最近、モフモフの服は着火しやすくて、衣服に火がついてやけどをする事故が増えているとニュースで見ました。
それを見て、ふと祖母のことばを思い出しました。
私が子どもの頃、ストーブに近づくと、祖母は必ず言いました。

「ああ、あぶない! 『ほいろ』かかる!」
当時の私はかなり幼かったので、「ほいろ?」の意味が分かりませんでした。
今思うと、あれは「火の色が移る=焼ける、焦げる、危ない」という意味だったのだと、私は思っています。
▶寒かった京都の町家
65歳の私が幼かった頃なので、60年くらい昔の話ですが、当時、わが家の暖房器具は、なんと火鉢でした。

祖母は明治24年生まれで生粋の京女。明治の京都人がそうであったように祖母は「庶民は倹(つま)しく生きるのが美徳」と信じ切っていたのです。
その祖母が家を仕切っていたので、祖母は炭をケチって少ししか焚いてくれませんでした。
今は「京町家」が人気ですが、京都の町家は半端なく蒸し暑い夏仕様で作られているのです。だから、風通しが良いぶん、冬はすきま風で寒いんです。
そこへ手を温める程度の火鉢しかないので、本当に寒かった記憶があります。
▶イヌイットもびっくり!
でも、祖母は幼い私を気づかって、「でんち」や「かめのこ」を着せてくれました。
「でんち」は電池ではありません。
「でんち(丁子・殿中)」は、袖なしの綿入れ半纏のことなんです。語源は諸説あるようですが、武士が着た「殿中羽織」からきているらしいです。

「かめのこ(亀の子・亀の子はんてん)」は、背中を重点的に温める、まさに「亀の甲羅」のような形の防寒着です。小さい子どもが動きやすいように、袖をなくして背中と肩をしっかり覆うタイプです。

幼い頃の写真を見ると、私は
「イヌイットもびっくり!」
というような厚着をしています。
▶祖母を窮屈で古くさく感じた
肌シャツを2枚重ねで着て、ブラウスを着て、セーターを着て、その上から「でんち」を着て、時にはまだその上に「かめのこ」を着る。
それだけ厚着をしていた私。祖母は、火鉢の火そのものよりも、「火の色(熱気)」によって綿がじわじわと熱を持ち、焦げてしまうことを恐れたのでしょう。
「ほいろかかる」ということばから、祖母が、火鉢と厚着をした私に、気が気ではなかったことがうかがえます。

祖母なりの気遣いであり、愛情だったのでしょうが、大きくなるにつれて、そんな祖母が窮屈で古くさく感じたものでした。
▶暖房器具が火鉢しかない家
何かと「京都ではこう決まってるんや!」と古い習慣を守ろうとした祖母は、石油ストーブが普及しだした頃、それが気に入らなかったようでした。

きっとスイッチひとつで温まるファンヒーターやエアコンを見たら目を回すでしょう。
ちなみに、96歳で亡くなった昭和3年生まれの父は、ガスファンヒーターを嫌って、最後まで赤い火が見えるガスストーブを好んでいました。
ファンヒーターも十分温かいのですが、父は火の赤い色が見えないと、「温かい」と実感できなかったようです。
家に暖房器具が火鉢しかないなんて、なんだか江戸時代みたいですが、60年ほど前は、うちの実家はそんな感じでした。
▶消えゆく京ことば「ほいろ」
モフモフの服に火がつく話から思い出した消えゆく京ことば「ほいろかかる」。
それは、火に近づきすぎて、衣服に火が着くことを恐れた昔の人のことばなのでしょう。いえ、火そのものに怖れを感じていたのでしょう。
もっとも暖房器具はガスファンヒーター、調理は電子レンジばかり使っている私には、ちょっとピンときませんが……。
でも、本当に火を怖れる気持ちを忘れてはいけないと思います。
「ほいろかかる」から思い出した、消えゆく京ことばや京都の昔の暮らしでした。ことばが消えても、そこに込められた暮らしの知恵は、どこかで生き続けているのかもしれません。
(【ああ、京都人】ほいろかかる~消えゆく京ことば:村川久夢)

▶『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』紹介

*村川久夢は京都生まれの京都育ち。一人の京都人の目を通して、京都や京都人について、拙書『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』に書きました。
戦争や政争が絶えなかった京都で、生き抜いて来た京都人の知恵を、また、観光化されていない日常の京都や地元の人に愛されている京都の穴場、食べ物やお店についても新著に書きました。
*電子書籍(Amazon Kindle「読み放題」に登録されている方は0円でご購読いただけます)一般価格は700円です。ペーパーバック(1,320円)もございます。下記よりお申込み下さい。
本書で、京都好きな方はもっと深く京都を好きになり、今まで京都と縁がなかった方は京都を身近に感じて頂けると思います。ぜひ「あなたの知らないもうひとつの京都」を見つけてください。

「ああ、京都人シリーズ」は、一京都人として、京都の魅力を描いたエッセイ集です。あなたの知らない素顔の京都についてお伝えします。下記ボタンからどうぞ。
▶書くことで「本当にやりたいこと」が見つかる無料メール講座

今まで家族のために生きてきたけれど、そろそろ「✨️自分のために生きてみたい✨️」と思っているあなた。
とは言うものの、「どうせ私なんか無理よ。今からでは遅すぎる」「本当にやりたいこと」が何かわからない……。そんなふうに感じていませんか?
この無料メール講座は、「どうせ私には夢なんて見つからない…」「自分のために生きると言われても、本当にやりたいことがわからない……」と思っているあなたが、メールのワークにそって、自分の気持ちを書きます。
書くことで、自分自身と静かに向き合いながら、今まで気づかなかった「やりたいこと」や「本当の私」を見つけていきます。
講座は、無料でメールアドレスだけで登録できます。いつでも解除OKです。高額な商品やサービスの購入勧誘もありません。安心して下さいね。
メール講座の詳細やご登録は、下記ボタンをクリックして案内ページにお進み下さい。

🎁無料メール講座の登録登録「京ことばセラピーメッセージ」は、やわらかな「京ことば」で、あなたの心に問いかけ、セルフセラピーできます。
「10日間で『本当にやりたいこと』が見つかる無料メール講座」で夢を見つけませんか?
▼詳しくは下記ボタンから
▶村川久夢ホームページトップ

村川久夢ホームページトップには、最新7ブログ、著書に頂いた感想、村川久夢作品や「ああ、京都人シリーズ」へのリンクも紹介しています。ホームページトップへは、下記ボタンをクリックして下さい。
