【連載小説】『薫~書の道・愛の道~』その15「贈り物」

美咲は、薫に大輪のガーベラの花を思わせた。鮮やかなオレンジ色の大輪の花を。

 

「カラオケに行ったり、ゲーセンに行ったり、マクドでハンバーガー食べたり、いつも一緒だったじゃない!」と美咲が大声で陽に言い返した。

「誤解されるような言い方よせよ!バスケ部のみんなで行ったんじゃないか」陽も大きな声になっていた。

 

二人のやり取りから、美咲は陽が所属するバスケット部のマネージャーらしいことがわかった。以前の陽は、さほど書道に熱心ではなく、かと言ってバスケット部の活動にも熱心ではなく、バスケット部の仲間やマネージャーの美咲と遊び呆けていたようなのだ。

 

「なんだか最近、『書道!書道!』って急に書道に熱心になって、陽、どうしちゃったの?私、つまんないよ!寂しいよ!」と美咲の目から涙が溢れ出した。

 

美咲の涙を見ると、陽は可愛そうになったのか、急に口調が優しくなった。

 

「わかったよ、美咲。今日はもう帰ろう。送っていくよ」と言った。

「嫌だ!陽ともっと一緒に居たい!」美咲は駄々をこねた。

「仕方がないな、マックカフェにでも行く?」困ったような表情で陽が言った。

「わ~!うれしい!私、キャラメルラテがいい」美咲は嬉しそうに陽の腕にすがった。

 

「佐伯先生、僕はこのバカを送って行きます。みなさん、良いお年を!」陽は一礼すると、美咲と帰って行った。

 

薫は最初、美咲にあっけに取られたが、美咲の率直さが好ましく感じられた。自分の気持ちに正直にまっすぐに行動できる美咲が、羨ましくさえあった。

 

薫は、佐伯や美緒たちに年末の挨拶をして、一人帰途についた。一年も終わろうとしている時に、佐伯と一緒に過ごせたことが、とても嬉しかったが、一抹の寂しさも感じた。

 

-最近の私はいつも佐伯先生のことばかり考えてる-

-でも、先生が教室以外の場所で私を思い出してくれることってあるのかしら?-

 

薫の頭に、田口家のサロンで貴子やたくさんの年始客と年始を過ごす佐伯の姿が浮かんだ。ちょうど、その時だった。

 

「薫さん」と薫を呼ぶ声がしたのだった。

 

佐伯が薫を追いかけて来たのだった。佐伯は薫の目を見つめながら、薫に近づいて来た。切れ長の目が、美しく輝いていた。

 

「薫さん、お疲れさまでした。ありがとう」

「佐伯先生」

「今年も一年、本当によく頑張ったね。これを薫さんにあげようと思ってね、追いかけて来たよ」

 

佐伯は一冊の本を差し出した。

 

「書道会『群青』の創始者八雲蒼風先生の写真集なんだ。蒼風先生の名言と書作品が載っているんだ。きっと薫さんの役に立つだろうと思ったんだよ」

「ありがとうございます!」

 

薫は両手で本を受け取り、佐伯に礼を言った。すると、佐伯は本を受け取った薫の手を両手で包み込んだのだった。

 

つづく

 

「墨の香り」『薫~書の道・愛の道~』その1

「衝動」『薫~書の道・愛の道~』その2

「月光」『薫~書の道・愛の道~』その3

「脱皮」『薫~書の道・愛の道~』その4

「気づき」『薫~書の道・愛の道~』その5

「衝撃」『薫~書の道・愛の道~』その6

  「オアシス」『薫~書の道・愛の道~』その7

「疑念」『薫~書の道・愛の道~』その8

「書道講習会」『薫~書の道・愛の道~』その9~

「イルミネーション」『薫~書の道・愛の道~』その10

「カナリーイエローのマフラー」『薫~書の道・愛の道~』その11

「タロット:塔」『薫~書の道・愛の道~』~その12~

「遠い存在」『薫~書の道・愛の道~』その13~

 「大掃除」『薫~書の道・愛の道~』その14~

「贈り物」『薫~書の道・愛の道』~その15~

「書き初め」『薫~書の道・愛の道』~その16~

 

作家:村川久夢

 

 

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