葛藤は人生の分岐点にいる証~一番言いたいことは一番いえないこと

 

「Mちゃんが夜中に電話してきて、何かと思ったら、どうでもいいことを言って電話をきったの! 私は寝てたのに!」と友だちのKちゃんが怒った口調で話していました。

 

 

あなたもこんな経験をしたことがあるのでは?

 

実は、Mちゃんは私のところにも深夜に電話をしてきてこう言ったのです。

 


「久夢ちゃん、元気?」

「元気やけど、どうしたん?」

「元気やったらええねん。それが聞きたかっただけ~おやすみ」

 

まあ、Kちゃんにとっても、私にとっても迷惑と言えば迷惑な話しです。でも、私は「Mちゃんはきっと何かあったんやな……」と感じました。ふとレバノンの詩人ハリール・ジブラーンのことばを思い出したのです。

 

 

レバノンの詩人、ハリール・ジブラーンはこう言っています。

 

「相手の本音は自分に打ち明けたところにではなく、打ち明けられなかったところにある。だからもし相手を理解しようと思うのなら、相手が言ったことにではなく、言わなかったことに耳を傾けなさい。」(ハリール・ジブラーン)

 

ちょっと矛盾しているように感じますよね?

 

私はハリール・ジブラーンのこのことばを初めて聞いたとき、ドキッとして「確かにそうだ!」と感じました。

 

 

打ち明けたいと思っても、どうしても打ち明けられないこともあると思うのです。むしろ一番打ち明けたいことは、一番言いにくいように思います。

 

私は人からたびたび「よくあんなに大胆に自己開示できますね!」と言われます。人からは大胆に自己開示しているように見える私にも、どうしても言えないことがあります。同時にそれは一番わかってほしいことでもあるのです。

 

 

Mちゃんもきっと打ち明けたいことがあったのでしょう。でも、ことばにできなかった事実がMちゃんの真実であり、もっともわかってほしいことだったのでしょう。

 

 

一時、自分の「黒歴史」を告白するのが流行りました。でも、「黒歴史」と言いながら、告白できた時には、もう「黒歴史」ではないのです。

 

 

私は今、作家として「一番表現したいこと」が、「一番書けないこと」である葛藤を抱えています。「書けないこと」はいわば私の「黒歴史」です。

 

私が「黒歴史」を昇華して、小説にできた時、私は自分の葛藤を乗り越えて本物の作家になれると感じています。

 

「一番打ち明けたいこと」と「一番言えないこと」の葛藤に出会う時は、その人が人生の分岐点に来ている時なのです。

 

 

その葛藤を乗り越えた時、人は今までの殻を脱ぎ捨てて、一回りも二回りも大きくなり、成長するのです。

 

 

あなたにも口にはできないけれど、本当は打ち明けたい葛藤があると思います。その葛藤こそ、あなたを変えるきっかけになるかもしれません。

 

 

 

 

 

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