【ああ、京都人】京ことば「しまつ」の深い意味

 

京都人がものを大切にするのは「しまつ」と言う考え方が深く影響しているのです。京ことば「しまつ」の深い意味を書いたブログです。

 

<祖母からもらった着物>

京都人がものを大切にするのは「しまつ」と言う考え方が深く影響しています。「しまつ」は節約するという意味で使われることが多いですが、もともとは「しまつ」は、使われなくなったものにひと手間加え、ひと手間加えることで、新たな命を吹き込むことを意味します。再び役立つように、ものの「あとしまつ」をすることから来たことばなのです。

 

「しまつ」という京ことばの深い意味を知った時、祖母からもらった銘仙の着物をほどいて、ワンピースにしたことを思い出しました。

 

祖母の着物で作ったワンピース

 

 

祖母からもらった銘仙の着物は、色合いや柄がとても好きでしたが、着物はおはしょりを作るには短すぎ、対丈で着るには微妙に長く、帯に短し襷に長し状態だったのです。

 

処分するには忍びなく、着るには微妙な丈の着物を私は持て余していたのでした。

 

祖母と久夢

 

<新しい命を吹き込む>

ある時、古い和服地をとても愛していて、それが高じてソーイングカフェを経営するようになった友人を思い出したのです。

 

友人は生粋の京女。彼女は古布の特性を活かしたリメイクを大変得意としています。私は彼女が祖母の銘仙に新しい命を吹き込んでくれる、つまり「しまつ」してくれると感じ、彼女のところに相談に行きました。

 

祖母からもらった銘仙の着物

 

<「しまつ」には手間がかかる>

友人は、着物の状態や素材を吟味して、ノースリーブのワンピースにすることを提案してくれました。私は「帯に短したすきに長し」状態で持て余していた着物に、ひと手間加えて、再生させられること、つまり「しまつ」できることが嬉しくて、ウキウキしました。 

 

実際に作業してわかったのですが、着物を解いてワンピースを縫うのは、新しい布地を買ってワンピースを縫うより、はるか~に手間が必要だったのです。

 

第一段階は、祖母が縫った着物をほどくことでした。

 

第二段階は、ほどいた着物地にアイロンをかけて折りジワをとることでした。アイロンをかけずに洗うとシワがとれなくなるのです。シワはなかなか伸びずに、アイロンがけも大変でした。

 

第三段階は、ほどいてアイロンをかけた着物地を丁寧に洗い、タオルで水を吸い取り、絞らずに干すのです。絞るとシワがつくからです。

 

第四段階は、最後にもう一度、アイロンをかけました。

 

着物地を縫える状態にするために、私はこんなにたくさんの手順を踏まなければならなかったのです。

 

やっと縫える状態になった着物

 

<復活の喜びはひとしお>

いよいよワンピースの製作です。型紙を作り、着物地を縫い合わせ幅を出し、裁断し、ミシンがけをしたり、手縫いをしたり、作業は大変でしたが、楽しくて、私は熱心にソーイングカフェに通いました。

 

こうして、私は祖母からもらった着物をノースリーブのワンピースにリメイクすることができたのでした。

 

出来上がったワンピースを着て

 

 

ワンピースは、新しい布にはない魅力が活かされていました。手間も時間もかかって大変だっただけに、着物をワンピースに「しまつ」して、復活させた喜びはひとしおでした。

 

<人生を「しまつ」して再生>

実は、祖母は着物を二着くれたのですが、もう一着は今もクローゼットで眠ったままです。

 

もう一着の着物

 

なぜかと言うと、私が着物を「しまつ」して再生させるより、自分の人生の「しまつ」、つまり「人生の再生」に夢中になったからなのです。

 

着物をほどいて、アイロンをかけて、洗って、再度アイロンをかける等々、色々と手順を踏んで、着物をリメイクしたように、人生のリメイクを始めたのです。

 

一度縫った自分の人生をほどいて、心のアイロンで癖を取り、洗い出して、新たな人生設計と言う型紙をとって、思い切って裁断し、不要な部分を取り除いたのです。私は今、「しまつ」して再生された人生の仮縫いが終わったところのように感じています。

 

人生を「しまつ」して再生するには、まっさらな人生を生きる時にはない、手間も時間もかかります。でも、一度は終わったと思った人生を、自らの手で再生させるのは、大変ですが面白いです。復活させる喜びは非常に大きいのです。

 

 

復活して書いた本

 

それに、新しい布にはない魅力が「しまつ」して再生されたワンピースに生まれたように、「しまつ」して再生した人生には、深い味わいがあるのです。

 

<一番書きたかったこと>

「しまつ」は、使われなくなったものにひと手間加え、ひと手間加えることで、新たな命を吹き込むことです。また役立つように、ものの「あとしまつ」をすることから来たことばなのです。「しまつ」の根底にある考え方は、拙書『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』で一番書きたかったことでした。

 

『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』

 

京都の庶民は、度重なる戦乱で焼け野原になった京の都で、生き抜いてきました。今あるものを、いかに生かして再生させるかを考え、「しまつ」して生き抜いて来ました。この知恵は、生きにくい現在を生きる私たちにも生かせる知恵だと感じます。「人生をこのまま終わりたくない」と思う時、役に立つ知恵だと思うからなのです。

 

 

京都在住セラピスト作家:村川久夢(むらかわくむ)

 


村川久夢は、京都生まれの京都育ち。一人の京都人の目を通して、京都や京都人について、新著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』に書きました。観光化されていない日常の京都や地元の人に愛されている京都の穴場、食べ物やお店についても新著に書きました。詳しくは下記案内をご覧下さい。     

 

 

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