晩夏の午後、エアコンが効いた快適な部屋で、ジャズを聴きながら自作のレース編み写真を眺めていました。
2014年ごろのこと。うつ病が少し落ち着き、「打ち込めるものが欲しい」と頑張っていたのが、かぎ針編みでした。
当時は手づくり市やネットショップに出品し、「かぎ針編み作家になろう」と本当に一生懸命だったのです。




大ぶりなスノーフレークのイヤリング、段染め糸の爽やかなシュシュ、一枚ずつ花びらを編んで縫い合わせたクレマチスのブローチ。
正直なところ、あんまり売れませんでした😱😱
買ってくれたのも近所の方や友人知人ばかりでしたが、買って下さった方一人ひとりの顔ややり取りが懐かしく思い出されます。
「このゴム、丈夫で重宝しています」と喜んでくれた保険屋のお姉さん。
娘さんのためにとお花のヘアゴムを選んでくださった散髪屋の奥さん。


こんなこともありました。弟の同僚が私のブログ読者だったことがわかったんです。
「お姉さんのドイリーを買いたいんやけど……」と弟に言って下さったんですが、弟が「どうせ売れへんのやろ。あげて~な」と言うのでプレゼントしました。
すると、その方から素敵な引き出しのある木箱に入った香り高い紅茶のセットをいただきました。

なかでも忘れられないのが、水色のグラデーションが揺れるしずく型のイヤリングです。
東京の友人にプレゼントしたところ、彼女が好きなミュージシャンのライブにつけていき、「今日はおめかししてどうしたの?」と声をかけられ、少し疎遠になっていた二人の交流が再開するきっかけになったのだとか。
その日、うっかり片方を落としてしまった彼女のために編み直して送ると、お礼にフェアトレードのチョコレートを頂きました。

やがて「作家への道はちょっと違うかもしれない」と感じ始めたころ、インナーチャイルドカードセラピーと出会い、ブログを毎日書く日々が始まりました。
ミントグリーンの玉編みポーチを作り、「このポーチを受講料でパンパンにする!」と宣言したこともありました😁😁
手づくり市の頃に残っていた作品たちは、セッションを受けてくださった方や本を手にとってくださった方への小さな贈り物となり、手元を離れていきました。

そして、白いスノーフレークのコースターは、今年の夏、憧れの先生の手元へと旅立ったのです。
あのコースターもあの頃に編んだ大切な1枚です。
いまはかぎ針を握る時間もないほど「書くこと」に夢中な日々を送っています。
けれど、かつてひと針ずつ丁寧に編み目を重ねていた時間は、決して消えてしまったわけではありません。
手で編む「糸」から、心を通わせる「ことば」へ。
形は変わっても、誰かの心に温もりを届けたいという想いはずっと同じ根っこから続いています。
手編みの糸が結んでくれたたくさんの温かいご縁と記憶を胸に、今日もまた新しいことばを紡いでいきたいと思います。

( 手編みの糸が結んでくれたもの~かぎ針編みからことばへの旅:村川久夢)

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