何をおっしゃいますやら~京女の攻防~

生粋の京女の祖母は、

腕の良い髪結いでもあった。

しばしば婚礼に呼ばれて、

お嫁さんの髪を結い、衣装の着付けなどに

奮闘していたようだ。

 

気難しい祖母は自分の気に入らないと、

婚礼の時間が迫っていても

何度も結い直し着つけ直しをしたと

聞いている。

 

そんな関係もあって、

祖母は冠婚葬祭のしきたりなども

熟知していたようだ。

親戚の中で「ねえさん、ねえさん」

と重宝されたり頼りにされたりしていた。

 

頑固でプライドの高い祖母は、

親戚の行事を取り仕切ることに

けっこう誇りを感じていた様子だ。

「ねえさんは髪結いさんしてはったさかい、

なんでもよう知ってはる」

「ねえさんは段取りがええさかい、

ねえさんに任しといたら、

みんなが寄ってもうまいこといきますな」

と言われていた。

 

でも、そこは京女の祖母、

「いいえ、何をおっしゃいますやら、

もう年いって、耄碌して、さっぱりどっせ」

と心にもないことを言って

謙遜しているつもりのようだった。

 

ある時、一族の祝い事が本家であって、

親戚の女一同が集まって、

料理を準備することになった。

仕切り屋の祖母の晴れ舞台の予定だった。

 

ところが「ねえさんは味付けがうまいし、

ねえさんの料理には料理屋もかなわへん」

「腕のええ髪結いさんで、

いろんなお宅の婚礼にも行ってはるさかい

礼儀もようわきまえてはる」

と歯の浮くようなお世辞を言っていた

親戚のオバチャンが反旗を翻した。

 

「ねえさん、ねえさんはこの前も

ご分家さんの法事のお手伝いに行ってはって

まだそんなに日も経ってまへん。

うちは、ねえさんのお疲れが心配どすのえ。

今度のご本家さんのお祝いは、

仕出し屋さんに任かさはったらどうどす」

 

このオバチャンも生粋の京女、

一筋縄ではいかない。

口では祖母を気遣うようなことを

言っているが本心は

祖母に偉そうに指図されながら、

本家のためにタダ働きするのが

我慢ならないのだ。

 

「京子はんはそない思わはるか?

うちに気使こてくれはっておおきにどっせ。

うちは大事おへん。

そやけど、京子はんがうちらおなごで

準備するより、仕出し屋さんがええと

言わはるんやったら、

うちはそれでもよろしおっせ」

 

と祖母も負けずに答えた。

 

「いえ、ねえさん何をおっしゃいます。

うちは、ただねえさんのお体が

心配なだけどすえ」

 

「いつも気にかけてもろうておおきにえ。

あんたは心根の優しい人やさかい。

そやけど、うちは大丈夫どす。

ただ、京子はんが気のすすまんことを

押し付ける気はないんどっせ」

 

「いえ、ねえさん。

うちはねえさんと一緒にご本家さんの

お手伝いしたいんどっせ。

そやけどねえさんもお年やし、

お体のことを考えて・・・」

 

と京女のエンドレス攻防は続くのだった。

 

結局、亀の甲より年の功で、

祖母が押し切って従来通り本家の法事は、

親戚の女一同で取り仕切られた。

押し切られたオバチャンは、

よほど悔しかったらしく

親戚のアンチ祖母の女性たちと

相当、祖母の陰口を叩いていたらしい。

 

京女と聞くと和服が似合あう、

京ことばで物腰の柔らかい優しい女性を

イメージされる方が多いと思う。

確かに人当たりはいいけれど、

本当は自分の思っていることを

口にしないで、遠回しに遠回しに、

結局、自分の思うようしてしまう

強者がけっこういらっしゃるのですよ。

 

京女に囲まれて育っただけに、こ

の怖さ身にしみて感じています。

 

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*鬱・夫の死を克服した作家&

インナーチャイルドカードセラピスト

村川久夢(むらかわ くむ)

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