飼い猫のピユは、私が激鬱の時にわが家で生まれた。毛が白いので最初はシロという名前だったけれど、「ピユ~ピユ~」という鳴き声が可愛いので、後にピユという名前に変えた。
当時の私は鬱が酷く、何を見ても何も感じなかったが、生まれたての子猫3匹、ピユ、マゼ、クロが母猫のお乳を飲む様子は可愛くて見飽きなかった。もう19年も前のことになる。
ピユは食欲旺盛で、自己顕示欲が強く、ヤキモチ焼き、でも、お客様が来られると物陰に隠れて出てこない内弁慶。
ピユたちは完全室内飼いで、当時、引きこもりだった私の唯一の友だちだった。あの頃の私は人が怖くて、ドアホンの音が一番嫌いだった。なので来客が減る雨の日が好きだった。ピユたちと一緒に雨の音を聞いていると心が安らぐのを感じたものだ。
元気になってからも、私はいつも猫たちと一緒。
でも、私の手のひらの上で「ピユ~ピユ~」と鳴いていたピユは、いつの間にか私の年齢を追い越して、高齢猫になってしまった。
梅雨に入って蒸し暑くなると、食欲旺盛だったピユの食欲が衰え、餌をあまり食べなくなってしまった。大好きだったウエットフードも猫が狂気して食べるチュールも見向きもしなくなったのだ。
動物病院に毎日のように通い、点滴と投薬を続けた。時には餌を水でといでシリンジで食べさせたりもしたけれど、今日はそれも嫌がって食べようとしない。
ガリガリに痩せて、弱々しく鳴くピユを私はどうしてあげることもできない。抱っこして、話しかけたり、撫でてあげたりするしかできない。
今日、私がカフェオレを飲んでいると、ピユが近づいて来て、カフェオレをクンクン匂いでいる。私はピユがミルクやクリームが大好きなことを思い出して、ミルクをあげた。
ピユは喉も乾いていたようで、音を立ててミルクを飲んだ。母猫のおっぱいを飲んでいた頃を思い出しているのかな?
子猫は心をとろかすほど可愛い。でも、歳月が流れると、猫は飼い主を追い越して老いて行く。切ない。出会った頃は、こんな日が来るとは思わずにいたんだなとつくづく感じる。
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