ユトリロ『パリ郊外』に孤独な魂が引き寄せられた!~倉敷大原美術館

最近はブログや小説を書くのに夢中ですが、私は絵画鑑賞も水彩色鉛筆やクレヨンで絵を描くことも好きです。

30代は西洋絵画、特にエコール・ド・パリの画家モーリス・ユトリロに夢中になり、パリまで行ったくらいでした。

ユトリロの『パリ郊外』に大原美術館で出会ったことが、絵画鑑賞好きになったキッカケでした。今日のブログにユトリロ絵画との出会いを記しました。

大原美術館(倉敷)

私が、まだ高校生だった頃、家族で倉敷に旅行しました。

有名な大原美術館も見学しましたが、当時の私は美術に関する知識はないにひとしかったのです。正直、絵画鑑賞は退屈で、特に何の感慨も持ちませんでした。

 

高校三年の久夢

 

しかし、一枚の風景画に心惹かれたのです。パリらしき街角を描いた絵でしたが、私は「その絵」から目を離すことができなくなりました。

今でも覚えていますが、自分がなぜガイドブック等で紹介されているエル・グレコやルノアール、ミレーのような有名な絵ではなく、「その絵」なのかわかりませんでした。

でも、「その絵」は心に訴えかけてくるものがあったのです。そのころの日記を引っ張り出すと、このように書いています。

【絵のことは全然わからないけれど、エル・グレコの『受胎告知』、ルノアールの『泉による女』、ユトリロの『パリ郊外』、ミレーの『グレヴィルの断崖』が、なんとなく気に入った。】

 

1978年4月2日の日記と大原美術館入館券

 

「その絵」は、あのエコール・ド・パリの画家、モーリス・ユトリロの絵だったのです。当時は、ユトリロのことはまったく知りませんでした。

 

モーリス・ユトリロは、画家でもあった奔放な女性シュザンヌ・ヴァラドンの私生児として生まれ、母親に放置され、中学生の頃にはすでにアルコールに手を出していたのです。

アルコール依存症に陥ったユトリロは、飲酒治療の一貫として絵を書き始めました。最初は治療として始めた描画でしたが、すぐに才能を表します。

しかし、何の支援もないまま、酒代を得るために安価に売られた絵は、純粋に「生きるための表現」でした。

作品のほとんどはパリ・モンマルトルの風景画。

それも、小路、教会、運河などの身近なパリの風景を描いたものですが、ありふれた街角も彼が描くと詩情あふれる静謐な絵になったのです。

 

ムーラン・ド・ラ・ギャレット

 

社会人になり仕事が忙しくなると、私は大原美術館で出会ったユトリロの『パリ郊外』のこともすっかり忘れていました。

30代になって少し落ち着いたころ、毎週NHKの「日曜美術館」を見ていました。その番組でユトリロに再会したのです。

ユトリロの生い立ちやユトリロのアルコール依存症についても知り、ユトリロ作品に魅了されました。

ユトリロの孤独な魂から生まれた作品は、美術に疎い女子高校生の心さえ捉えて離さなかったのでしょう。

『パリ郊外』は『コタン小路』『ノルヴァン通り』『ドゥーユの教会』など「白の時代」の作品に比べると、目立たない作品のように思えます。

しかし、何の知識もない高校生だった私の心を捉えた『パリ郊外』は、私にとって最も印象的な絵です。

 

ユトリロに心酔し、彼が愛し描いたモンマルトルの街角を実際に見てみたいと、冬休みにパリまで行ったほどでした。

 

ノートルダム寺院

 

ポンヌフ

 

実際のコタン小路の石段を上がり、ノルマン通りを歩き、実物のムーラン・ド・ラ・ギャレットも見たのです。

それらは、指摘されないと気づかない普通のヨーロッパの街角でした。

でも、ユトリロが描いた絵は、詩情に溢れ、静謐で、それでいて人恋しさを感じさせます。きっとユトリロの目には、モンマルトルの街角はそのように映っていたのでしょう。

私はユトリロの絵から、画家の心を感じることを知りました。

孤独な心を抱いて、詩情あふれる、静謐な世界を描いたモーリス・ユトリロ、大好きな作家です。

(ユトリロ『パリ郊外』に孤独な魂が引き寄せられた!~倉敷大原美術館:村川久夢)

 

 

 

 

 

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