出会うべくして出会った

ずいぶん前のことになるが、

私にクラシックやジャズのことを

教えてくれた友人が

彼愛用のオーディオセットを譲ってくれた。

 

あの頃、彼から音楽の話しを聞くことが、

本当に楽しかった。

音の世界がぐんぐん広がった。

 

あの頃、私は難しい事情を抱えていて、

彼と音楽を聞いている時だけは、

心が弾むのを感じた。

 

気がつくといつの間にか、

私たちは互いの心に踏み込んでいた。

お互いに抱えている事情は重かった。

 

そんな時、彼は海外勤務になり、

自然に疎遠になった。

ちょうどその頃、

オーディオセットの調子が悪くなり、

聞けなくなった。

 

彼の心の現れのように感じて

とてもショックだった。

 

そしてまた歳月は流れ、

私はつらい時期を越えた。

その間もずっと私は彼に譲ってもらった

オーディオセットを大切にしていた。

 

ある時不意に音信不通だった彼から

LINEにメッセージが来た。

私たちはかすかにLINEで繋がるようになった。

 

ふと思いついて、

オーディオセットにCDをセットしてみた。

 

聞けた!

 

スピーカーから艶やかな音色が聞こえ、

心が弾むのを感じた。

 

彼はデリケートで純粋な人だが、

とても気むずかしく気まぐれなところがある。

どうやら譲ってもらったオーディオセットも

前の持ち主同様にとても気むずかしくて、

気まぐれなようだ。

 

その後、彼からの連絡はまた途絶えて

音信不通になった。

オーディオセットも再び聞けなくなった。

 

私はふと「他生の縁」という言葉を

思い浮かべた。

人はみな出会うべくして出会い、

その役割を果たし自然に別れて行くのだ。

 

彼もオーディオセットも出会うべくして出会い、

そして別れていく運命だったのだろう。

 

*鬱・夫の死を克服した作家&

インナーチャイルドカードセラピスト

村川久夢(むらかわ くむ)

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