祖母の着物をリメイクしたら、私の人生も再生された~京都「しまつ」の知恵

一度終わったと思った人生に、もう一度命を吹き込む。それは、新しいことを始めるより、ずっと手間がかかる。

でも、手間ひまをかけて再生させたものには、深い味わいが宿る――。

祖母の着物を「しまつ」したことから、私は自分の人生を「しまつ」できることを学びました。

 

祖母の銘仙着物をほどいて縫える状態にした

 

京都人が大切にしてきた「しまつ」ということば。「しまつせなあかん」と言えば、節約や倹約の意味で使われることが多いかもしれません。

でも、本来の「しまつ」とは、使えなくなったものに、もう一度手をかけて再び生かすという、再生の哲学なのです。

 

「しまつ」は京都人の再生の哲学

 

ただ倹約するのではなく、「あとしまつ」をしながら命をつなぐ――そこには、京都人ならではの価値観が息づいています。

 

私が「しまつ」の意味を実感したのは、祖母から譲られた銘仙の着物がきっかけでした。

臙脂(えんじ)と紫と青のストライプ模様。私はその布の色合いとすっきりした柄が大好きでした。

ところが、小柄な祖母の着物は、丈が中途半端で、おはしょりを作るには短すぎ、対丈で着るには長すぎるという「帯に短し襷に長し」の状態だったのです。

着られない。でも捨てるには忍びない。そんな思いで、私はその着物をクローゼットの奥にしまい込んでいました。

 

ある日思い出したのが、古い和布を愛し、ソーイングカフェを営んでいる京女の友人でした。

彼女に相談すると、「この着物、ノースリーブのワンピースにしたら?」と。

そして彼女は言ったのです――「これが、ほんまの『しまつ』やな」と。

 

着物をほどいて、縫える状態にするまでの手間は、私の予想をはるかに超えていました。

着物をほどく。祖母は細かくかっちり縫っていたので、ほどくのは本当に大変でした。

折りジワをアイロンでプレスするように丁寧に伸ばす。それでも長い歳月を経た布ジワはなかなか取れないのです。

絹用洗剤を使って弱水流で洗い、ぽたぽた水が垂れる状態で絞らず干す。

乾いたら、もう一度アイロンをかける。

古布を扱うというのは、着物を縫った祖母や経た歳月と対話するような作業でした。

私は、その手間が新たに命を吹き込み、祖母の銘仙着物を再生させる尊い儀式のように感じたのです。

 

新たに魂を吹き込み再生させる

でも、それが「しまつ」の本当の意味なのでしょう。「後しまつ」をして、新たに魂を吹き込み、再生させる手間なのだと、ひしひしと感じました。

 

やがて完成したノースリーブのワンピースは、祖母の着物の風合いと歳月の重みがそのまま生きた、たった一つの服になりました。

 

襟元がオシャレなノースリーブのワンピースに✨️

 

余った布で作ったバッグや手帳カバーも、それぞれが違う命を宿したのです。

 

藤の持ち手が涼やかな銘仙バッグ

 

お揃いの手帳カバーも作りました✨️

 

私はただ布を再利用したのではなく、祖母の記憶や祖母の着物への愛着を一緒に「しまつ」していたのです。

 

中途半端で着られなくなった銘仙着物を「しまつ」することに私は熱中しました。まるで自分の人生を「しまつ」するように。

うつ病を患い、教師の職務をまっとうできなくなった私。私も人生に「しまつ」が必要なのだと、銘仙着物の「しまつ」が教えてくれたのです。

「私には何の価値もなくなったのだ……」という思い込みを一つひとつほどいて、

自分の心にアイロンをかけて「もうだめだ」というシワを取り、型紙を取ることで、新しい人生設計を描き直す。

それはまるで、「教師をやめても、私が無価値になったわけではない」と魂を吹き込み、人生を再生させる作業でした。

 

私が無価値になったわけじゃない!

 

一度終わったと諦めた人生を、もう一度生かす。それは手間も時間もかかるけれど、想像以上に豊かな経験でした。

 

「しまつ」の本質は命のあとしまつ。終わらせるのではなく、もう一度生かすために、手をかけることです。

京都の人々は、戦乱や災害に幾度も見舞われながら、今あるものを工夫して再生し、暮らしをつないできました。

この考え方は、現代の私たちにも通じる、生き抜くための知恵だと思います。

「しまつ」は、人生のどこかで立ち止まったあなたにも、もう一度歩き出すきっかけになるかもしれません。

 

村川久夢著『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます』

この「しまつ」の精神については、拙著 『ああ、京都人~今を生き抜く知恵おしえます!~』 にも詳しく綴っています。

今あるものを見つめ直し、再び命を吹き込むことで、人生は何度でもよみがえる――。そんな京都人の知恵と暮らしの哲学を、ご覧いただけたらうれしいです。

( 祖母の着物をリメイクしたら、私の人生も再生された~京都「しまつ」の知恵:村川久夢)

 


 

 

 

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