桜満開のニュースに接して、ふと思い出す風景があります。近所にある公園の山桜の枝が通に張り出して、向かい側の小学校の桜とアーチになっていたのです。

小学生が桜のアーチを通って登下校していた風景は私のお気に入りでした。私は桜が満開になると、親鸞聖人の歌を思い出します。
「明日ありと思ふ心のあだ桜夜半に嵐の吹かぬものかは 親鸞」

<解説>
今は盛大に咲き誇っていても、夜半に嵐が吹けば桜は一瞬にして散ってしまう。
世は無常であって、やるべきことは必ずできる時にやって、明日桜を見に行こうというが如き気持ちではいけないということ。 人間のことを桜に例えて戒めた歌。(「古典と楽しむ名言集」より)
今の家に引っ越して来た時、お気に入りの桜のアーチを毎年楽しめるものだと思っていました。
ところが数年後、貼り出した枝が通行の邪魔になり、散った桜の花びらや葉の掃除が大変だからと、通に張り出していた桜の枝がバッサリと切り落とされてしまいました。
その時、親鸞聖人の歌の通り「世の無常」を感じました。
「世の無常」はそれだけではありませんでした。現在では桜の木だけでなく、「番組小学校」として由緒ある小学校そのものが、校庭の木々もろともに取り壊されてしまったのです。
跡地には、外国の高級ホテルが建設されました。
▶番組小学校は京都の誇りだった!
取り壊された植柳小学校は、日本初の学区制小学校「番組(ばんぐみ)小学校」64校中の一校だったのです。

「番組小学校」は、明治2年(1869)に地域住民が出資者となり作った、すべての子ども(華士族以外)が通える日本初の学区制小学校で、国家による学校制度ができる三年も前のことでした。
当時、京都の町は幕末の動乱や火災などで壊滅的な被害を受けたのです。
さらに明治維新により政治と経済の中心が京都から東京に移りました。それに伴い天皇や公家、有力な商人たちも京都を離れることになり、京都の人口は最終的に3分の1にまで激減したと言います。
その時、京都を復興するため、京都府、町民、有識者が一丸となり、さまざまな地域活性化プロジェクトを立ち上げ成功させました。
「番組小学校」は、国の学制に先駆けて「地域住民の出資(乏しい中からの捻出)」があったからこそ生まれたのです。疲弊した京都は、その乏しい環境を、かえって既成概念を覆す何かを生む発想として生かしたのです。
京都の先人たちが、京都の近代化事業を進めるにあたり、まず重視したのが人材育成でした。京都復興プロジェクトの第一が番組小学校の設立だったのです。
「改革は人づくりから」と考えたようです。
《関連記事》
*【ああ、京都人】日本で最初の小学校~改革は人づくりから~
▶京都の指導者はかつて未来のために動いていた
京都人には創意工夫して疲弊した京都を復活させる復興力があるのです。
明治維新の頃もそうでした。幕末の動乱の被害や首都が東京に移ったことで衰退した京都を京都人は創意工夫して復興させたのです。以下がその時の主な取り組みです。
✅️番組小学校(日本初の学区制小学校)
✅️琵琶湖疏水の完成(水道水の原水としての利用,日本初の事業用水力発電など)
✅️日本初の市街電車「市電」敷設
これらの新しい取り組みで京都人は京都を復興したのです。
《関連記事》
*【ああ、京都人】京都人の復興力~人生の再生~
▶人づくりの象徴「番組小学校」が外国のホテルに!
ところが取り壊された小学校の跡地には、外国の高級ホテルが建設されました。
小学校の取り壊し工事が始まった頃、少子高齢化問題やコロナ禍で、「京都市が財政破綻間近」だとよく耳にしました。
深刻な財政悪化を背景に京都市は、小学校跡地を東京の不動産会社から年間賃料を得て、60年間の借地権を設定したのです。
今では番組小学校の一つだった植柳小学校の校舎は取り壊され、校庭や校舎の周辺にあった木々も引き抜かれ、今や「桜のアーチ」は完全な幻になりました。
明治維新で首都が東京になった頃、京都の衰退は顕著でした。でも、京都の指導者には未来を見る力があったのです。
つくづく「世の無常」を感じます。
しかし、「無常」を嘆くだけでなく、「形あるものは壊れても、先人が込めた『人づくり』という志(自分軸)」を、私たちも引き継げるはずです。
▶先人から京都の「未来を見る力」を学ぶ時が来た!
「改革は人づくりから」と番組小学校の設立をはじめとして、様々な復興事業を打ち立てて、疲弊した京都に活気を呼び戻したことと対比すると、なんとお粗末な対策でしょう。
明治維新で衰退した京都を復興させたのは、価値観や考え方を根底から覆し、まったく新しい発想で復興に取り組んだからであると言えます。

今、世界に第四次産業革命とも言われているDX(デジタル・トランスフォーメーション)の波がやって来ています。
京都の指導者は、明治維新の頃の指導者のように「未来を見る力」が求められています。そして、その指導者を支える新しい発想ができる市民の力もまた必須なのです。
今こそ、明治維新の先人から京都の「未来を見る力」を学ぶ時だと痛感しています。
「DX」は、技術そのものが大事なのではないと思います。かつての琵琶湖疏水や市電がそうであったように、『これを使って、どう未来を面白くするか』というワクワクする自分軸の想像力こそが、今の私たちに求められているのです。
(京都人には「未来を見る力」が必須––世界的なDXの流れのなかで先人に学ぶ:村川久夢)

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*村川久夢は京都生まれの京都育ち。一人の京都人の目を通して、京都や京都人について、拙書『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます~』に書きました。
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