<和菓子の歴史を彩る『椿餅』の魅力>
京都は、四季の移ろいや花鳥風月を表現した和菓子でも有名です。あなたは現在でも食べられている最も古い和菓子が何かをご存知ですか? 平安貴族が愛した甘味が、現代の私たちの手の届くところに残っているとしたら?
それは、時代を超えて私たちと繋がる和菓子「椿餅」なのです。椿餅は、平安時代の貴族が軽食代わりに食べていた餅菓子で、現代でも冬から初春にかけての京菓子として茶席などに出されています。
椿餅は、当時の食文化を感じさせる味わいとして、今も私たちの生活に息づいています。
<『源氏物語』にも書かれた『椿餅』>
平安時代の椿餅は、道明寺粉を甘葛という蔦の樹液を煮詰めたもので甘味をつけて練り、椿の葉で挟んだものでした。
まだ、砂糖は流通しておらず、甘い小豆餡もなかったので、餡の入っていない餅菓子だったのです。揚げ菓子が中心だった唐菓子に対して、和菓子は餅菓子でした。
今も椿餅は多くの和菓子店で販売されていますが、多くが餡入で、平安時代の椿餅は違った味だったようです。
また、椿餅は、現代の菓子のように日常的な間食として食べるのではなく、貴族の館で大規模な蹴鞠の会が催されたときに参加者に配られていました。貴族たちにとって、蹴鞠の後の椿餅は至福のひとときだったことでしょう。
現在の椿餅はお茶席で頂くことが多いので、蹴鞠の会で間食として食べられていたというのは、驚きでした。大きなサッカー大会の後に食べる、特別な食べ物をイメージする方が近いかも知れないですね。
『源氏物語』にも椿餅は登場し、貴族たちが蹴鞠の合間に、軽食としてつまむ様子が書かれているのです。『源氏物語』といえば、古典の教科書で学んだだけの、遠いお話だと思っていたので、椿餅のような和菓子が登場していたことには、大変興味を感じました。
<貴族の象徴「椿餅」と庶民のおやつ>
平安時代には、砂糖はまだ流通しておらず、甘葛も高級品でした。椿餅は貴族のみが味わえた贅沢な和菓子だったのです。このような和菓子を楽しむことは、平安貴族たちの優雅な生活の象徴でした。
椿餅は、庶民の口には入らない贅沢品だったのでしょう。庶民にとってのおやつは干柿、梨、桃、みかん等の果物、そのほかに唐菓子と呼ばれる米の粉を練り、形を整えて油で揚げる中国伝来の菓子もありました。
素朴で香ばしい唐菓子は庶民に親しまれていましたが、椿餅の上品な甘さとは一線を画していました。庶民にとっての甘味は自然由来のものだったのです。
椿餅の上品さと唐菓子の素朴さを想像すると、貴族と庶民の生活の違いがより際立って感じられるでしょう。
椿餅のような和菓子が特権階級に限られていたからこそ、貴族の食文化には特別な価値があったのかも知れません。
平安時代にも、『源氏物語』にも、あまり縁のない私ですが、当時の貴族たちが、蹴鞠の会などの特別な場面で、軽食として食べていた「椿餅はどんな味だったのだろう?」そんな想像が頭をよぎりました。
現在、食べられている椿餅は、現代風にアレンジされ甘い餡が入っていますが、その由来が平安時代にあることを知って、平安時代の生活が一瞬、身近に感じられたのです。
椿餅を一口食べるたびに、千年前の貴族が愛した美しい椿の葉に挟まれた小さな餅に、歴史の甘味を噛みしめるのも、また格別な味わいではないでしょうか。
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