晩秋の西本願寺を訪れました。正面通から見る、総門、御影堂門、目隠し門、水吹き銀杏の風景がとても好きです。

▶晩秋の西本願寺訪問
御影堂門をくぐり、目隠し門を越えると四季折々の表情を見せる銀杏の大木が迎えてくれます。この大銀杏には、水を吹いて大火から本願寺を守ったという伝説があるのです。

ちょうど献菊展が開催中だったので丹精がこめられた見事な菊を鑑賞できました。

▶親鸞聖人の御真影に手を合わせた静かな時
いつもは御影堂や阿弥陀堂に上がって、仏さまに手を合わせることもない罰当たりな私ですが、この日は御影堂に上がって、親鸞聖人の御真影に手を合わせました。
阿弥陀如来さまに捧げられた美しい数々の菊。そして菊に注がれた丹精と愛を感じたからでしょうか?
御真影に対面すると、穏やかで静かな時間が流れ、すべてを受け入れられている安心感に包まれたのです。
他を否定せず、寛容な雰囲気の大谷大学で学んだ日々が蘇りました。今から思うと親鸞聖人の教えが色濃かったのだと感じます。
小中高と公立学校で、特に高校は成績主義、競争主義の傾向が強かったので、大谷大学に入学した時は本当にホッとしました。
でも、当時は仏教にも浄土真宗にもまったく関心がなく、諦め的な印象に抵抗すら感じていたのです。
▶偏差値やランキングがつらかった
大谷大学は世間一般のランキングや偏差値では、評価が高くない大学です。でも、大学時代は特性を認められ、受け入れられて、のびのび過ごせました。
ある時、大学の後輩が吐き捨てるようにこう言ったのです。
「高校にまともに行っていない不登校の俺でも入学できる三流大学ですよ!」と。
とてもショックでした。大切にしているものを貶められたように感じたのです。
私のまわりでも、中学高校時代は不登校だったけれど、大谷大学に入学してからは、学校に通えて卒業できたという話を聞きます。
私自身、高校時代の勉強(特に数学)が苦手で、64歳になった今でも「数学がわからないから、高校を辞めたい」と両親に訴えている夢を見るほどです。
それほど数字で人を測る学校がつらかったのでした。
高校時代に不登校だった人が、入学しようと感じられ、学校に通えるようになった。それは偏差値やランキングでは測れない価値ではないかと思いました。
▶できることを尽くしたら、後はすべてをゆだねる
御影堂で静かな安らぐ時間を過ごし、南側の廊下に出ると、床に魚を見つけました。

※魚の埋木
大工さんが、遊び心で床の傷んだ部分を魚の形にしたのでしょうか?
不完全さ(傷んだ部分)を否定せずに受け入れ、むしろ遊び心で活かす寛容さ。浄土真宗はそんな遊び心を発揮できる伸びやかな雰囲気がある宗派だったのかもしれないですね。
大学時代はあまり好きになれなかった浄土真宗の雰囲気。あの頃、「諦め」と感じたことは、今は「諦める」は「明らかに見る」、つまり「諦観」ではないかと思います。
今の自分にできることを尽くしたら、あとは仏さまにすべてをまかせる。年齢を重ねて、人はいかに愚かで無力であるかを何度も思い知ったからでしょうか?
いつもは上がらない御影堂に上がった功徳なのか、御影堂の廊下から国宝の飛雲閣を見られました。

▶寛容さや柔軟さが求められる時代
現代はAIの進化が著しく、正確に覚えて、正確に答えることは、重視されなくなりつつある時代。「なぜ?」と感じたことを、「どうしたら解決できる?」と考えることが尊重されるようになるでしょう。
失敗しても、それは点数やランキングが下がることではなく、貴重な経験を得たことととらえられる寛容さや柔軟さが必要とされるのです。
後輩が「三流大学」と自嘲した大谷大学には、今、必要とされる寛容さや柔軟さがあったように思います。
そして、今の教育にはそれが一番求められているとも感じるのです。
御影堂で親鸞聖人の御真影に手を合わせたことで、そんなことを考えました。水吹き銀杏がすこし黄葉していました。

水吹き銀杏の黄葉を眺め、静かな安堵感の中で、西本願寺を後にしました。
(御影堂の静寂の中ですべてを受け入れられた~親鸞聖人の御真影に手を合わせた:村川久夢)

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