ことばは案外、嘘つきです!
たとえば「大丈夫」ということばは、曲者です。口では「大丈夫」といいながら、本当は大丈夫でなかったり……。あなたはそんな経験はありませんか? 誰もが口にする『大丈夫』ということば。けれども、その奥には隠された感情や葛藤が潜んでいるかもしれません……。
ことばの裏側に隠された本心を探ることが、根本的な問題解決につながるのです。
<うるさいババア>
たとえば、教師だった頃、難しい年ごろの生徒から「うるさいババア!」と言われることがありました。そんな時に「先生に向かってなんてことを言うんです! 謝りなさい!」なんて言っても火に油を注ぐだけでした。
「どうしたん? なにかあったん? そんなことを言われて先生は悲しいよ」と感情的にならずに、自分の気持ちを伝えました。
「うるさいババア!」はいい表現の仕方ではありませんが、生徒なりに苛立っている気持ちを必死で訴えているのです。
そんな時は、生徒の気持ちが落ち着くのを待って、苛立ちの原因を一緒に探りました。そうすると、本当は生徒自身も悩んでいることや、本心を打ち明けてくれたものでした。
<だから大丈夫、なので大丈夫……>
一見、乱暴なことばでも、その裏側には本音が隠されています。これは日常の会話でも同じです。たとえば、久しぶりに幼馴染と会った時もそうでした。彼女も一時は私と同じように、鬱に苦しんだことがあるのです。
彼女は、鬱はすっかり良くなったこと、以前、勤めていた職場にパートで勤め始めたこと、趣味の絵画教室が楽しいこと等を話してくれたのです。
私はふんふんと聞きながら、彼女の頬がこわばっていることが気になり始めました。そういえば、彼女の眉が釣り上がり気味で、笑顔も硬く見えるのです。
彼女はぎこちない笑顔で、「だから大丈夫」「なので大丈夫」「私は大丈夫」と「大丈夫」を繰り返しました。
彼女は少し震えた声で「大丈夫」を繰り返し、目をそらしがちでした。聞くほどに、そのことばが逆に彼女の不安を表しているようだったのです。
「そうなのね、もう大丈夫なのはわかったよ。でも、大丈夫でなくなったら、いつでも言ってね」と私が言うと、彼女の目から涙が溢れ出したのです。
鬱は一進一退で仕事に行くのが辛い、でも行かないと家計が厳しい。絵画教室は「仕事は出来なくても、絵画教室には行けるのね」と家族が理解してくれない。彼女は、息つく暇もないほどの勢いで話してくれたのです。
<ことばの裏側にある本心を探る>
強い感情のことばに出会った時は、「何がこの人にそう言わせているのか?」と考え、「大丈夫」ということばを聞くと、「本当に大丈夫なのかな?」と考えます。
「大丈夫」を繰り返していた幼馴染も、本当のことを話し終わって一息つくと、「大丈夫」を繰り返していた時とは、まったく違う柔らかい表情になっていました。
ことばは意外に表面的で、「嘘つき」といえるかも知れません。ことばの裏側で働いている本心を探ると、本当にその人が望んでいることや、怖れていることが明らかになるのです。
表面的な言葉だけでなく、その裏側に隠された本心を探り続けることが、相手の本音を理解し、関係を改善する最も効果的な手段なのです。
ことばの裏に隠された本心を探ることは、私たちが相手を理解し、本音でつながるための一歩です。自分にも相手にも余裕が生まれると、思いもよらぬ安らぎや安心が訪れるものです。
「大丈夫」と言いながら、心のどこかで不安を抱えたことはありませんか?
だから、まずは自分に問いかけてみましょう──「無理をしていない?」と。自分の心に優しくすることで、他者にも同じ優しさを向けることができるのです。
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