幼いころは」
「果林さんの中には、今も傷ついた幼い果林さんが存在しているのです。それが果林さんのインナーチャイルドなんです」
「私のインナーチャイルド?」
「ええ、傷ついた幼い自分自身を癒やすセラピーが、インナーチャイルドカードセラピーなんです」
果林さんは「ラプンツェル」のカードをしみじみと眺めて言いました。
「一生懸命だった傷ついた幼い私を両手を開いて思いっきり抱きしめてあげたいです」

「そうしてあげて下さい。これからは果林さんが誰よりも幼い傷ついた果林さんを愛して、いつも味方になってあげて下さいね」
サロンに来た時は、思い詰めて硬い表情だった果林さんの顔がほころんで、明るくなっていました。足取りも軽く果林さんは帰っていきました。
もし、あなたが生きづらさを感じるならば、今も心の中に存在する傷ついた幼いあなたの声に耳を傾けて下さい。

両手を大きく開いて、傷ついた幼いあなたを抱きしめて、思い切り愛してあげて下さい。いつも味方になってあげるのです。

いつの間にか、今のあなたの生きづらさが消えているのを感じるでしょう。

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