甘さに深みを与える塩のような経験~絶望を乗り越えた優しさ~

 

今夜は冷えますね。子どもの頃、寒い夜に母が作ってくれた甘酒が「温まって美味しかったな~」と懐かしく思い出しました。

 

 

甘酒

 

 

今日のように急に冷え込んだ夜、甘酒を飲んで温まりたくなり、酒粕と砂糖で甘酒を作ったことがありました。ところが、甘いばかりで何となく物足りないのです。がっかりしました。

 

その時、私は興味深いことを発見したのでした。

 

祖母や母がお善哉やおはぎの餡を作る時、必ず少量の塩を加えていたのを思い出しました。

 

そこで、甘いばかりの甘酒に塩をひとつまみ入れてみたのです。すると、味がぐんと引き立ち、深みが出て驚くほど美味しくなりました!

 

 

甘酒は、酒粕と砂糖を水で煮込むだけだと思っていました。実際、メインの材料は酒粕と砂糖と水です。

 

でも、酒粕と砂糖だけでは出せない「味の深さ」を、甘さとは正反対の塩が引き出したのです。それが、とても興味深く、印象的でした。

 

 

ふと、人の人生にも同じことが言えるのではないかと思いました。

 

遠縁のMちゃんは、わがままいっぱいに育った甘ったれで、大人になっても自由奔放! Mちゃんの両親は、彼女が子どもの頃から、しでかしたことの後始末に追われていました。

 

 

わがままだけど美人のMちゃんは、結婚と離婚を繰り返し、落ち着く様子がありませんでした。

  

ところが、親戚の法事で久しぶりに出会ったMちゃんは、優しく気づかいのできる、落ち着いた女性になっていたのです。

 

 

Mちゃんのおばさんが、彼女の身に起こったことを話してくれました。

 

Mちゃんは何度目かの結婚で、ずっと授からなかった子どもをようやく授かったそうです。

 

しかし、その子どもは難病を持っていました。

 

しばらくして、ご主人がその子どもを連れてやってくると、Mちゃんは優しく、本当に愛しそうに子どもの世話をしていました。

 

わがままで、うまくいかないと両親に当たり散らしていた頃が嘘のように感じました。

 

 

おばさんの話によると、Mちゃんは同じ病気を持つ子の親の話し相手になったり、子どもたちの宿泊学習のお世話をしたりしているそうです。

 

自分の子どもだけでなく、他の子どもたちのためにも熱心に動いているとのことでした。

 

かつて美人だったMちゃんの目尻には、少しシワがあらわれていました。

 

Mちゃんは、子どもが常に介護を必要とする難病を発症した時から、一日中介護をしています。しかも、その病気は進行する一方で、寛解する見通しはまったくありません。

 

Mちゃんは、どれほどつらく、絶望的な思いをしたでしょう。一時は泣いてばかりだったそうです。

 

 

でも、目の前にいるMちゃんには、そんな様子は微塵も見られませんでした。

 

Mちゃんの苦しみや嘆き、絶望は、他人の私には到底推し量ることはできません。

 

どんなに叱られても、諭されても変わらなかったMちゃんを変えたのは、変わらざるを得ない運命と子どもへの愛だったのだろうと思いました。

 

 

一つまみの塩が甘酒の味を深くしたことに軽々しく例えるのはためらわれますが、苦しい時代を乗り越えた経験が、甘ったれでわがままだった彼女の人生に深みを与えたのだと感じました。

 

 

嘆きや絶望を受け入れ、乗り越えたことで、Mちゃんは自分自身でもどのように発揮していいかわからなかった生命力や優しさを、存分に発揮できるようになったのではないかと思います。

 

甘ったれでわがままだった頃のMちゃんは、いつも苛々していて、一緒にいると落ち着かないほどでした。

 

でも、今のMちゃんは穏やかで、一緒にいる人を包み込むような優しさに満ちています。

 

 

苦しい経験を乗り越えることが、人の深い思いやりや優しさを引き出すのだと実感しました。

 

 

 

 

 

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