認知症にだけはなりたくない! 物忘れなどの老化現象が顕著になる60代の誰もが思うことではないでしょうか?

しかし、高齢者専門の精神科医和田秀樹さんは、認知症を過度に恐れることが脳の大敵だと述べています。
認知症だった父と一緒に暮らした時を振り返ると、「確かにそうだ」とも思います。
◆訪問リハビリの先生を妹だと人違い
90歳の時、圧迫骨折で3ヶ月間入院して、父の認知症が進みました。退院後は、施設に入るまで、デイサービスや訪問リハビリを利用しながら、自宅で暮らしていました。
訪問リハビリに若い女性の先生が来られた時のことです。父がうれしそうに私を呼びにきました。
「くむちゃん、Tちゃんが見舞いに来てくれたで~!」と父が言うのです。Tちゃんは、前年に亡くなった、父と一番仲が良かった妹(私の叔母)です。
どこからどう見ても、若くてスリムな訪問リハビリの先生は、ふっくらタイプだったT叔母とは似ていません。
こういうことはよくあるのか、リハビリの先生は父の勘違いをたださず、「Tちゃん」になって下さいました。
先生が父を「Kさん」と名字で呼ぶと、「Kさんなんて、他人行儀で水くさい! 『にいちゃん』と呼び」と言ったのです。
時々、事実が理解できて、T叔母が亡くなったとわかると、「Tちゃん亡くなったん!?」と驚いた表情になり、がっくりきて元気をなくしてしまうのです。
ところが、リハビリの前は、前かがみで足取りもおぼつかなかったのに、訪問リハビリの先生を妹だと思いこんで、喜んでリハビリした後は、姿勢も良くなって、表情もイキイキしました。

訪問リハビリの先生を妹の「Tちゃん」だと思いこんで、うれしそうな父を見ていると、認知症で人違いをしている方が、父は幸せかも知れないと思いました。

◆認知症はともに老いるパートナー
和田秀樹さんは「認知症を恐れすぎること自体が、脳の老化を進めてしまう」と指摘しています。
認知症が進んだ結果、父は悲しみや不安を手放すことになったのです。悲しみや不安から解放された父は、幼い少年のように無邪気で可愛いおじいさんになりました。
家族で食事をしている時、おやつを食べている時、父は心から楽しそうな顔をしていました。
認知症はともに老いるパートナーなのかもしれないですね。
認知症を老化現象の一つとして受け入れることで、穏やかに生き、朗らかで愛される高齢者として、人生を締めくくるのも悪くないですね。
認知症は、ただ恐れるものではなく、私たちが受け入れ、共に生き、新しい視点を教えてくれる存在かもしれません。
認知症を恐れすぎず、人生の仲間として受け入れることが、幸せな老いにつながるのかもしれませんね。忌み嫌って、恐れるだけではなく、認知症を一緒に歳を重ねる仲間だと考えてみませんか。
(共に老いる意外なパートナーとは?~父の幸せな人違い:村川久夢)

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