6月になってピユが餌を食べなくなった。動物病院に毎日連れて行って、点滴をしてもらっていたが、ピユはガリガリに痩せて、弱って行くばかりだった。弱々しく鳴くピユを、私はどうしてあげることもできなかった。
その頃、ピユを動物病院に連れて行くのが、虚しくて、しんどかった。ピユが元気になると思えなかったし、ピユは先が長くないと感じていたからだ。
そんなある日、私がカフェオレを飲んでいると、ピユがクンクンカフェオレを匂いで、飲もうとしているのだ。私は、ピユがミルクやクリームが大好きだったことを思い出し、ミルクを飲ませてみた。喉が乾いていたのだろう、ピユは音を立てて、ミルクを飲んだ。
獣医さんにそのことを話すと、猫ミルクを飲ませることを勧められた。自力ではもう飲まないので、2.5mlのシリンジで飲ませた。ウエットフードを水で溶かして、シリンジで飲ませようとしても、嫌がって飲まないが、猫ミルクは嫌がらずに飲んだ。
「元気になってくれるかもしれない……」
そう思うと、ピユをどうしてあげることもできない虚しさや悲しさが、少し薄らいだ。
ピユが猫ミルクなら飲むことを獣医さんに話すと、猫ミルクより高栄養、高カロリーの液体の総合栄養食を勧められた。ピユは、液体総合栄養食も嫌がらずに飲んだ。シリンジも2.5mlから5mlに代えた。
今は、2時間ごとに、5mlシリンジで3回、液体総合栄養食を飲ませている。ピユは、ほんの少しだが、ふっくらした。
毎日、動物病院に行くことも、2時間ごとに液体総合栄養食を飲ませるのも、大変だけれど、今は、以前のように虚しくない。「ピユが元気になってくれるかも知れない」と感じられるからだ。
ピユは19歳、人間の年齢にすると92歳くらいらしい。私は、ピユが高齢猫だからと、生命を諦める気持ちになれなかった。ピユにはまた元気になってほしい。毎日、ピユの世話をしながら、生命の尊さをしみじみ感じる。
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